小林製薬は、経営体制を刷新する。国際畑出身の豊田賀一氏が社長に昇格。山根聡社長は、3月に予定する定時株主総会の決議を経て退任する。取締役への損害賠償、新任取締役の選任など、香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントの株主提案は拒否する。
再発防止策実行の観点から、取締役会の体制を見直す。株主総会で、9人の取締役選任を予定。ほかに医療分野の知見を持つ候補者1人の調整を進める。
代表取締役社長は、同社執行役員国際事業本部本部長の豊田氏の就任を予定する。06年に欧州の子会社の社長を務めて以降、一貫して欧米、中国など国際事業を担当してきた。直近の第3四半期の業績は、国内事業が前年比8%減、国際事業は同9%増。米国、東南アジアは伸長しており、グローバル戦略を強化する。
取締役会長は、日本航空で経営再建に関わった大田嘉仁氏を社外から招へいする。取締役候補は、ほかに同社執行役員研究本部本部長の松嶋雄司氏、補償担当の小林章浩氏。特別顧問の小林一雅前会長も留任する。
社外取締役4人は、危機管理の知見を持つ片江善郎氏を除き退任する。内部統制強化、医療・医薬分野の知見、を持つ人材で監督機能を高める。
山根社長は、退任理由について「再発防止の枠組みなど一定の役割を果たした」と説明。今後の役職、退社等の判断は「未定」とする。
オアシスの株主提案は、今年2月に予定する臨時株主総会で決議する。新たに社外取締役3人、再調査に向けた調査者の選任を提案しており、選任を巡る委任状争奪戦に発展する。ほかに健康被害問題発生当時の取締役7人(1人はすでに退任)に、約110億円の損害賠償を求める株主請求も行う。小林製薬は、1月の取締役会でいずれも全会一致で反対を決議した。
提訴は、取締役に注意義務違反を含む法令違反は認められないと判断した。再調査は、再発防止策の実行、経営改善の停滞を招き、改革の支障になると判断した。取締役選任の提案は、「取締役会の全体像を見て判断してもらうべきと考えた。個別の評価は差し控える」(山根社長)と反対の理由を話した。
補償の状況は、「問い合わせ」が1200人。昨年11月時点から50人増えた。このうち書類の受領が750人。内容を確認したのが500件、確認中が250件。
体制刷新の背景
再発防止に道筋、「全社一丸で新たな価値創造へ」
小林製薬で健康被害問題に対応してきた山根聡社長が退任する。新体制発表の理由を山根社長(=写真)に聞いた。
――今のタイミングで退任する理由は。
「就任時から託された使命を全うし、方向性が見えた段階で自らけじめをつけることは考えていた」
――使命は。
「被害・損害を受けられた方への補償の枠組みをつくること、再発防止策をまとめること、実行するのは人であるため、従業員に思いを伝え全社一丸で取り組めるようにすること」
――創業家の信頼がある。創業家脱却に必要なことは。
「是々非々の議論をして、自分達で価値を高め、自らを律することができるようにしたいと考えていた。一方で、大株主として創業家がいるのは事実。私達が考える企業価値向上策に理解を示し、サポートしてもらう努力を続けてもらいたい」
――後任の社長に期待することは。
「補償、再発防止の実行は道半ば。全うしてほしい」
――特別顧問の小林一雅前会長の人事に変更はないか。
「社内で議論はあるが変更はない」
――会長室を使っているということだがどうなる。
「取締役の選任後に検討させてもらう」
――オアシス・マネジメントの提案に反対するが、臨時株主総会開催の提案を受け入れたのはなぜか。
「株主の権利であるため尊重し、是々非々で意見交換する」
――委任状争奪戦が予想される。株主とどう向き合う。
「当社の考えを株主に説明し、理解してもらうことに努めたい」
――人事案は、株主提案以前から検討していたか。対案に見える。
「取締役会刷新は株主提案前から検討していた」
――国内の広告再開のめどは。
「確定したことはない。原因調査が進行中のため、総合的に判断したい」
――第4四半期の事業の減収幅は。
「決算公表まで回答は控えたい」
――後任の代表は国際畑を歩まれてきた。グローバル戦略で強化するエリアは。
「国内事業強化に加え、複数のM&Aを行った北米、新工場を建設する東南アジアになると思う」
――再発防止は「人」が要になる。社員の離職、意識改革の状況は。
