ブランド〝進化〟へ、オルビスの挑戦㊦ カタログを刷新、「個の集結」からテーマに一貫性
オルビスによるブランド戦略の刷新。顧客コミュニケーションで大きな役割を果たすことになるのが通販カタログ「hinami(ひなみ)」だ。9月号から媒体特性に合わせて役割を明確化。ブランドの世界観の打ち出しを意識していく。
編集方針を変更役割を明確化
かつてのカタログは1ページごとに販売目標を立て、担当者を決めて編集していた。いわば「個の集結」。読み物としてのリズムよりページごとに主張し合う原因になっていた。データやグラフを多用したり、薬事法に抵触しない表現に頭を捻らせ「逆に安っぽい広告になってしまうジレンマもあった」(同社)という。ブランド再構築を象徴する「ORBIS=U(オルビスユー)」の発売以降、中心顧客層の年齢も徐々に高まっている。より美容感度が高く購買力のある層と継続的な関係を構築していく上でも割引施策中心の結びつきではなく、ブランドの世界観への共感が必要だと考える。
こうした背景から9月号から編集方針を変更。個々の販売チャネル・媒体特性の役割を見極め、施策全体で販売していく体制に変えた。
デジタルでもブランドコミュニケーションは意識する。ただ、「メールやSNSはどうしてもスピード感や要点を押さえた情報発信が必要」(同)。一方のカタログは購入の有無に関わらず、多くの顧客に月1回届く。最も購買以外のコミュニケ―ションに可能性を持った媒体といえる。
"商品ありき"から魅力的な読み物に
カタログは前半が特集企画など読み物。後半が商品カタログで構成する。これまで"商品ありき"の編集だった誌面もテーマに一貫性を持たせる。
例えば昨年の10月号。中高齢層向けの「ORBIS=U encore(アンコール)」を訴求。巻頭では「『重力ライン』ケア、始めよう!」と打ち出し、巻末でも機能面を細かく紹介するなど複数ページに渡り特集を組む。ただ、読み進めると次にくるのは「キレイな人はやっている『温活』の真実」という企画。保温性のあるソックスや入浴剤を紹介するなど、ページごとに企画は分断されていた。
一方、今年の9月号は「変わる人は、美しい」がテーマ。「色の冒険で『新しい顔』を楽しむ(メイクで変わる)」、「丁寧なケアが生み出す『新しい肌』(肌を変える)」、「美しさと健康の決め手!『骨盤ケア』(からだを変える)」といった企画で読み物としての面白さを維持しつつ、リップやスキンケア、補整下着といった商品をさりげなく紹介する。商品カタログも、これまでは機能を細かく紹介。ただ、情報量が多過ぎるとの仮説から絞り、掲載商品は従来から1・5倍ほどに増やした。
「情報を見ていない」という仮説
「ただブランドを傷つけていくだけ」。オルビスがブランド戦略の強化に舵を切る背景には、ここ数年の市場の変化がある。
かつてカタログ通販全盛の時代、顧客は毎月届くカタログで"仮想ショッピング"を楽しんだ。当時は総花的に幅広く情報を集められるカタログに価値もあった。
だが、今では通販広告もさまざまな肌悩みで訴求し、あらゆる企業が「新規成分」「独自成
分」など化粧品や健康食品の機能を競い合っている。
ネットを見れば美容やファッションの情報があふれ、そうした中でSNS世代と呼ばれる若年層は"誰かに勧められていいと思えば購入する"など商品や情報を吟味しなくなっている。その中で、機能やインパクトで短期的な売り上げを追うのではなく、カタログでは企業のものづくりに対する姿勢やコンセプト、ブランドの世界観など情報に独自の価値を持たせ顧客と結びつくことを目指す。 (おわり)
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編集方針を変更役割を明確化
かつてのカタログは1ページごとに販売目標を立て、担当者を決めて編集していた。いわば「個の集結」。読み物としてのリズムよりページごとに主張し合う原因になっていた。データやグラフを多用したり、薬事法に抵触しない表現に頭を捻らせ「逆に安っぽい広告になってしまうジレンマもあった」(同社)という。ブランド再構築を象徴する「ORBIS=U(オルビスユー)」の発売以降、中心顧客層の年齢も徐々に高まっている。より美容感度が高く購買力のある層と継続的な関係を構築していく上でも割引施策中心の結びつきではなく、ブランドの世界観への共感が必要だと考える。
こうした背景から9月号から編集方針を変更。個々の販売チャネル・媒体特性の役割を見極め、施策全体で販売していく体制に変えた。
デジタルでもブランドコミュニケーションは意識する。ただ、「メールやSNSはどうしてもスピード感や要点を押さえた情報発信が必要」(同)。一方のカタログは購入の有無に関わらず、多くの顧客に月1回届く。最も購買以外のコミュニケ―ションに可能性を持った媒体といえる。
"商品ありき"から魅力的な読み物に
カタログは前半が特集企画など読み物。後半が商品カタログで構成する。これまで"商品ありき"の編集だった誌面もテーマに一貫性を持たせる。
例えば昨年の10月号。中高齢層向けの「ORBIS=U encore(アンコール)」を訴求。巻頭では「『重力ライン』ケア、始めよう!」と打ち出し、巻末でも機能面を細かく紹介するなど複数ページに渡り特集を組む。ただ、読み進めると次にくるのは「キレイな人はやっている『温活』の真実」という企画。保温性のあるソックスや入浴剤を紹介するなど、ページごとに企画は分断されていた。
一方、今年の9月号は「変わる人は、美しい」がテーマ。「色の冒険で『新しい顔』を楽しむ(メイクで変わる)」、「丁寧なケアが生み出す『新しい肌』(肌を変える)」、「美しさと健康の決め手!『骨盤ケア』(からだを変える)」といった企画で読み物としての面白さを維持しつつ、リップやスキンケア、補整下着といった商品をさりげなく紹介する。商品カタログも、これまでは機能を細かく紹介。ただ、情報量が多過ぎるとの仮説から絞り、掲載商品は従来から1・5倍ほどに増やした。
「情報を見ていない」という仮説
「ただブランドを傷つけていくだけ」。オルビスがブランド戦略の強化に舵を切る背景には、ここ数年の市場の変化がある。
かつてカタログ通販全盛の時代、顧客は毎月届くカタログで"仮想ショッピング"を楽しんだ。当時は総花的に幅広く情報を集められるカタログに価値もあった。
だが、今では通販広告もさまざまな肌悩みで訴求し、あらゆる企業が「新規成分」「独自成
分」など化粧品や健康食品の機能を競い合っている。
ネットを見れば美容やファッションの情報があふれ、そうした中でSNS世代と呼ばれる若年層は"誰かに勧められていいと思えば購入する"など商品や情報を吟味しなくなっている。その中で、機能やインパクトで短期的な売り上げを追うのではなく、カタログでは企業のものづくりに対する姿勢やコンセプト、ブランドの世界観など情報に独自の価値を持たせ顧客と結びつくことを目指す。 (おわり)