4月に機能性表示食品制度が始まって以降、互いに異なる不満を抱えてきた消費者サイド、業界サイドによる初めての"対話の場"が設けられた。日本通信販売協会(JADMA)は11月30日、「業界横断祭」と題するイベントを開催。業界を代表して討論会に参加したファンケルの宮島和美社長からは消費者と消費者団体、企業が三位一体となって制度育成を進める重要性が語られた。一方で、主婦連合会の佐野真理子参与からは、企業の広告に対する厳しい指摘も聞かれた。
「消費者サイドの疑問に答えます!」と題して行われた討論会には、ほかに国民生活センターの宗林さおり理事、東京大学医学部付属病院の伊藤明子医師、新制度の検討会委員を務めた相良治美氏が参加した。
制度が始まって半年。制度自体の評価には、「事業者が説明責任を果たし、(消費者選択の)目安になる新たなカテゴリができたことは評価」(宗林氏)、「適切な商品選択に結びつく期待がある」(伊藤氏)といった声が聞かれた。
消費者サイド、正確な情報求める
一方で、制度に肯定的な消費者サイドの関係者からも共通して聞かれたのが、"正確な情報提供"に対する不安。「研究レビューなど(専門知識がないと)背景部分が理解できず、リテラシーの面で有用に機能するか心配」(同)、「消費者はさまざまな情報を受けて"自分なり"の判断基準を作ってしまっている。こうした方にはなおさら正しい情報を伝えていくことが重要。分かりやすく情報を伝えるアイデア、ネーミング、パッケージデザインが制度の成果、普及に関わる」(相良氏)といった指摘があった。
宗林氏も「正確な情報と使い方がキーワード。どんな人がどんな風に使うか、正確な情報を知り、利用できるかが良し悪しを決める分かれ目になる。そのためには広告の内容と消費者の受け取りに溝がないようにすべき」と要望した。
こうした消費者サイドの要望に宮島氏は「制度の中身を含め、きちんと伝えていく必要がある」と応じた。ただ、佐野氏は、事業者サイドへの不信感を露わにしている。「(健食は)過剰摂取や飲み合わせの問題があり、これが"知る人ぞ知る情報"ではいけない。これだけ多くの企業が関わっているのであればもっと情報を出してほしい」「(事業者の広告は)行間を読まされ、読んでほしくないのかと思うほど小さな文字で書かれていることも不信感につながる。そうした広告の中には『JADMAマーク』がついたものもある」などと厳しい指摘を行い、広告の改善を求めた。
今後の制度育成に向けた課題も議論された。
宮島氏は、「メーカーは消費者志向に立ってよい商品を作り、販売者は消費者ニーズを捉えてきちんと販売できなければいけない。それが賢い消費者を作ることにもつながる。消費者と消費者団体、企業が三位一体となって革命を起こす気持ちで進めなければ業界を抜本的に変えることはできず、健食の将来はない」と、危機意識を口にした。
具体的な課題に挙げたのは二つ。一つは、サプリメント法の策定。「健食を法に守られ、社会的な人格を持ったものにしないといけない」とした。もう一つは、団体の一本化。「業界の正常化を図る必要がある。関係団体が多すぎるのでまとめるべき」と話した。
宗林氏は、「消費者が情報を実態に合わせた形で受け取るためには専門家の読み解きを含め、正しく情報を受け取れるプラットフォームを整備していくことが必要」と、栄養士やアドバイザリースタッフの活用を課題に挙げた。また、認知機能や睡眠ケアなど、トクホにない新しい表示が生まれていることに対し、「消費者がどう受け取るか、きちんと理解できるようになるまで監視をしていくことが必要」とも話した。
伊藤氏は、「健康産業は"不安(を煽る)産業"とのイメージもある。イギリスでは業界主導で国民の健康増進を進めた例もあり、優良企業としての確立やコーズマーケティングに卓越した業界のようになっていくと医師側も安心して付き合える」などと話した。