ディーエイチシー(DHC)の新聞広告は、中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局(以下、北陸支局)に消費者を誤認させると指摘を受け、同業他社の反発も招いている。これに関わった新聞各紙は掲載に際し、どのような判断を下したのか。
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「(広告は)掲載にあたって広告の及ぼす社会的影響を考え、不当な広告を排除し、読者の利益を守り、新聞広告の信用を維持、高揚するための原則を持つ必要がある」。日本新聞協会の「新聞広告倫理綱領」制定の趣旨の一節だ。加盟社である新聞社にとって、その趣旨は考査の理念に通じるものだろう。だが、DHCの広告を掲載した新聞社に対し、業界関係者の多くがその審査体制、倫理観を疑問視する。
「新聞社は一般的な営利目的の企業と一線を画す報道機関としての権威がある。だから考査もある。しかし今回の掲載の判断に妥当性や社会的影響という視点はない。広告収入が減っているから、かつてのように権威を前提とした広告出稿のスタイルは貫きにくい。公共的な役割を果たすという建前はあっても、全面広告を出してくれるなら拒みたくはない」
「例えば"調査は間違いないでしょうね"というのはあるが、実態に基づけばいい。資料を吟味して"調査手法はどういうものか"とか、一度も聞かれたことはない。いわばいいかげんな考査だよね。今回も押さえるところを押さえれば、この手のものを扱って良いかという倫理観はない。実際ないから出ている」
「他社がやらないと"非難を浴びるかも"と考えるが1社がやれば赤信号みんなで渡れば怖くない。一斉に出稿した手法には巧妙さもある」
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このような声に、新聞社は何と答えるか。本紙では、広告掲載の妥当性や掲載の経緯、DHCに何らかの対応を行う予定があるかなどを聞いた。
「掲載の経緯は公表していませんが、当社の掲載基準に沿って適正に審査したうえで掲載しています」(読売新聞グループ本社広報部)、「お尋ねの件に限らず、広告掲載の是非はその都度、弊社の広告掲載基準に基づいて判断しています。個々の経緯は公表していません」(朝日新聞社広報部)、「広告はすべて当社の掲載基準に基づいて掲載しています。今回のケースは広告主であるDHCから詳細を確認し、中部経済産業局電気(注・原文ママ)・ガス事業北陸支局に連絡をとったうえで掲載しました」(日本経済新聞社経営企画室広報グループ)、「広告は当社の広告掲載基準に従って掲載しています。広告の内容等にはお答えできません。(DHCへの対応は)いまのところ、予定はありません」(産経新聞社広報部)、「広告は弊社の『広告掲載基準』に則って掲載しています。特定、個別の広告に関するコメントは控えさせていただいています」(毎日新聞社社長室広報担当)。いずれも掲載を巡る判断の詳細の説明はなかった。
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掲載を巡り、大手紙では日本経済新聞社のみ、北陸支局に事実確認をした。ただ、「補助を受けて民間企業が実施した調査とはっきり申し上げた。しかし、『主管する』という形で出された」(北陸支局)という。ほかに複数の地方紙が同様の確認をしたが、「正確に答えたにも関わらず『行った』と掲載していたのであぜんとしている」(同)とする。ゲラを直接確認した地元紙のみ、「補助を受けた」と表現を変えた。
これら一連の経緯を受けた日本新聞協会の対応も「各社独自に判断されることで協会はそのようなこと(注・広告倫理の問題)に対応する機関ではない。(検討の予定も)ない」というものだった。
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協会は「新聞広告掲載基準」で、統計などの引用で実際より優位にみせる表現など誤認を招く広告を自主規制する。また、比較、優位性を表現する場合、その条件を明示し、確実な事実の裏付けを求めてもいる。
調査はそもそもバイアスのかかることが否定できないもの。一つの調査をもって「利用している(利用したい)機能性食品メーカー第1位」が確実性の高いものと捉えることができるのか。ネット調査が定着する昨今、その偏りに対する警戒感は高まってもいる。そうした中、今回の掲載判断は広告収入と広告倫理を天秤にかけたと言われても仕方のないものではなかろうか。(つづく)
「新聞社は一般的な営利目的の企業と一線を画す報道機関としての権威がある。だから考査もある。しかし今回の掲載の判断に妥当性や社会的影響という視点はない。広告収入が減っているから、かつてのように権威を前提とした広告出稿のスタイルは貫きにくい。公共的な役割を果たすという建前はあっても、全面広告を出してくれるなら拒みたくはない」
「例えば"調査は間違いないでしょうね"というのはあるが、実態に基づけばいい。資料を吟味して"調査手法はどういうものか"とか、一度も聞かれたことはない。いわばいいかげんな考査だよね。今回も押さえるところを押さえれば、この手のものを扱って良いかという倫理観はない。実際ないから出ている」
「他社がやらないと"非難を浴びるかも"と考えるが1社がやれば赤信号みんなで渡れば怖くない。一斉に出稿した手法には巧妙さもある」
「掲載の経緯は公表していませんが、当社の掲載基準に沿って適正に審査したうえで掲載しています」(読売新聞グループ本社広報部)、「お尋ねの件に限らず、広告掲載の是非はその都度、弊社の広告掲載基準に基づいて判断しています。個々の経緯は公表していません」(朝日新聞社広報部)、「広告はすべて当社の掲載基準に基づいて掲載しています。今回のケースは広告主であるDHCから詳細を確認し、中部経済産業局電気(注・原文ママ)・ガス事業北陸支局に連絡をとったうえで掲載しました」(日本経済新聞社経営企画室広報グループ)、「広告は当社の広告掲載基準に従って掲載しています。広告の内容等にはお答えできません。(DHCへの対応は)いまのところ、予定はありません」(産経新聞社広報部)、「広告は弊社の『広告掲載基準』に則って掲載しています。特定、個別の広告に関するコメントは控えさせていただいています」(毎日新聞社社長室広報担当)。いずれも掲載を巡る判断の詳細の説明はなかった。
これら一連の経緯を受けた日本新聞協会の対応も「各社独自に判断されることで協会はそのようなこと(注・広告倫理の問題)に対応する機関ではない。(検討の予定も)ない」というものだった。
調査はそもそもバイアスのかかることが否定できないもの。一つの調査をもって「利用している(利用したい)機能性食品メーカー第1位」が確実性の高いものと捉えることができるのか。ネット調査が定着する昨今、その偏りに対する警戒感は高まってもいる。そうした中、今回の掲載判断は広告収入と広告倫理を天秤にかけたと言われても仕方のないものではなかろうか。(つづく)