事前審査の"甘さ"が露呈か 「ネットで注文したおせちがこない」。おせち料理のネット販売を巡る様々なトラブルが年明け早々から次々に発覚し、世間を騒がせている。いくつかの仮想モールでも遅配などが起こっているようだが、最大の「震源地」となったのはクーポン券の共同購入サービスサイト経由で販売されたおせち。遅配に加え、おせちの中身が当初の豪華な内容とは似ても似つかない「スカスカのおせちが届いた」からだ。
この問題を巡っては、ニュース番組や一般紙でも大きく取り上げられ、これを受けて消費者庁も近く関係会社に事情聴取に動くという報道まで出てきており、大きな問題に発展しつつある。この件をきっかけに食品のネット販売市場全体にも悪影響を及ぼす可能性もありそうだ。なぜ、こうした問題が起きてしまったのか。
昨年の大晦日。クーポン共同購入サイト「GROUPON(グルーポン)」を運営するグルーポン・ジャパン(本社・東京都渋谷区、瀬戸恵介社長)が販売したおせち料理を購入した消費者から配送遅配や商品内容が事前の説明と異なるといった苦情が相次いだ。
問題のおせちは外食文化研究所の「バードカフェ謹製おせち」。昨年11月25日~27日の期間、「GROUPON」を通じて通常価格2万1000円を半額の1万500円で500セット販売した(=画像)。
グルーポンによると、配送予定日である12月31日になっても商品が届かず、届いても商品の数量や盛り付けなどが事前の説明とは違うといった苦情が31日だけで92件寄せられたという。
グルーポンは翌1月1日にサイト上で謝罪文を発表。購入者に対して全額返済するほか、5000円相当のギフトチケットなどを"お詫びの気持ち"として提供すると発表した。
一方、外食文化研究所も1月2日にサイトに謝罪文を掲載。同社の社長である水口賢治社長が1日付けでの辞任を発表した。同社に対しては1月4日から横浜市保健所が「報道やメールによる情報提供を受け」(食品衛生課)、衛生管理に問題がなかったかなど立ち入り調査を実施する事態となった。では、なぜ、こうした最悪の事態となってしまったのだろうか。
業界関係者からの話を総合すると大きく2つの原因が浮かび上がる。まず、おせち料理という商材特有の"難しさ"が関係していたようだ。そもそも、おせちは品目数の多さや品質管理などで通販商品として取り扱うのは非常に大変な代物。加えて"必ず大晦日までに届けなければならない"という季節商品であり、配送にも気を使うため通常の食品よりも扱いが難しいという。
「毎年、おせちを販売する我々でも"難しい"と感じるのに、十分な準備や体制もなく安易におせちのネット販売に手を出したのがそもそもの失敗」(食品の通販実施企業の幹部)という。
もう1つは「売り場」を提供した「グルーポン・ジャパンの責任感の欠如だ」という声も出ている。本来であれば、当然の責任として提供側の体制を見極め、本当におせち料理を一定数(今回の場合は500セット)供給できるかどうかを判断する必要があったのではないか。
グルーポン・ジャパンは、昨年8月に米グルーポン社が同業のクーポッドを買収。潤沢な資金を背景とした営業力を武器にクーポンの取扱店舗やエリアを急拡大させ、同時にCMなどの広告展開で認知を高めていた。
業界関係者らによると、拡大を優先した結果「人数を投入してかなり粗い営業を行っていた」「とにかく契約が取れれば良いというやり方」と指摘する。今回の問題も拡大路線の中で取引先企業の審査がおろそかになったことで、「起こるべくして起きた」(同業他社)のが実情のようだ。
これについては同社が1月5日に発表した謝罪文の中で品質や製造、配送などの面で商品提供企業の選定が不適切であったことを認めている。その上で、今後の対策としてクーポン商品提供先企業の「事前審査を厳格化」していくとしているが、具体的にどのような対策を取っていくのかは本紙の取材に対して「担当者が不在」(グルーポン・ジャパン)としており不明だ。
昨年に大きくブレークした「クーポン共同購入」という新たなネット販売のサービスが消費者に受け入れられ浸透し始めた矢先に起きたおせち問題。これ以上の失態はせっかくのチャンスをつぶすほか、「やはりネット販売はこわい」という印象を消費者に与えかねない通販全体に関わる問題だ。
グルーポン・ジャパンなど関係会社には猛省を促すほか、同業他社も今後の戒めとすべきだろう。
