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放射性物質・健食への影響 顧客対応に限界、行政も適切な対応策示せず

2011年 3月30日 18:12

 福島原子力発電所の事故に関連し、放射性物質の健康食品への影響が懸念されている。健食を扱う通販企業にも顧客から商品の安全性に関する問い合わせが寄せられているが、各社対応には苦慮しているよう。だが、対応策を示すべき行政サイドもこの件に適切な指針を示せないでいる。間違った対応を行えば風評被害に発展する恐れもある問題だけに、各社慎重な舵取りを求められそうだ。

 飲食物への放射性物質の影響が取沙汰された3月17日以降、厚生労働省は飲料水や野菜等に放射性物質の暫定基準値や摂取制限の基準を示した。

 ただ、問題はこの基準に健食など加工食品の取扱いが含まれていないこと。指針のない中、健食各社の顧客対応は各々の判断に委ねられている。

 3月25日時点で各社に寄せられた商品の安全性に関する問い合わせはいずれも「数件程度」。微妙なニュアンスの違いで顧客の受け取り方は異なるが、実際の対応や想定回答は3つに類型される。

 一つは「生産拠点が原発から遠い」というもの。だが流通過程を経る中で関東を中心に放射性物質が検出される中、十分な説明と言えるだろうか。

 続いて「震災前に製造・納品した商品」というもの。ただ、これも言外に震災後に納品された商品への不安を増すことになりかねない。

 「自社の安全基準をクリアした原料を使用している」という回答もあり、震災後に納品された商品に対する説明など前出2例を補完する形で説明するケースもある。が、いずれも放射性物質が付着していないことを確実に説明しうるものではない。最終的には1品ずつ検査するほかないからだ。


 ただ、検査器を使い点検しても健食には許容される放射性物質の基準値はなく、事業者として判断しようがないのが実際。口頭の説明も実証されれば「表示」と見なされるため、対応には限界がある。

 これに対し、健康増進法や食品衛生法を所管する消費者庁食品表示課では、「口蹄疫問題のように不適切な表示があれば対応する」とした。口蹄疫問題の際には、感染した牛肉等が流通していないのに「宮崎県産の牛肉は使用していない」と、根拠のない不安を与える表示を行わないよう指導した過去がある。ただ、「現状、消費者から問い合わせはない」として問題化していないとの認識だ。

 一方、景品表示法を所管する同庁表示対策課は、「健康を損なうものでなければ問題ないが、点検していないのに『震災前に納品したので』『安全基準で確認しているから』安全というロジックは、実際、放射性物質が検出された場合、優良誤認にあたる」とする。ただ、点検したとしても判断基準がないのは前段で示した通り。同課も「問題は消費者がどう認識したか。問題視するレベルなら各段階で取るべき措置は検討できる」としており、すぐに指導対象とする可能性は低そうだ。


 とはいえ、問題は事業者が対応の判断基準とすべき指針がないこと。行政サイドも"適切な対応策"には難渋を示す。

 食品表示課に聞くと、「一義的には業界を指導する立場にある農林水産省が前面に出てまず対応する話」と回答。食衛法に放射性物質の安全基準がないため管轄外となるようだが、農水省も「厚労省の指針に基づき事業者を指導するが健食には言及していない」(総合食糧局流通課)と対応しない。

 当の厚労省は「健食など加工食品は食品安全委員会で連日議論しており、近く結論が出る」(食品食監安全課)としたが、食安委は「健食の取り扱いについて議論していない。放射性物質の人体への影響に関する結果を受け、商品別の対応は厚労省が指針を示すのでは」と、明快な答えは得られなかった。

 結局のところ厚労省の見解を待つほかなさそうだが、日本通信販売協会は、「政府発表以上の踏み込んだ対応を行うと、被災地域に対する風評被害を生ずることになり得る」との見解を示している。適切な対応策を行政サイドが示せない中、最小限の説明で消費者に理解してもらうことが肝要といえそうだ。

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