老舗種苗メーカーのタキイ種苗が通販事業の"変革"に乗り出した。同社では、今年が創業175周年の「節目の年」。これを機に、105年目となる通販事業について、ユーザーが高齢化する今後を見据え、従来のリピーター中心の戦略から初心者などのいわゆる「ライト層」の開拓・育成に舵を切る。その一環として、近年、急速に需要が高まっている「家庭園芸」分野の充実を図るほか、新規開拓には不可欠として、ネット販売の抜本的な改革も計画。9月をメドに通販サイトを刷新し、「情報発信の仕方を変える」(特販事業部・佐藤直樹部長)考えだ。開始した1905年から、105年間にわたり続いてきた通販事業の「秘訣」と、次代を見据えた戦略を追った。
まず、同社の現在の通販事業に目を向けると、同事業の売り上げは前期約30億円。チャネルはカタログと通販サイトで、売り上げの中心をカタログが占めている。通販サイトは03年から着手しており、現在のサイトの受注比は20%程度となっている。
顧客層は60代以上が大半で、その多くを占めるのは男性だ。同社には、年会費1,980円で月刊誌や割引を受けられる「タキイ友の会会員」と「ネット販売会員」の2種類の会員制度があり、会員数は2種類合計で20万人程度。どちらの会員にもカタログを送付する仕組みだ。
カタログは、基幹の「花と野菜ガイド」は6月と11月の年2回発行。ページ数は約300ページで、商品数は常時3,000アイテムを掲載する。これに加え、他のカタログも補完的に年3回発行。時期的な問題で掲載しきれなかった商品や通常より安いセール商品などを掲載する。これらを総合した全カタログの発行部数は150万部になるという。
長期間にわたり顧客をつなぎとめてきた理由のひとつが、このカタログ上での工夫だ。カタログを制作するうえで、特に商品写真を重視。撮影は「1番いい時期を選んで行うのが大前提」(特販事業部・佐藤部長)で、現物との色の差が出ないことに注意する。顧客のほとんどは、商品に詳しい「マニア」なリピーター。「色」で手抜きをすれば、商品到着後に「思っていた色と違う」とクレームが付く可能性が高いためだ。同社では時間をかけて色校正も複数回行い、現物との差を埋めていくという。
また、リピーター向けの戦略では、送料面での取り組みも特徴的な施策のひとつ。同社では3,000円以上の購入で送料無料としているが、それ以下の購入でも、送料は一般的な通販の水準より低い200円に設定。こうした料金体系もサービスの一環と捉えており、「サービス低下のイメージ」(同)が着く値上げは、当面は予定していないようだ。
こうした細かい工夫を積み重ね、顧客と良好な関係を続けてきた通販事業だが、高齢化の進行などの社会背景を踏まえ、今後は新規層の獲得が必要と判断。リピーター中心の戦略から、これまであまりターゲットにしていなかった初心者層などの開拓に目を向ける。
そのための戦略のひとつが、近年、巣ごもり消費の影響などで需要が拡大している「家庭園芸ジャンル」の強化だ。同社の売れ筋は「野菜・果物」などの「食べ物系」だが、これらは意外に初心者には扱いが難しく、「失敗も多い」(同)。そこで、カタログ内では、分かりやすく説明するためイラストを多めに入れるほか、「失敗しないやり方」などの特集企画を近年、積極的に実施。また、「プランター栽培に最適」というアイコンを合致する商品に入れるなどし、「ベランダ園芸」というトレンドをアピールする。幅広く商品を訴求し、利用の裾野を広げる構想だ。(つづく)
まず、同社の現在の通販事業に目を向けると、同事業の売り上げは前期約30億円。チャネルはカタログと通販サイトで、売り上げの中心をカタログが占めている。通販サイトは03年から着手しており、現在のサイトの受注比は20%程度となっている。 顧客層は60代以上が大半で、その多くを占めるのは男性だ。同社には、年会費1,980円で月刊誌や割引を受けられる「タキイ友の会会員」と「ネット販売会員」の2種類の会員制度があり、会員数は2種類合計で20万人程度。どちらの会員にもカタログを送付する仕組みだ。
カタログは、基幹の「花と野菜ガイド」は6月と11月の年2回発行。ページ数は約300ページで、商品数は常時3,000アイテムを掲載する。これに加え、他のカタログも補完的に年3回発行。時期的な問題で掲載しきれなかった商品や通常より安いセール商品などを掲載する。これらを総合した全カタログの発行部数は150万部になるという。
長期間にわたり顧客をつなぎとめてきた理由のひとつが、このカタログ上での工夫だ。カタログを制作するうえで、特に商品写真を重視。撮影は「1番いい時期を選んで行うのが大前提」(特販事業部・佐藤部長)で、現物との色の差が出ないことに注意する。顧客のほとんどは、商品に詳しい「マニア」なリピーター。「色」で手抜きをすれば、商品到着後に「思っていた色と違う」とクレームが付く可能性が高いためだ。同社では時間をかけて色校正も複数回行い、現物との差を埋めていくという。
また、リピーター向けの戦略では、送料面での取り組みも特徴的な施策のひとつ。同社では3,000円以上の購入で送料無料としているが、それ以下の購入でも、送料は一般的な通販の水準より低い200円に設定。こうした料金体系もサービスの一環と捉えており、「サービス低下のイメージ」(同)が着く値上げは、当面は予定していないようだ。
こうした細かい工夫を積み重ね、顧客と良好な関係を続けてきた通販事業だが、高齢化の進行などの社会背景を踏まえ、今後は新規層の獲得が必要と判断。リピーター中心の戦略から、これまであまりターゲットにしていなかった初心者層などの開拓に目を向ける。
そのための戦略のひとつが、近年、巣ごもり消費の影響などで需要が拡大している「家庭園芸ジャンル」の強化だ。同社の売れ筋は「野菜・果物」などの「食べ物系」だが、これらは意外に初心者には扱いが難しく、「失敗も多い」(同)。そこで、カタログ内では、分かりやすく説明するためイラストを多めに入れるほか、「失敗しないやり方」などの特集企画を近年、積極的に実施。また、「プランター栽培に最適」というアイコンを合致する商品に入れるなどし、「ベランダ園芸」というトレンドをアピールする。幅広く商品を訴求し、利用の裾野を広げる構想だ。(つづく)