寝具の輸入販売などを行うフラグスポートのネット販売売り上げが急伸している。けん引するのはコロナ禍後に開始した生配信で商品を紹介する、いわゆるライブコマースだ。主力商品はマットレスで単価も高いこともあり、一般的にネット販売で取り扱いにくい商材だが、よりよい寝具を求めて購入を迷うユーザーへライブコマースで適切に商品の特徴を伝達、疑問点を解消することでそれまで通販サイトではあまり売れ行きが芳しくなかった10万円を超える高額品の売れ行きが急伸。また、ライブ配信の映像を加工し短尺動画を作成、SNSで配信を行うことで新規顧客獲得にも寄与し、ネット販売全体の売り上げ拡大に貢献しているという。
イタリアの寝具ブランド「マニフレックス」の総輸入販売元として同社製品を軸に寝具販売を展開するフラグスポートは従来まで寝具店などへの卸販売を中心に事業を展開してきたが、2019年末からのコロナ禍を経て自社通販サイトでのネット販売に本腰を入れ始め、EC売上高を伸ばした。コロナ禍収束に伴い、急成長も落ちついたもののいまだ実店舗に客足が戻らず、また販路の一角としてすでに定着したECのさらなる拡大を図るために着手したのがユーザーとのコミュニケーションの強化だった。
「当時、(卸先の)店舗にまだ客足は戻っていなかった一方で、当社サイトにはユーザーが多く来訪、質の高い睡眠を求めてよりよいマットレスを探そうとしている方が増えていることは実感していた」(IT事業部・和田悠輔次長)ものの、潜在顧客が実購入につながらない主因として「よいマットレスは欲しいが種類も多く、かつ高額であり、どれを買ってよいか分からないのでは。コミュニケーションを密にすることで購入の手助けができるのではないか」(同)とし、LINEおよびインスタグラムの公式アカウントを開設。フェイスブックやXでのDMも解禁し、SNSを通じた潜在顧客への情報発信強化と商品の疑問点などユーザーからの質問を受け付ける窓口を設けた。
この施策は図に当たり、実際にユーザーから寄せられた質問に返答すると当該ユーザーによる同社商品の購入率は高まったという。ただ、誤算だったのは思ったほど質問がこなかったこと。「もっと質問が来るようにLINEの公式アカウントをフォローした人に期間限定クーポン券を付与する取り組みを行ったが、クーポンの取得率は高いが実際にそれを使用して買い物をする人は3割程度で質問も変わらず来なかった」(同)という。ユーザーにとって同社の公式アカウントをフォローするメリットは興味ある同社寝具の購入に使用できる「クーポン券の入手」と「購入を検討する寝具に関する質問ができる」という点となるが、当該クーポン券の取得率が高い一方で、実使用が少なく、質問もこないという状況は「クーポンを取得しているため、商品に興味はあり、そのために質問もしたいが質問はある程度の知識が前提にないとできず、(ユーザーは)『何を質問してよいか分からない』ので質問がこないのでは」(和田次長)と考えたという。
そこで検討し始めたのがライブコマースだ。「店舗での接客でも店員がある程度、商品のことを説明したあとに、それを踏まえてお客様から質問がある。質問をしてもらうには一定の情報をまずは聞いてもらう必要がある。そのためには、店頭と同じようにオンラインでも店員が商品の説明をして、その後にお客様からの質問にも対応できるライブ配信が向いているのではないか」(同)とし、シームレスに商品を購入できるよう自社通販サイト上に配信映像を表示できたり、配信中に出演者らが専用バーコードリーダーで商品のバーコードを読み取ることで配信画面に利用者がクリック・タップすると当該商品の販売ページへとリンクするアイコンを自動表示するなどの機能面や料金プランの柔軟さなどから検討した結果、パロニムが提供するライブコマースサービス「TigLIVE(ティグライブ)」を採用、2022年11月からライブ配信「LIVEでマニフレックス」を開始することにした。
「LIVEでマニフレックス」は東京・表参道に構える同社ショールームのあるビルの一室で普段からショールームへの来店客に商品の説明などの接客を担当するスタッフをメインに和田次長や広報担当者らが出演、毎回、新商品や売れ筋商品など2~3点に絞って特徴などを説明しつつ、リアルタイムに寄せられるコメントや質問に対応しながら進行していく1回30~40分程度、同社通販サイト上で配信するもの。
シングルサイズで10万円程度のマットレスを初回のライブコマースで紹介したところ、当該マットレスへの質問が同ライブ配信でのコメントのほかLINEなどSNS経由で急増。それに伴い、当該商品の売れ行きも大きく伸びた。「それまでECでは3~4万円程度の商品が売れ筋で10万円を超える商品はあまり動かなかったがその商品はリアルタイムのライブ配信とその後1週間視聴できるようにしたアーカイブ配信を合わせて1週間でこれまでの1カ月分の売れ行きになった。また、質問数もこれまでの倍以上になり、全体のEC売り上げも実施前の倍の月商になった」(和田次長)という。その後も「LIVEでマニフレックス」は1カ月に1~2回ペースで火曜日または木曜日の昼帯に定期配信しているが、その効果は変わらず高く、10万円を超える商品群の売り上げを押し上げるキラーコンテンツとなっているという。 (つづく)
