ヤマトフィナンシャル(本社・東京都中央区、芝﨑健一社長)が展開する代引き電子マネー決済サービス「宅急便コレクト お届け時電子マネー払い」を導入する有力通販事業者が増えているようだ。昨年6月のサービス開始以降、利便性と決済時に付与されるポイントが呼び水となり、平均購入金額が予想を大幅に上回るペースで推移。5月23日から、交通系電子マネーへの対応が始まり、通販事業者の間で注目度が高まっている。こうした中、再春館製薬所(同・熊本県益城郡、西川正明社長)は、4月1日から「お届け時電子マネー払い」を導入。滑り出しは順調で、顧客の評価も高いという。導入開始から1カ月余りで成果に手応えを感じている再春館が、同サービスをどのように活用しているのか、その取り組みを追った。
(※写真提供:再春館製薬所)きっかけは数件の問い合わせ 「宅急便コレクト お届け時電子マネー払い」(電子マネー払い)は、通販商品等の受け取り時に、「宅急便」のセールスドライバーが携行する携帯端末で電子マネー決済ができるというもの。現金との併用のほか、決済金額に応じたポイントが付与されるのが特徴だ。
これまでの展開では、ポイント付与がフックとなり、平均購入金額が1万円超になるなど、ヤマト側の見込みを上回るペースで推移。さらに従来からの「Edy」「nanaco」「WAON」に加え、5月23日から「Suica」「ICOCA」「SUGOCA」などJRを中心とした交通系電子マネーへの対応が始まり、有力通販事業者の間でも注目度が高まっている。
こうした中、再春館製薬所(再春館)は今年4月1日に「電子マネー払い」を導入。その端緒は、顧客の声だったという。
熊本県益城郡にある本社「つむぎ商館」のコールセンターには、顧客から1日数千件の入電がある。その中で「電子マネー払い」に関する問い合わせが入り始めたのは、「昨年秋ごろから」(立石満美お客様満足室室長)。この時点での「電子マネー払い」に関する問い合わせは2、3件程度に過ぎなかったが、これに着目したのが"お客様プリーザー"(同社では「人を喜ばせる人」という意味を込め、コールセンターのオペレーターをお客様プリーザーと呼ぶ)だった。
同社では、例え1件の声であっても、必要と判断すればサービスなどの導入を検討するという。この考え方が顧客ニーズに対するプリーザーの感度を磨き、まだ少数の「電子マネー払い」に対する顧客の声を拾い上げた形で、プリーザーの提案をもとに全社的なサービス導入の検討が始まった。
検討課題あるも顧客利便性重視 導入の検討過程では課題も浮上した。電子マネーは、小銭代わりの小額決済で利用するには便利だが、主力商品である「ドモホルンリンクル」の価格と電子マネーのチャージ上限金額の兼ね合いを考えると、顧客に利便性を感じてもらえるかなどが懸案事項となった。だが、最終的には決済メニューの拡充やポイント付与のメリットが顧客の利便性向上につながると判断。『Edy』『nanaco』『WAON』だけで顧客が利用するのかという疑問もあったが、ヤマトフィナンシャルから交通系電子マネーの対応が始まると聞き、「今後、お客様のニーズも高まり、利用して頂けると思った」(立石満美お客様満足室室長)。こうした検討の結果、サービス導入を決めた。
利用伸び率は全国トップクラス 実際のサービス提供は4月1日からだが、再春館によると、実際の利用状況としては、最初にサービスの利用があった4月17日から5月9日までの期間における「電子マネー払い」の利用件数が110件で、代引き決済全体に占める割合は1%。平均購入金額は1万9000円台で推移しているという。
「電子マネー払い」比率1%は、低い水準のようにも見えるが、ヤマトフィナンシャルによると、「導入開始からの構成比の伸びは、全国でもトップクラス」(松本年弘九州統括支店長)。購入金額についても、現金を含めた代引きの平均購入金額を上回り、2万円前後の全体平均と遜色のない水準で、再春館でも、予想以上の成果と評価する。
同社の場合、お買い得感に敏感な30~50代の女性層が中心顧客であることから、ポイント付与のメリットが「電子マネー払い」利用の動機付けになっているようだ。
