"権威の推薦"を巧みに使った化粧品広告(医薬部外品を含む)の表示規制が厳しくなる。厚生労働省は今年8月、都道府県等で広告監視を行う薬務主管課宛てに事務連絡を発出。その中で、「大学との共同研究」や「ビフォーアフター画像」に関する薬事法上の判断を示したためだ。"権威の推薦"を使った広告は市場に氾濫。法解釈の詳細を示す事務連絡を背景に監視を強化する。
広告基準改正「学会」を明記
「医薬品等の効果については行政が責任を持って承認するのが薬事制度の根幹。なので『○○大学との共同研究』などというのは不適切」。薬事法の広告監視を担う監視指導・麻薬対策課の担当者はこう"権威の推薦"を切り捨てる。
8月の事務連絡(医薬品等広告に係る適正な監視指導に関するQ&A)は、「○○大学との共同研究」「○○大学との共同研究から生まれた成分」といった表示が「医薬関係者等の推薦」にあたり、薬事法に抵触するとする。
似た表示はほかにもある。例えば「○○学会の認定商品」といった表示。また、医師を会員とする民間企業が医師の評価に基づき、企業に「医師の確認済み商品」などのマークを付与するサービスもある。これにも「昨年9月の医薬品等適正広告基準改正の大きなポイントの一つは、『医薬関係等の推薦』に『学会』を加えたこと。学会の認証商品は論外。民間の認証も広告に使えば抵触する」(監麻課)と断じる。
「カネ積めば何でも言う存在」
「医師の監修」「医師と共同開発」との表示もあるが、「『医師』といっても毎年、国家試験で次から次へと生まれている。実際はピンキリで、金を積めば何でも都合を良いことを言う存在。当然問題になる」(同)と一刀両断。
広告基準では、規制する「医薬関係者の推薦」について「医薬関係者、理容師、美容師、病院、薬局、公務所、学校、学会」を挙げている。公衆衛生の維持増進の観点から公務所等が指定する事実を広告することが必要な場合などは問題ない。
規制は、医薬品や部外品、化粧品の広告に関するもの。健康食品は表示全体から「未承認医薬品」とみなされない限り、指導対象にはならない。ただ、今後、健食の表示規制に影響を及ぼすかもしれない。
効果「前後比較で可視化できない」
もう一つ問題になるのが、使用前後の画像を比較する、いわゆる「ビフォーアフター画像」だ。昨年9月の基準改正で使用可能になったが、あくまで効果や安全性の保証表現を除いた場合。広告で「良い印象」と「悪い印象」のイラストを記載したり、異なる部位の写真の比較から効果を印象づける意図があれば指導対象になる。
抜け道として、以前は異なる人物同士を比較する"別人比較"を行う企業も一部に存在した。だが、「本人同士ならまだ限度はあるものの(使用できるが)、別人であればなおさら誤解を招く」(同)と問題視する。
とくに注意が必要なのが「シミ・ソバカスを防ぐ」といった効果を認められた薬用化粧品。"防ぐ"という表示が認められているが、「ビフォーアフター画像」で"防ぐ"といった効果を示すと指導対象になる。
「『防ぐ』という効果表現は、(数十人、数百人を対象にした)臨床試験を行い、行政が表示を承認したもの。ただ、特定の人物の前後比較の画像を使った場合、その人物のどの部分に『防ぐ』効果が出たかは証明できない。たとえ同じ部位につけて変化が見られても人によって効果の程度は異なるし、効かない人もいる。体質の差もある。だから効果を承認されたからといって可視化して示すことはできないはず。薬(や部外品)による効果と言えるか分からないため短絡的に示すのはダメ」とする。
同様に「ひび・あかぎれを防ぐ」といった効果が認められた薬用化粧品も問題になる。