イタリアの寝具ブランド「マニフレックス」の総輸入販売元として同社製品を軸に寝具販売を展開するフラグスポートは従来まで寝具店などへの卸販売を中心に事業を展開してきたが、2019年末からのコロナ禍を経て自社通販サイトでのネット販売に本腰を入れ始め、EC売上高を伸ばした。コロナ禍収束に伴い、急成長も落ちついたもののいまだ実店舗に客足が戻らず、また販路の一角としてすでに定着したECのさらなる拡大を図るために着手したのがユーザーとのコミュニケーションの強化だった。
「当時、(卸先の)店舗にまだ客足は戻っていなかった一方で、当社サイトにはユーザーが多く来訪、質の高い睡眠を求めてよりよいマットレスを探そうとしている方が増えていることは実感していた」(IT事業部・和田悠輔次長)ものの、潜在顧客が実購入につながらない主因として「よいマットレスは欲しいが種類も多く、かつ高額であり、どれを買ってよいか分からないのでは。コミュニケーションを密にすることで購入の手助けができるのではないか」(同)とし、LINEおよびインスタグラムの公式アカウントを開設。フェイスブックやXでのDMも解禁し、SNSを通じた潜在顧客への情報発信強化と商品の疑問点などユーザーからの質問を受け付ける窓口を設けた。
この施策は図に当たり、実際にユーザーから寄せられた質問に返答すると当該ユーザーによる同社商品の購入率は高まったという。ただ、誤算だったのは思ったほど質問がこなかったこと。「もっと質問が来るようにLINEの公式アカウントをフォローした人に期間限定クーポン券を付与する取り組みを行ったが、クーポンの取得率は高いが実際にそれを使用して買い物をする人は3割程度で質問も変わらず来なかった」(同)という。ユーザーにとって同社の公式アカウントをフォローするメリットは興味ある同社寝具の購入に使用できる「クーポン券の入手」と「購入を検討する寝具に関する質問ができる」という点となるが、当該クーポン券の取得率が高い一方で、実使用が少なく、質問もこないという状況は「クーポンを取得しているため、商品に興味はあり、そのために質問もしたいが質問はある程度の知識が前提にないとできず、(ユーザーは)『何を質問してよいか分からない』ので質問がこないのでは」(和田次長)と考えたという。
そこで検討し始めたのがライブコマースだ。「店舗での接客でも店員がある程度、商品のことを説明したあとに、それを踏まえてお客様から質問がある。質問をしてもらうには一定の情報をまずは聞いてもらう必要がある。そのためには、店頭と同じようにオンラインでも店員が商品の説明をして、その後にお客様からの質問にも対応できるライブ配信が向いているのではないか」(同)とし、シームレスに商品を購入できるよう自社通販サイト上に配信映像を表示できたり、配信中に出演者らが専用バーコードリーダーで商品のバーコードを読み取ることで配信画面に利用者がクリック・タップすると当該商品の販売ページへとリンクするアイコンを自動表示するなどの機能面や料金プランの柔軟さなどから検討した結果、パロニムが提供するライブコマースサービス「TigLIVE(ティグライブ)」を採用、2022年11月からライブ配信「LIVEでマニフレックス」を開始することにした。
「LIVEでマニフレックス」は東京・表参道に構える同社ショールームのあるビルの一室で普段からショールームへの来店客に商品の説明などの接客を担当するスタッフをメインに和田次長や広報担当者らが出演、毎回、新商品や売れ筋商品など2~3点に絞って特徴などを説明しつつ、リアルタイムに寄せられるコメントや質問に対応しながら進行していく1回30~40分程度、同社通販サイト上で配信するもの。
シングルサイズで10万円程度のマットレスを初回のライブコマースで紹介したところ、当該マットレスへの質問が同ライブ配信でのコメントのほかLINEなどSNS経由で急増。それに伴い、当該商品の売れ行きも大きく伸びた。「それまでECでは3~4万円程度の商品が売れ筋で10万円を超える商品はあまり動かなかったがその商品はリアルタイムのライブ配信とその後1週間視聴できるようにしたアーカイブ配信を合わせて1週間でこれまでの1カ月分の売れ行きになった。また、質問数もこれまでの倍以上になり、全体のEC売り上げも実施前の倍の月商になった」(和田次長)という。その後も「LIVEでマニフレックス」は1カ月に1~2回ペースで火曜日または木曜日の昼帯に定期配信しているが、その効果は変わらず高く、10万円を超える商品群の売り上げを押し上げるキラーコンテンツとなっているという。 (つづく)