順調推移支える告知方法の工夫 「電子マネー払い」の順調な推移を支えるもうひとつの要素と言えるのは、顧客に対するサービスの告知だ。これまでにも、サービスの告知方法を工夫している通販事業者が利用件数や購入金額を伸ばす傾向が見られたが、再春館でも、この定石を踏襲。「電子マネー払い」を展開する上で、最も重要な事項のひとつと捉えている。
同社が本格的に「電子マネー払い」の告知を始めたのは4月中旬から。自社サイトのほか会報誌、注文用シートなどでの展開で、サイト上では、トップページの新着情報でサービスを告知し、そこから決済手段の説明ページへ誘導。説明ページでは、使用できる電子マネーを分かりやすくするためブランドマークを目立つように表示するほか、利用方法などの情報を提供している。
説明ページへのアクセス件数(5月23日から31日)は、トップページからが約40件、商品注文時が約100件という状況。これは、利便性やメリットのある決済手段に対する顧客の関心の高さをうかがわせる同時に、サービス告知の重要性を表したものと言える。
決済手段の拡充は顧客の利便性を高めることにつながるが、同社では、実際に利用してもらうためには、サービス内容やメリットを分かりやすく伝え、顧客が選択しやすくすることが重要と分析。「電子マネー払い」を選んでもらう上でも、「告知や説明をより分かりやすく、使いやすい形にしていくことが今後の課題」(立石室長)としている。
交通系で新たな客層の利用期待 「電子マネー払い」は、顧客の利便性向上を主眼に導入したものだが、再春館では、電子マネーユーザー層となる顧客の開拓にも期待。この部分では、すでに電話対応で代引きを希望した顧客や電子マネー保有率が高い年代の顧客に「電子マネー払い」を案内する取り組みも行っているが、さらに5月23日から対応が始まった交通系電子マネーが大きなポイントになると見ているようだ。
同社の場合、顧客の4割が交通系電子マネーの保有率の高い首都圏に在住。「Suica」や「PASMO」で代引き決済ができるようになれば、「電子マネー払い」のメリットを享受できる顧客が一気に増え、サービスの利用拡大につながる。また、通勤・通学などで幅広い年代層が保有していること考えると、新しい顧客との接点になる可能性もある。
顧客の声を受け「電子マネー払い」を導入した再春館製薬所。その理想形は、決済の利便性向上でファンを増やし、末長く商品を利用してもらうことになる。同サービスは、まだ始まったばかりだが、すでに顧客から「電子マネーが利用でき買いやすくなった。今後もすっと『ドモホルンリンクル』使いたい」という声も寄せられており、今後の展開に手応えを感じているようだ。
きっかけは数件の問い合わせ
「宅急便コレクト お届け時電子マネー払い」(電子マネー払い)は、通販商品等の受け取り時に、「宅急便」のセールスドライバーが携行する携帯端末で電子マネー決済ができるというもの。現金との併用のほか、決済金額に応じたポイントが付与されるのが特徴だ。
これまでの展開では、ポイント付与がフックとなり、平均購入金額が1万円超になるなど、ヤマト側の見込みを上回るペースで推移。さらに従来からの「Edy」「nanaco」「WAON」に加え、5月23日から「Suica」「ICOCA」「SUGOCA」などJRを中心とした交通系電子マネーへの対応が始まり、有力通販事業者の間でも注目度が高まっている。
こうした中、再春館製薬所(再春館)は今年4月1日に「電子マネー払い」を導入。その端緒は、顧客の声だったという。
熊本県益城郡にある本社「つむぎ商館」のコールセンターには、顧客から1日数千件の入電がある。その中で「電子マネー払い」に関する問い合わせが入り始めたのは、「昨年秋ごろから」(立石満美お客様満足室室長)。この時点での「電子マネー払い」に関する問い合わせは2、3件程度に過ぎなかったが、これに着目したのが"お客様プリーザー"(同社では「人を喜ばせる人」という意味を込め、コールセンターのオペレーターをお客様プリーザーと呼ぶ)だった。
同社では、例え1件の声であっても、必要と判断すればサービスなどの導入を検討するという。この考え方が顧客ニーズに対するプリーザーの感度を磨き、まだ少数の「電子マネー払い」に対する顧客の声を拾い上げた形で、プリーザーの提案をもとに全社的なサービス導入の検討が始まった。
検討課題あるも顧客利便性重視