「ネットで注文したおせちがこない」。おせち料理のネット販売を巡る様々なトラブルが年明け早々から次々に発覚し、世間を騒がせている。いくつかの仮想モールでも遅配などが起こっているようだが、最大の「震源地」となったのはクーポン券の共同購入サービスサイト経由で販売されたおせち。遅配に加え、おせちの中身が当初の豪華な内容とは似ても似つかない「スカスカのおせちが届いた」からだ。
この問題を巡っては、ニュース番組や一般紙でも大きく取り上げられ、これを受けて消費者庁も近く関係会社に事情聴取に動くという報道まで出てきており、大きな問題に発展しつつある。この件をきっかけに食品のネット販売市場全体にも悪影響を及ぼす可能性もありそうだ。なぜ、こうした問題が起きてしまったのか。
昨年の大晦日。クーポン共同購入サイト「GROUPON(グルーポン)」を運営するグルーポン・ジャパン(本社・東京都渋谷区、瀬戸恵介社長)が販売したおせち料理を購入した消費者から配送遅配や商品内容が事前の説明と異なるといった苦情が相次いだ。
問題のおせちは外食文化研究所の「バードカフェ謹製おせち」。昨年11月25日~27日の期間、「GROUPON」を通じて通常価格2万1000円を半額の1万500円で500セット販売した(=画像)。
グルーポンによると、配送予定日である12月31日になっても商品が届かず、届いても商品の数量や盛り付けなどが事前の説明とは違うといった苦情が31日だけで92件寄せられたという。
グルーポンは翌1月1日にサイト上で謝罪文を発表。購入者に対して全額返済するほか、5000円相当のギフトチケットなどを"お詫びの気持ち"として提供すると発表した。
一方、外食文化研究所も1月2日にサイトに謝罪文を掲載。同社の社長である水口賢治社長が1日付けでの辞任を発表した。同社に対しては1月4日から横浜市保健所が「報道やメールによる情報提供を受け」(食品衛生課)、衛生管理に問題がなかったかなど立ち入り調査を実施する事態となった。では、なぜ、こうした最悪の事態となってしまったのだろうか。
業界関係者からの話を総合すると大きく2つの原因が浮かび上がる。まず、おせち料理という商材特有の"難しさ"が関係していたようだ。そもそも、おせちは品目数の多さや品質管理などで通販商品として取り扱うのは非常に大変な代物。加えて"必ず大晦日までに届けなければならない"という季節商品であり、配送にも気を使うため通常の食品よりも扱いが難しいという。
「毎年、おせちを販売する我々でも"難しい"と感じるのに、十分な準備や体制もなく安易におせちのネット販売に手を出したのがそもそもの失敗」(食品の通販実施企業の幹部)という。
もう1つは「売り場」を提供した「グルーポン・ジャパンの責任感の欠如だ」という声も出ている。本来であれば、当然の責任として提供側の体制を見極め、本当におせち料理を一定数(今回の場合は500セット)供給できるかどうかを判断する必要があったのではないか。
グルーポン・ジャパンは、昨年8月に米グルーポン社が同業のクーポッドを買収。潤沢な資金を背景とした営業力を武器にクーポンの取扱店舗やエリアを急拡大させ、同時にCMなどの広告展開で認知を高めていた。
業界関係者らによると、拡大を優先した結果「人数を投入してかなり粗い営業を行っていた」「とにかく契約が取れれば良いというやり方」と指摘する。今回の問題も拡大路線の中で取引先企業の審査がおろそかになったことで、「起こるべくして起きた」(同業他社)のが実情のようだ。
これについては同社が1月5日に発表した謝罪文の中で品質や製造、配送などの面で商品提供企業の選定が不適切であったことを認めている。その上で、今後の対策としてクーポン商品提供先企業の「事前審査を厳格化」していくとしているが、具体的にどのような対策を取っていくのかは本紙の取材に対して「担当者が不在」(グルーポン・ジャパン)としており不明だ。
昨年に大きくブレークした「クーポン共同購入」という新たなネット販売のサービスが消費者に受け入れられ浸透し始めた矢先に起きたおせち問題。これ以上の失態はせっかくのチャンスをつぶすほか、「やはりネット販売はこわい」という印象を消費者に与えかねない通販全体に関わる問題だ。
グルーポン・ジャパンなど関係会社には猛省を促すほか、同業他社も今後の戒めとすべきだろう。