家具・インテリア通販サイトの「FLYMEe(フライミー)」を運営しているフライミーでは、2023年7月期の売上高が前期に引き続いて前年比50%増となった。2期連続での大幅増収となった背景には、他社ECなどでは取り扱いのない商品を多数ラインアップしていることで、様々な好みやこだわり、目的を持って家具を探している人が数多くサイトを訪れることが大きい。BtoC、BtoBの両面でウェブでの認知拡大が進んでいる。現状の同社の取り組み成果や、今後の展望などについて見ていく。

　家具EC業界においては、多くの関連企業がコロナ禍の巣ごもり需要による恩恵を受けて、販促活動を一気に加速させた反面、感染状況が落ち着いた昨年頃からは買い控えによる反動減に直面。売れ残りの在庫を抱えることとなったケースも少なくないようだ。一方で同社の場合は、コロナ禍においても露出面で以前との大きな変化をつけず、また、サイトを定期的に訪れるファンが顧客として多くついていることから、右肩上がりの成長を持続させることができたという。

　「意識しているポイントが他サイトとは少し違うかも知れない」(坂本如矢社長)と語るように、コロナ禍で家具EC市場が特需に沸いた状況を尻目に、通常運転を継続。それでも変わらない伸びを続けることができた理由としては「年々、FLYMEeを認知する人が増えていて、それに伴って会員数なども伸びた。当社の場合、1度認知されると、ファンがついてリピートされる。他で比較できるサイトもないため、認知が上がるほど比例して自然と売り上げに紐づいていく」(同)と分析する。

　加えて、コロナ禍の特需の中で、リビング周りの内装を変えたり、家具を買い替えるという消費活動が盛んになった反面、深く検討せず間に合わせで家具を購入したがために、耐久性や機能性で後悔した人も一定数いたようだ。そのため、後に改めて家具をじっくり選んで買い直すという需要がFLYMEeに流れてきた面もあるとしている。

　また、差別化の大きな要因となっている商品ラインアップについては、今年10月時点でおよそ3万点を展開。その規模数もさることながら、あらゆるテイストの商品が混在しているところも同社の特徴の一つとなっている。

　近年の業界の大きな流れとして、ブランド力を持つ著名な家具・インテリア企業ほど、ウェブ上での価格競争からの脱却を図るために、ポイントや大型セールなどで訴求されるような大手のプラットフォームの売り場を避け始めた傾向があるという。「EC業界でそうしたプラットフォームとは異なる領域にいて、高付加価値でハイエンドな商品を適正な金額で販売できるところを国内で探すとなると当社ぐらいしか残っていないのでは」(同)と説明。実際に、ブランドの正規品を扱っているという立場から、割り引きやポイント付与には頼らずメーカー側の定める販売価格を遵守。現状、サイトでの取扱商品の価格としては、数千円～数百万円までの幅広いレンジがあるが、売れ筋の購入単価としては20万円～30万円前後が中心となり、他の家具サイトと比べても高額に位置する印象だ。

　ブランド側としては、FLYMEeで商品を販売することで、それまで自社で持っていた商圏ではリーチできなかったような層にまで、ウェブからの認知が拡大。FLYMEeでの販売を機に、直営店や卸先など既存のリアルの売り場にも顧客が来店するきっかけになることがあるという。

　家具業界の長年の課題として、新商品などの情報を一般消費者に対して広く知らしめる機会が少ないということがある。「例えば専門の雑誌媒体もそこまであるわけでもなく、ブランドの商品を広く展示できる大型店などもアパレルなどとは違って限られている。そういう意味では9割がたの商品は世の中に出てないとも言えるだろう」(同)と見解。

　その中で、当然、ウェブを活用したブランド認知の必要性が真っ先に挙げられるのだが、その露出の在り方如何では売り上げに大きな差が出てしまうというというのだ。

　家具の場合、BtoCだけでなくBtoBの市場も同様の規模で存在することから、公共施設や店、オフィス空間を手がけるコーディネーターといった人たちなどtoB向けの認知を図ることが重要になってくる。プロユースの人たちは、ポータルサイトなどに出ているようなポイント訴求や値引きを強調する商品については、そうした空間提案の場では候補に入れたがらないことから、価格訴求ではなく価値訴求ができるようなウェブだけに絞って露出するということが特に重要になるというのだ。

　「どこで流通されている商品かということで、そのブランドの価値が判断されることはある。そうした時に、FLYMEeがその一つの基準になっている面があるのではないだろうか」(同)としている。(つづく)