導入の検討過程では課題も浮上した。電子マネーは、小銭代わりの小額決済で利用するには便利だが、主力商品である「ドモホルンリンクル」の価格と電子マネーのチャージ上限金額の兼ね合いを考えると、顧客に利便性を感じてもらえるかなどが懸案事項となった。だが、最終的には決済メニューの拡充やポイント付与のメリットが顧客の利便性向上につながると判断。『Edy』『nanaco』『WAON』だけで顧客が利用するのかという疑問もあったが、ヤマトフィナンシャルから交通系電子マネーの対応が始まると聞き、「今後、お客様のニーズも高まり、利用して頂けると思った」(立石満美お客様満足室室長)。こうした検討の結果、サービス導入を決めた。
利用伸び率は全国トップクラス
実際のサービス提供は4月1日からだが、再春館によると、実際の利用状況としては、最初にサービスの利用があった4月17日から5月9日までの期間における「電子マネー払い」の利用件数が110件で、代引き決済全体に占める割合は1%。平均購入金額は1万9000円台で推移しているという。
「電子マネー払い」比率1%は、低い水準のようにも見えるが、ヤマトフィナンシャルによると、「導入開始からの構成比の伸びは、全国でもトップクラス」(松本年弘九州統括支店長)。購入金額についても、現金を含めた代引きの平均購入金額を上回り、2万円前後の全体平均と遜色のない水準で、再春館でも、予想以上の成果と評価する。
同社の場合、お買い得感に敏感な30~50代の女性層が中心顧客であることから、ポイント付与のメリットが「電子マネー払い」利用の動機付けになっているようだ。
順調推移支える告知方法の工夫
「電子マネー払い」の順調な推移を支えるもうひとつの要素と言えるのは、顧客に対するサービスの告知だ。これまでにも、サービスの告知方法を工夫している通販事業者が利用件数や購入金額を伸ばす傾向が見られたが、再春館でも、この定石を踏襲。「電子マネー払い」を展開する上で、最も重要な事項のひとつと捉えている。
同社が本格的に「電子マネー払い」の告知を始めたのは4月中旬から。自社サイトのほか会報誌、注文用シートなどでの展開で、サイト上では、トップページの新着情報でサービスを告知し、そこから決済手段の説明ページへ誘導。説明ページでは、使用できる電子マネーを分かりやすくするためブランドマークを目立つように表示するほか、利用方法などの情報を提供している。
説明ページへのアクセス件数(5月23日から31日)は、トップページからが約40件、商品注文時が約100件という状況。これは、利便性やメリットのある決済手段に対する顧客の関心の高さをうかがわせる同時に、サービス告知の重要性を表したものと言える。
決済手段の拡充は顧客の利便性を高めることにつながるが、同社では、実際に利用してもらうためには、サービス内容やメリットを分かりやすく伝え、顧客が選択しやすくすることが重要と分析。「電子マネー払い」を選んでもらう上でも、「告知や説明をより分かりやすく、使いやすい形にしていくことが今後の課題」(立石室長)としている。
交通系で新たな客層の利用期待
「電子マネー払い」は、顧客の利便性向上を主眼に導入したものだが、再春館では、電子マネーユーザー層となる顧客の開拓にも期待。この部分では、すでに電話対応で代引きを希望した顧客や電子マネー保有率が高い年代の顧客に「電子マネー払い」を案内する取り組みも行っているが、さらに5月23日から対応が始まった交通系電子マネーが大きなポイントになると見ているようだ。
同社の場合、顧客の4割が交通系電子マネーの保有率の高い首都圏に在住。「Suica」や「PASMO」で代引き決済ができるようになれば、「電子マネー払い」のメリットを享受できる顧客が一気に増え、サービスの利用拡大につながる。また、通勤・通学などで幅広い年代層が保有していること考えると、新しい顧客との接点になる可能性もある。
顧客の声を受け「電子マネー払い」を導入した再春館製薬所。その理想形は、決済の利便性向上でファンを増やし、末長く商品を利用してもらうことになる。同サービスは、まだ始まったばかりだが、すでに顧客から「電子マネーが利用でき買いやすくなった。今後もすっと『ドモホルンリンクル』使いたい」という声も寄せられており、今後の展開に手応えを感じているようだ。