TSUHAN SHIMBUN ONLINE

インターネット・ビジネス・フロンティア株式会社
記事カテゴリ一覧

ボトルウオーター最前線㊤ 高まる安全な水の需要 意識の変化、家庭も企業も

2011年11月 4日 11:00

3月に発生した東日本大震災。原発事故で漏れ出した放射性物質の影響から飲食料に対する消費者の意識が変化した。そうした中で一気に需要が高まった商材の1つが「水」だ。首都圏を中心にペットボトルがスーパーやコンビニの棚から姿を消したのは記憶に新しいが、安心・安全な水に対する消費者の関心は高まっている。水が充填されたボトル容器を宅配して専用のサーバーから飲むボトルウォーターについても同様で、震災後は認知度が高まり各社ともに新規顧客が増加しているようだ。そこで主要各社の現状や次の一手を追った。
8-1.jpg

アクアクララ(本社・東京都港区、赤津裕次郎社長)では震災直後、電話回線がパンクしたり、ウェブサーバーがダウンするなど問い合わせが殺到。ただ、ボトル容器やサーバーの資材不足、顧客対応や配送でのマンパワーが足りなかったことから販売機会をロスしたようだ。

 ボトル容器は場所を取るため常時それほど多くの在庫を抱えているわけではない。加えて震災直後は大口で注文して備蓄するという動きがユーザーの間で活発化。通常、次の注文があった際に容器を回収するというサイクルのため、空の容器がなかなか回収できないという事態となり、特別に外部の業者を使って回収するという異例の措置をとった。

 結果、3~5月にかけては「ないものづくしの状態」(同社)で、多くの新規を取りこぼした。一見、「特需」の様相を呈していたとはいえ、「騒がれていたほど伸びていない」(同)とし、実際には新規獲得軒数は全体で前年比20%程度の伸びだったようだ。

 資材不足の状況が収束したのは6月。しかし、6月から投入予定だった省エネ効果が高い新型サーバーに製造上の不具合が生じたため、出荷を見合わせたことがさらなる痛手となった(現在は出荷を再開)。6~8月の3カ月は年間を通じて新規客の約7割を獲得する圧倒的な稼ぎ時。そうした夏の一番の需要期で、かつ、節電意識が高まっていたタイミングに新型サーバーの供給がストップしたことは営業面で大打撃となった。

 もっとも、こうしたマイナス要因にも関わらず新規軒数は増加。前期(2011年9月期)の純増数は6万軒程度に上ったということで、宅配水に対する需要の高さを伺わせる。

 ボトルウォーターの認知が広がり一般家庭での利用が増えるなか、オフィスでの需要にも変化が出てきている。

 「ピュアウォーター」を提供するダイオーズ(本社・東京都港区、大久保真一社長)は創業以来、メーンターゲットをB〓Bに定めて営業を展開し、現在は全体の9割がオフィス向けだ。

 同社がボトルウォーター事業を開始したのは2000年。それまではオフィス向けコーヒーサービスを手がけており、配送網などを駆使して水の宅配につなげた。もともとはダスキンのフランチャイズとしてBtoBビジネスをスタートしたことが大きく影響しているようだ。

 ダイオーズの場合は、同業他社と比べてオフィス向けという点に加え、飲料サービスをトータルに提供して差別化につなげている。一般家庭に対しては水だけを取り扱うが、メーンであるオフィスには水のほかコーヒーや給茶機などのラインアップをそろえる。このように水を軸にしながら、様々な商品を同時に提供できるのが強みだ。

 同社によると、オフィス向けのボトルォーターの需要も変化しているようで、かつては水道に浄水器を取り付けるだけだった企業も、安心・安全な水への意識が高まっているという。同社の大久保社長は「健康を守るため、水にお金を出すことに抵抗がなくなってきている」と指摘する。

 また、同社でも原発事故以後は一般家庭向けの需要が増加。特に同社と契約している法人各社の従業員やその知人が申し込むケースが多く、従来の40%増の伸びを示しているという。ただ、同社もリターナブル容器を回収して再利用しているため、震災直後は資材不足に陥りすべての需要には対応できなかったとしている。同社では今後も「ピュアウォーター」を"飲料事業の中核"として拡販を進めていく方針だ。(つづく)



楽天 通販のよみもの 業界団体の会報誌「ジャドマニューズ」 通販売上高ランキングのデータ販売