「問題発生で離職は相当増えるとの印象を持った。実際にあったが、結果としては一致団結して結束する力が強かった。全社一丸で新しい価値創造に向かえると確信している」
――離職の割合は。
「例年3%ほど。これを少し上回る程度だった」
再発防止策実行の観点から、取締役会の体制を見直す。株主総会で、9人の取締役選任を予定。ほかに医療分野の知見を持つ候補者1人の調整を進める。
代表取締役社長は、同社執行役員国際事業本部本部長の豊田氏の就任を予定する。06年に欧州の子会社の社長を務めて以降、一貫して欧米、中国など国際事業を担当してきた。直近の第3四半期の業績は、国内事業が前年比8%減、国際事業は同9%増。米国、東南アジアは伸長しており、グローバル戦略を強化する。
取締役会長は、日本航空で経営再建に関わった大田嘉仁氏を社外から招へいする。取締役候補は、ほかに同社執行役員研究本部本部長の松嶋雄司氏、補償担当の小林章浩氏。特別顧問の小林一雅前会長も留任する。
社外取締役4人は、危機管理の知見を持つ片江善郎氏を除き退任する。内部統制強化、医療・医薬分野の知見、を持つ人材で監督機能を高める。
山根社長は、退任理由について「再発防止の枠組みなど一定の役割を果たした」と説明。今後の役職、退社等の判断は「未定」とする。
オアシスの株主提案は、今年2月に予定する臨時株主総会で決議する。新たに社外取締役3人、再調査に向けた調査者の選任を提案しており、選任を巡る委任状争奪戦に発展する。ほかに健康被害問題発生当時の取締役7人(1人はすでに退任)に、約110億円の損害賠償を求める株主請求も行う。小林製薬は、1月の取締役会でいずれも全会一致で反対を決議した。
提訴は、取締役に注意義務違反を含む法令違反は認められないと判断した。再調査は、再発防止策の実行、経営改善の停滞を招き、改革の支障になると判断した。取締役選任の提案は、「取締役会の全体像を見て判断してもらうべきと考えた。個別の評価は差し控える」(山根社長)と反対の理由を話した。
補償の状況は、「問い合わせ」が1200人。昨年11月時点から50人増えた。このうち書類の受領が750人。内容を確認したのが500件、確認中が250件。
小林製薬で健康被害問題に対応してきた山根聡社長が退任する。新体制発表の理由を山根社長(=写真)に聞いた。
――今のタイミングで退任する理由は。
「就任時から託された使命を全うし、方向性が見えた段階で自らけじめをつけることは考えていた」
――使命は。
「被害・損害を受けられた方への補償の枠組みをつくること、再発防止策をまとめること、実行するのは人であるため、従業員に思いを伝え全社一丸で取り組めるようにすること」
――創業家の信頼がある。創業家脱却に必要なことは。
「是々非々の議論をして、自分達で価値を高め、自らを律することができるようにしたいと考えていた。一方で、大株主として創業家がいるのは事実。私達が考える企業価値向上策に理解を示し、サポートしてもらう努力を続けてもらいたい」
――後任の社長に期待することは。
「補償、再発防止の実行は道半ば。全うしてほしい」
――特別顧問の小林一雅前会長の人事に変更はないか。
「社内で議論はあるが変更はない」
――会長室を使っているということだがどうなる。
「取締役の選任後に検討させてもらう」
――オアシス・マネジメントの提案に反対するが、臨時株主総会開催の提案を受け入れたのはなぜか。
「株主の権利であるため尊重し、是々非々で意見交換する」
――委任状争奪戦が予想される。株主とどう向き合う。
「当社の考えを株主に説明し、理解してもらうことに努めたい」
――人事案は、株主提案以前から検討していたか。対案に見える。
「取締役会刷新は株主提案前から検討していた」
――国内の広告再開のめどは。
「確定したことはない。原因調査が進行中のため、総合的に判断したい」
――第4四半期の事業の減収幅は。
「決算公表まで回答は控えたい」
――後任の代表は国際畑を歩まれてきた。グローバル戦略で強化するエリアは。
「国内事業強化に加え、複数のM&Aを行った北米、新工場を建設する東南アジアになると思う」
――再発防止は「人」が要になる。社員の離職、意識改革の状況は。
「問題発生で離職は相当増えるとの印象を持った。実際にあったが、結果としては一致団結して結束する力が強かった。全社一丸で新しい価値創造に向かえると確信している」
――離職の割合は。
「例年3%ほど。これを少し上回る程度だった」