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楽天市場・送料課金の余波② "全体最適化"が必須、「他モール出店も模索すべき」

2012年10月 4日 09:50

「楽天はピンチをチャンスに変える能力が異常に高い」。

 こう指摘するのは、現在EC支援事業を手がけるA氏だ。過去に楽天に籍を置いていた経験を持つA氏は、楽天の今回の強引ともいえる「送料課金」導入について、当時の体験を振り返りながら分析する。例えば2005年に「楽天市場」で起きた個人情報流出問題。楽天この件以降、カード決済の代行サービスを強化した。今回の件もそれと同様で、競合するアマゾンやヤフーがそれぞれ物流サービスの強化に力を入れている状況を受けて、自社物流を迅速に強化できる"妙手"として「送料課金」が「ひらめいたのではないか」というわけだ。 

 だが、もしそうであるならば、メリットを得る主語は楽天であり、店舗ではない。楽天は送料課金で物流を強化することで「将来的には出店者様に利益を還元していくことができる、と確信している」と説明するが、はたして店舗がどの程度メリットを得られるのか、疑問を挟む声は多い。

「商材的に難しい」

 「自分でやるより圧倒的に安くなる」三木谷社長は以前、自社の物流サービスについてこうメリットを述べた。

 だが、3万を超える出店店舗すべてが楽天の物流サービスを利用できるわけではない。前述のA氏は、自らが抱えるクライアントの中に、楽天の物流サービスを使う予定がある企業は「商材的に難しいので、いない」という。例えばメーカー直送が基本の店舗や、大型家具など倉庫に預けることが難しい商材を扱う店舗の場合は「物理的に無理」だからだ。

 では、メリットを享受できるのは誰なのか。「利用するのは一部の有力店舗だろう。小規模で商品の回転率が低ければ、保管料がかかるだけでペイできないのだから」。

最適化でコストを吸収

 物流サービスを利用する予定がなく、メリットが得られない店舗は今回の件にどう対応すべきなのだろうか。

 A氏は「全体最適化で考えないといけない」と指摘する。つまり、他のコストをこの機会に徹底的に見直して最適化すべき、というわけだ。「配送費はかかるもの」と割り切り、その分、人件費を抑え、広告費を削る――いかに「無駄」なコストを省けるか、見直しが不可欠だという。とはいえ多くの店舗はすでに日々、経費削減に苦心しており、どこまで効果を出せるかは不透明ではあるが、例えば広告に頼らない集客策を模索するなど、改めて事業内容を精査することが必要なのかもしれない。他

モール出店も模索

 今回の件で改めて浮き彫りになったのが、ひとつのマーケットに依存するリスクの大きさだろう。A氏は対策のひとつに「他の仮想モールにも出店して儲けを作る」ことを挙げる。「楽天市場」が仮想モールの雄であることは疑いようがないが、それでも「商材によって、マーケットごとの可能性は違う」。商品特性や顧客特性によっては他モールで、たとえ売り上げは落ちても大きな利益を出すことは可能というわけだ。新たな可能性を模索することが「ピンチをチャンスに変える」最善手なのかもしれない。(つづく

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