楽天は、仮想モール「楽天市場」出店店舗向けに後払い決済を提供する。導入時期は未定。同社では昨年10月、店舗向け決済代行サービスとして「楽天ペイ(楽天市場決済)」の導入を公表し、今年4月から順次導入するとしていた。決済手数料が全決済手段の決済高に応じて利用料を計算する仕組みのため、後払い決済の場合はサービス提供会社にも手数料を支払う必要があった。新サービス提供で対応を求める店舗の声に応えた形だ。
同社ではこれまで、出店者がクレジットカード決済を提供する際に、カード決済代行システム「R―Card Plus(アールカードプラス)」を必須としていたが、これを拡充する形で楽天ペイを導入する。共通となる決済手法は、カード決済、金融機関利用決済(楽天口座、ペイジーなど)、電子マネー決済(楽天Edy、Suicaなど)、コンビニ決済(セブン―イレブン、ローソンなど)、キャリア決済、銀聯(ぎんれん)カードなど主に海外ユーザーが利用する決済、楽天スーパーポイントによる決済、楽天キャッシュ(楽天市場などで使えるオンライン電子マネー)。
これにより、ユーザーは全店舗でコンビニエンスストア決済や電子マネー決済が利用可能となる。店舗はアールカードプラスで必要だった月額費用やデータ処理料、キャンセル手数料、マルチ決済の精算手数料は不要となる。一方で、決済手数料は全決済手段の決済高に応じて利用料が必要となるほか、これまで他社カード決済よりも利用料率が安く抑えられていた「楽天カード」決済についても、他の決済手段と同じ料率になるため、決済関連費用をトータルで計算すると、これまでより高くなる店舗も出てくる。
また、後払い決済については、サービス提供会社への手数料に加えて楽天への手数料も必要となることに対応してほしいという声が店舗から出ていたため、自社での提供を決めた。任意での加入ではなく、楽天ペイを利用する全店舗が後払い決済を使える形だ。他社の後払い決済の場合、月額費用無料プランの決済手数料率は5%程度となる。楽天ペイは、例えば月間決済高100万円までは一律3・5%(決済高が増えると料率が下がる)のため、料金面での優位性がある。
後払い決済の仕組みは現在構築中で「外部企業と組む形で提供する可能性もある」(ECカンパニー編成部の皆川尚久ジェネラルマネージャー)という。ネット販売企業にとって、後払い決済は購入率上昇につながるため、近年導入が進んでいるが、購入者の不払いがリスクとなっている。楽天では督促への対応や代金の肩代わりをすることも検討しており、店舗の安心感につながりそうだ。
また、当初は4月から楽天ペイを順次導入するとしていたものの、店舗ごとに受注に関する環境が異なることから先送りする。まず、4月からは新規出店店舗が楽天ペイを導入。既存店については、8月移行をめどとして切り替えを行う。「一斉に移行を促すわけではないので、1年以上かかる可能性もある」(皆川ジェネラルマネージャー)という。
移行に支障がでないようにするため、6月頃には受注APIの仕様を公開する予定。また、後払い決済の提供時期については未定だが、「(既存店の移行が始まる8月には)間に合わない可能性もある」(皆川ジェネラルマネージャー)としている。
1月から全国各地で開催する「新春カンファレンス」で新制度について説明するほか、3月には各地の支社に店舗を集めて、説明会なども行う予定。同社によれば、これまで制限があった決済方法の登録可能数が増えた点や、決済関連業務を同社が代行する点などは店舗から好評だという。
全店舗の決済手段を統一することで使いやすさを向上し、楽天市場全体の購入率向上につなげる狙い。