消費者庁は9月1日、テレビ通販大手のオークローンマーケティング(OLM)が販売するフライパンの広告表示が景品表示法違反だとして、同社に措置命令を下した。インフォマーシャルなどでセラミックコーティング加工を施した当該商品の本体表面を金属で擦り、「傷つかない」と訴求した後に、「耐摩耗テスト50万回クリア」などとしていたが、テストはナイロン製調理器具によるものだった。消費者庁では「表示は連続性があり、一般消費者はテストは金属で擦ったものだと考えるのが自然」とし、優良誤認にあたると判断、再発防止の徹底などをOLMに命じた。
消費者庁が問題視したのはOLMが通販展開するセラミックコーティング加工を施したフライパン「セラフィット」(画像㊤=消費者庁の資料より)のインフォマーシャルや同社通販サイト上で配信する動画広告における広告表示。同庁によればインフォマーシャルなどで当該商品の丈夫さを訴求すべく、フライパン表面をコインで擦ったり、大量の釘を炒めたりし「傷が付かない」「コーティングが剥がれない」などと訴求した後に「耐摩耗テスト50万回クリア」(画像㊦=消費者庁の資料より)との映像とともに「セラフィットは50万回擦っても傷まないことが証明されました」とし、その後も金属製のフライ返しやトングを使った調理シーンを流していたという。
しかし、耐摩耗テストの「50万回クリア」との結果は"ナイロン製調理器具"で行ったもので金属で行ったテストではなかった。「確かに『耐摩耗テスト50万回クリア』と表示する画面には『当社基準にて実施』との表示があるが、全体の映像と合わせて考えればこのテストは一般消費者からみれば金属製調理具で行ったものだという印象を受けるのが自然」(表示対策課の山本慎上席景品・表示調査官)だと判断。さらに消費者庁では第三者機関に依頼し、当該商品の耐摩耗テストを金属製品で実施したところ、「50万回を大きく下回る回数、約5000回前後で(コーティングが削れて)素地が露出した」(同)という。
また、インフォマーシャルなどで「ダイヤモンドの次に硬いセラミックを使用」と謳っていた当該フライパンの表面処理加工に用いた「セラミック」の強度についても、消費者庁が同じく第三者機関に依頼して調査した結果、「確かにダイヤモンドの次に硬いセラミックも世の中に存在するようだが、本件では相当程度下回る強度であり、ダイヤモンドに次ぐ強度を持つルビーなどの鉱物に比べても到底及ばない硬さだった」(同)とする。
消費者庁では「フライパンは表面が傷つくと焦げやすくなったり、劣化が進みやすくなるため、耐摩耗性は消費者にとって重要な消費選択の要素の1つだが、これが表示と実際に大きな乖離があったこと。当該商品の販売開始から問題の表示が終了した約1年半(2014年5月~2015年11月=対象表示期間)までに約76万セットを販売し、約127億円を売り上げるなどかなりの数量、売上額となっており、一般消費者に与える影響が非常に大きいこと。(インフォマーシャルの)放送回数も(1年半の期間中で地上波・BS・CS放送合わせて)1万2000回と消費者の目に多く触れていたこと。これらを勘案すると措置命令が相当だと判断した」(山本調査官)とした。その上でOLMに今後、同様の表示を行わないことや再発防止策を講じることなどの措置をとるように命じた。
OLMでは「ご指摘を重く受け止めるともに、お客様をはじめ多くの関係者の方々にご心配とご迷惑をおかけいたしましたことは誠に申し訳なく、深くお詫びを申し上げる。二度とこのような事態を起こすことのないよう、再発防止に向けて全社を挙げて取り組む」(同社)としている。
誤認して当該商品を購入した顧客への対応については「まずはお客様相談センターにお問い合わせいただけますようご案内をしている。当社では24時間365日受付のコールセンターを運営しているが、今回の指摘を真摯に受け止め、お客様がストレスを感じることがないよう、専用のサポート体制をつくって、不安や不明点にお答えしていきたい」(同)とした上で「お客様の購入時のお話やご利用状況をお聞かせいただいた上で個別に対応する」(同)としている。
なお、問題の表示はすでに修正しており、セラフィットの今後の販売についても今回の処分は商品の品質に対するものではないことから引き続き販売を続けていくとしている。また、今後、発売を計画していた「セラフィット」の廉価版と高級版の展開予定については「現在のところ、影響はない」(同)としている。