TSUHAN SHIMBUN ONLINE

インターネット・ビジネス・フロンティア株式会社
記事カテゴリ一覧

有店舗企業の通販戦略 良品計画(上) 「待機状態」の会員は5%

2010年 7月 1日 19:09

021.jpg 2009年末に会員数300万人を突破した、良品計画の「ネットストア」。ここ数年間は会員数が前年比20%増と好調に推移している。同社では「ネット販売はあくまでも、一販売チャネル」という位置付けだが、サイト内で次々繰り出す仕掛けは枚挙に暇がなく、その売上高もここ数年で急拡大。一事業として決して軽視できない規模までに成長している。同社最大の武器でもある「無印」ブランドのネームバリューと、全国に抱える340店以上の実店舗との連携が生み出す独自の通販戦略を追った。

「たった1日で1万人がネットストアの会員になったこともあった」(web事業部)。担当者が明かしたその数字が、そのまま"無印ブランド"の高い人気をあらわしている。

 会員獲得のために、昨年同社が仕掛けたのは、実店舗を使った勧誘活動だった。モバイルからネットストア会員登録することで10%オフのクーポンをダウンロードできるようにし、それを実店舗で掲示すると割引が適用されるキャンペーンを行ったのだ。全国すべての店舗で行い、メールアドレスだけの簡易な登録フォーマットにしたことで、大量の会員獲得につながったという。

 同社では「お店からネットへの誘導として非常にうまく行ったパターン」(同)と説明する。そのほかにも実店舗での会員獲得手段として、ネット会員の利便性を表記した商品カタログの陳列などを行っている。

会員引き込む「5つの特典」

 ネットストアの会員に特徴的なのが、いわゆる「待機状態」が少ないこと。同社によると(昨年12月の時点で)会員の95%が商品購入の実績があり、購買が止まっている会員は実に5%にしか過ぎないという。

 そこまで会員が購買活動を継続する理由は、既存のブランド力に加えて、ネット会員限定の「5つの特典」にあると言える。

 その1つ目が会員登録時に配布される500円クーポン、次に購入金額5250円からの配送無料サービス。そして、特に人気が高いとされる、季節商品やデザイン・仕様変更に伴う在庫処分品を集めた「ファクトリーアウトレット」サイトの利用権利。さらに年数回開催している10%程度の割引セール。最後に、希望者対象のアンケートや、モニタリングでの会社招待といった、コミュニティーへの参加を呼びかけたイベントの実施だ。

 アンケートに関しては回答内容が、同社が運営する「くらしの良品研究所」での商品開発に大きく関わることもあり、会員からの注目度は非常に高い。多い時は、1案件につき1万件以上の回答が集まることもあるという。過去に、アンケートやモニターの意見を参考に「ベランダ菜園キット」や「体にフィットするソファー」などが、商品化されている。

 定期的なイベント実施でサイトの閲覧機会を増やし、会員を巻き込んだモノづくりも行うことで、ブランドへの親近感を与える。これらの活動すべてがファンの育成につながっているのだ。

売上伸び率回復が課題

 同社の2010年2月期のネット販売売上高は、前期比9・9%増の82億2800万円。全事業(売上高1643億4100万円)に占める構成比は同0・6ポイント増の5・8%となった。

 都内最大規模の有楽町店舗の年間売上高はすでに超えており、その数字は軽視できないものとなりつつある。

 好調な成長を続けているが、もちろん、懸念材料がないわけではない。その1つが「売り上げ伸び率」だ。伸び率は2007年2月期が前年比22・2%増、08年2月期が同20・6%増と、過去2年連続で20%超えを実現していた。しかし、09年2月期は同9・9%増にとどまり、一気に2ケタを割り込んでしまう。

 「当然この数字では許されない」(web事業部)との言葉通り、今期は2ケタ増を確保することを至上命題としている。

 伸び率低下の最大の原因は客単価の下落。サイト内での購入者数は、ここ数年間でほとんど変わりないが、高単価・大型商品の低迷が大きく響いたもよう。ステーショナリーやハウスェアなどの小物雑貨は伸びている一方で、家具関連の商品の動きが落ちてきたと同社では分析している。

 今期はテコ入れ策として、部屋の家具選びをサイト内で支援する「家具・インテリアシミュレーター」を3月5日に開設。

 ユーザーが購入希望の家具をクリックすると、サイト上の部屋のイメージ画面に、選択した家具が出現するもの。カーテンやソファー、テーブルなど8種類以上の家具を扱っている。部屋の画面は、床板の色やカメラアングルを変更することも可能で、多種多様なユーザーの部屋にイメージを近づけられるようにした。

 サイト上には家具の合計金額も掲示されるため、商品の単品販売だけではなく、トータルコーディネートでの需要も掘り起こす狙い。不振の大型商品販売で巻き返しを図る。
(つづく)
楽天 通販のよみもの 業界団体の会報誌「ジャドマニューズ」 通販売上高ランキングのデータ販売