これまで広告制作を担当していた社員は石けんを運び、ローテーションを組んでメールやファックスで寄せられた問い合わせに回答文を書く。5月20日の自主回収発表以降、悠香の社内は一変した。
大野城市に拠点を置く本社は1階が商品発送所、2階が食堂、3階がコールセンター、4階が事務所という構成になっている。だが、回収の発表から食堂は回収製品の保管庫となり、事務所も回収製品の荷ほどきをするスペースと処理を終えた顧客情報をPCに入力するスペースに配置が分けられた。
コールセンターは社員を含め常時300人前後のコールアテンダントが対応する体制。今年1月には、研究開発部門などの分社化を発表。広告制作会社として独立した「ジーナ」は、福岡市内に拠点を移したが社員を呼び戻し、回収に全力を注ぐ体制を整備した。
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これまで顧客から返品、交換のために寄せられた製品は12~13万個(7月8日時点)。だが、中には他社製品や、使いかけの状態で自社製品との特定に時間のかかるものもあり、過去の購入履歴との照合など対応を終えた個数は約10万個に上る。このうち約7割が交換を希望する顧客だが、最終的な回収個数は「確定が難しいため私見だが60~70万個に達するのではないか」(商品部品質保証課・竹田典雄氏)との見通しだ。
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「また言い訳しよる」。回収を巡る対応にも苦慮しているようだ。
通常、受注対応のため4、5分で終わっていた電話は10~30分、中には2時間もの長時間にわたる顧客もいるが、今回、悠香にとって不幸なのは、自主回収の原因となった「加水分解コムギ末」のアレルギーが過去に例のない新しい症例だっただけでなく、専門的な知識を必要とする事案であることだ。顧客の"なぜ"に回答しようと新しい知見であることを説明しようにも言い訳ととられ、「回収=粗悪品」との理解となる。結果として、回収を巡る事情に精通した社員などが説明に当たらざるを得ず、窓口の人員も増員ができない状況が続いている。
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さらに今後、回収期間が長引くことが今期(12年6月期)の業績にも大きく影響を与えることになりそうだ。
今回の自主回収は厚労省が医薬品医療機器総合機構と連携して行う「医薬品・医療機器等副作用報告制度」に則って行われたもの。回収の完了報告を行う必要があり、福岡県薬務課との調整で8月31日を一応の期限とした。状況に応じて延長する可能性もあるが、すでに回収のピークは過ぎているという。
だがこの間、差し替えによる対応を除き、一切の広告展開を中止。9月以降の広告再開のめども立っていない。回収発表から約1カ月は受注件数もほぼゼロの状態となっており、その後も回収の専用電話回線のみならず、全ての電話に回収に関する電話がかかってくるため、受注ができていない状態が続いている。
一部にメールやファックスによる受注も寄せられているが、通常2~3日だった配送リードタイムは10日~2週間に延びているという。定期顧客の解約も把握できておらず、フリーダイヤルの負担も重くのしかかってくる。
今後、製造委託先との損害賠償の調整に発展する可能性もあるが、「話し合いの上で調整するが、今は回収に全力を挙げているため話し合いの調整も出来ていない状況」(竹田氏)としている。
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大野城市に拠点を置く本社は1階が商品発送所、2階が食堂、3階がコールセンター、4階が事務所という構成になっている。だが、回収の発表から食堂は回収製品の保管庫となり、事務所も回収製品の荷ほどきをするスペースと処理を終えた顧客情報をPCに入力するスペースに配置が分けられた。
コールセンターは社員を含め常時300人前後のコールアテンダントが対応する体制。今年1月には、研究開発部門などの分社化を発表。広告制作会社として独立した「ジーナ」は、福岡市内に拠点を移したが社員を呼び戻し、回収に全力を注ぐ体制を整備した。
これまで顧客から返品、交換のために寄せられた製品は12~13万個(7月8日時点)。だが、中には他社製品や、使いかけの状態で自社製品との特定に時間のかかるものもあり、過去の購入履歴との照合など対応を終えた個数は約10万個に上る。このうち約7割が交換を希望する顧客だが、最終的な回収個数は「確定が難しいため私見だが60~70万個に達するのではないか」(商品部品質保証課・竹田典雄氏)との見通しだ。
「また言い訳しよる」。回収を巡る対応にも苦慮しているようだ。
通常、受注対応のため4、5分で終わっていた電話は10~30分、中には2時間もの長時間にわたる顧客もいるが、今回、悠香にとって不幸なのは、自主回収の原因となった「加水分解コムギ末」のアレルギーが過去に例のない新しい症例だっただけでなく、専門的な知識を必要とする事案であることだ。顧客の"なぜ"に回答しようと新しい知見であることを説明しようにも言い訳ととられ、「回収=粗悪品」との理解となる。結果として、回収を巡る事情に精通した社員などが説明に当たらざるを得ず、窓口の人員も増員ができない状況が続いている。
さらに今後、回収期間が長引くことが今期(12年6月期)の業績にも大きく影響を与えることになりそうだ。
今回の自主回収は厚労省が医薬品医療機器総合機構と連携して行う「医薬品・医療機器等副作用報告制度」に則って行われたもの。回収の完了報告を行う必要があり、福岡県薬務課との調整で8月31日を一応の期限とした。状況に応じて延長する可能性もあるが、すでに回収のピークは過ぎているという。
だがこの間、差し替えによる対応を除き、一切の広告展開を中止。9月以降の広告再開のめども立っていない。回収発表から約1カ月は受注件数もほぼゼロの状態となっており、その後も回収の専用電話回線のみならず、全ての電話に回収に関する電話がかかってくるため、受注ができていない状態が続いている。
一部にメールやファックスによる受注も寄せられているが、通常2~3日だった配送リードタイムは10日~2週間に延びているという。定期顧客の解約も把握できておらず、フリーダイヤルの負担も重くのしかかってくる。
今後、製造委託先との損害賠償の調整に発展する可能性もあるが、「話し合いの上で調整するが、今は回収に全力を挙げているため話し合いの調整も出来ていない状況」(竹田氏)としている。