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「計画停電」通販各社への影響は? 各種業務に影響、関東圏の消費落ち込みも懸念

2011年 3月30日 18:14

 通販各社にとって震災による拠点や在庫品の損壊、破損などの直接被害よりも、深刻な悪影響を与えつつあるのが関東エリアで実施され始めた「計画停電」の影響だ。計画停電の対象地域に本社やコールセンター、物流センターを構えている通販企業には影響が出ている模様。また、計画停電エリアの消費者は停電中は当然、テレビやパソコンなどが使用できない状況になるため、計画停電外のテレビ通販実施企業やネット販売事業者にとっても、影響が出る可能性もあるようだ。

 「計画停電」の対象地域に物流センターなどの拠点を構える通販事業者は多く、影響も出始めている。

 千趣会では鹿沼商品センター(栃木県鹿沼市)が計画停電の対象地域に所在しており、従業員の出勤や商品発送などで影響が出ている状況。勤務シフトも、午前中に計画停電が実施される場合は午後からの出勤、午後からの実施の場合には、通常出勤で計画停電前に終業する形で、商品の発送数量が「計画の50~70%前後」(広報)にとどまっているという。

 同センターでは地震発生時、自家発電設備を活用しシステムの稼働を維持したが、計画停電の影響が夏場にも出る見込みであることから、センター全体の電源が賄えるよう、自家発電設備のキャパシティー増強工事を進めるとしている。

 ベルーナでは、上尾市の本社のほか、管内のコールセンター、物流センターなどが計画停電の対象地域となっており、コールセンターの場合は、停電となった時間は他の地域のセンターに回すことで対処。物流センターや本社業務に関しても、停電時には業務が一部停止するが、「午前中に停電が予定されている場合は出勤を遅らせる、夕方に予定されている場合は早めに業務を終わらせるなどの対策を取っている」(経営企画室)という。

 ケンコーコムでは、今のところ本社がある東京都港区が計画停電の対象地域から外れているため機能的な支障はないが、「社員の出勤に影響が出ている」(MD部)という。これに付随して、安定的なコールセンター人員の確保が難しいことから、電話対応を一旦停止し、メールベースで顧客対応をしている状況。今後、本社所在地域が計画停電の対象となることも想定し、データセンターの分散化なども検討しているという。

 一方で栃木の宇都宮物流センターについては、計画停電の対象地域に所在。計画停電が実施された場合、従業員の出勤に支障があり、「3時間程度の停電でも、前後の準備作業があるため、稼働率が半分から3分の1程度になる」(同)とする。計画停電の実施は長期にわたる見込みであることから、対策の検討も必要と見ているようだ。

 ディノスでは東京・町田市にある物流センター「ディノスロジスティクスセンター東京」が計画停電区域となっている。今のところ、実際には一度も停電になっていない状況だが、商品のピッキング中などに突然、停電しラインが途中で止まると問題が発生するため、計画停電が実施される際は、すぐに作業を完全にとめられる等の準備は整えているという。

 オークローンマーケティングは物流業務を委託するNTTロジスコの「千葉物流センタ」が計画停電対象の千葉・市川にある。これまで実際には停電は実施されていないようだが、停電予告に従い、システムを事前に落とすなどの対応が必要となり、拠点の操業時間の短縮などを一部実行したとしている。

 全日空商事では、計画停電の影響として、自社の物流倉庫で検品や梱包などの作業が停止することによる出荷の遅れを挙げている。ただ、通販サイト上で遅配に関する説明などを行っているため、顧客からのクレームや問い合わせはないようだ。

 一方、計画停電の対象地域の外に拠点を構える企業では当然ながら、直接的な影響はないようだ。ただし、そうした企業も今後、じわりじわりと「計画停電」の影響を受けることになるかもしれない。

 計画停電の対象地域は東京都内を一部含む関東県内で広く実施されている。これにより、関東圏に拠点を置くメーカーやベンダーの営業活動が滞る可能性がある。そうなると通販企業にとっても商品調達面で影響が出てくる恐れもある。

 さらに深刻なのは関東圏の消費需要が落ち込むこと。関東圏は全国を相手にする通販企業にとっても最大の商圏と言えるが、停電が起こることでその間、当該地域在住の消費者はテレビやパソコンが使えなくなる。

 実はこれは通販企業にとっては深刻でインフォマーシャルを放映しても視聴可能世帯が目減りし、売り上げは当然、平常時よりも落ち込むことが予想される。これについては様々なテレビ通販企業から懸念の声がすでに挙がっている。

 また、通販企業にとってもはや欠かせない「売り場」である通販サイトが停電で顧客が利用できなくなることで業績に大きな打撃を与えることは必至だ。

 とりあえず、計画停電はいったん4月で終わる予定だが、電力需要が増加する夏場には再度実施される公算が高いようだ。さらにこのままでは現在は計画停電エリアから除外されている大商圏である都内も多くの区で実施されるとの話もある。各社は計画停電の実施状況を注視する必要がありそうだ。

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