ヤフーは10月17日、地方活性化のために、自治体が抱える様々な課題の検証やインターネットを活用し課題解決の手法を探るイベント「地域活性化フォーラム」を都内で開催し、行政や地方自治体などがインターネットを活用した先進的な取り組みなどについて講演した。また、ヤフーからも宮坂社長の基調講演を始め、「ご当地eコマース革命で地域活性化」と題してヤフーが考えるeコマースを活用した地域活性化について、同社の佐竹正範・ご当地eコマースストア開発エリアマネージャー(写真)が語った。(講演内容の一部を抜粋・要約して掲載)
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これからの「地方」はどうなっていくか。日本創生会議の日本人口減少問題検討分科会が発表した内容(※地方の人口流出などで2040年には全国約1800自治体のほぼ半数が消滅する恐れがあるとの報告)は衝撃的だった。東日本大震災の被災地は10年後の地方を顕在化した場所だと言われるが、我々はeコマースを活用して復興支援活動をやってきた。その中で感じた地方の課題はまず「若者の流出」だ。そしてもう1つの大きな課題が「地域にお金が落ちない」ということだ。この課題を解決するには地域へのお金の循環と若い人たちがその場に居つくための魅力的な仕事が必要なのではないか。その意味でeコマースは手法の1つではないかと思っている。
実際、我々は被災地の復興支援活動で「復興デパートメント」という東北の商品をインターネットで販売する取り組みを行い、それにより被災地に雇用を作ろうということでがんばってきた。「復興デパートメント」というインターネット上の「売り場」を作り、その上で地元の生産者に「出店しませんか」と呼びかけてきた。とは言え、漁師さんや農家さんにいきなり「ECやりませんか」といっても難しい。そこで我々は地域に「支部」という形で代理販売をする人に立ってもらい、その方々にネット上で店を開設してもらって、商品を販売してもらい、注文が入ったら注文データを生産者にメールやFAX、電話で伝えてもらい、直送してもらうという仕組みで回してきた。
その支部の1つが「石巻元気商店」という店舗だが、ここを運営しているのは20代の若い女性だ。彼女たちは震災後、泥かきのボランティアで入った人たちだ。彼女たちがこのサイトを立ち上げ、地元の生産者と代理販売店契約を結んで、月商で数百万、多い時には数千万円を販売してお金の循環を作っている。こういった事例も出てきている。
eコマースによる地域の活性化は非常に有効な手段だと思うが色々と課題もある。ビジネスは人・モノ・金で考えるが、この「人」が特に問題だ。要は地方にはなかなかECができる人がいない。しかし、被災地ではECサイトが多く立ち上がり、今でも運営されている。これはその「人」がいるためだ。ボランティアで入った「そと者」の人たちが地域にある商品に新しい価値を見出した。ちょっと見方を変えれば「これは東京では売れるよ」など価値を見つけてくれるような人が入ったわけだ。加えて、雇用の助成制度など行政のサポートも大きかった。これにより、地域企業が1人、新しい社員を雇うことができた。その人にECをやってもらうことができたわけだ。
この被災地のケースは他の地域おいても同じだ。(総務省が制度化した)「地域おこし協力隊」の制度(※人口減少や高齢化等の進行が著しい地方で地域外の人材を積極的に誘致し、定住・定着を図り地域力の維持・強化を図っていくことを目的とする制度)を活用すべき。今は"地域起こし"という広い範囲での募集形態が見られるが、この際、「ECやってくれる人募集」、「地域のモノを外に売ってくれる人募集」というようにジャンルを絞った募集のやり方はあるのではないか。実際、兵庫県・淡路島の「地域おこし協力隊」は「ヤフーショッピング」に出店し、地場の商品を販売するという事例も出て来ている。eコマースは正直、1年目からすぐ儲かるものではなく難しい。ある程度、ノウハウもいる。そういう意味では地方は助成制度を利用しECの人材育成にフォーカスして制度設計をしてみてもいいと思う。
我々、ヤフーとしても地方の優れた産業をeコマースで届けて地域活性化に貢献していきたい。我々は昨年10月にeコマース事業で大きな方針転換をした。「eコマース革命」と題して、「ヤフーショッピング」の出店時の初期費用、月額の出店料、売り上げに応じて徴収していた手数料をすべて無料にした。無料になったことで(地方の活性化において)できることが増えた。固定費は無料のため、例えば、冬しか収穫できない果物や夏しか売れない水着、年に1つしか売れないものなどについても、売りたい時に商品を並べることができる。また、出店者がエンドユーザーに対してのメール送信や外部リンクを自由化した。一度、その出店者から購入した顧客のデータについて、これまでは自社サーバー上でデータを管理し、出店者がメール送信などでそれを利用したい場合は有料としていたが、出店者がダウンロードできるようにし販促メールなどが自由にいつでも打てる。また外部リンクはこれまでは禁止だったが自由化し、ヤフーショッピングの店舗から自社のサイトに自由に送客できるようになった。さらに出店も簡単になった。これまでの出店形態に加えて、「ライト出店」という出店形態を新たに用意した。販売できる商品数や決済で一定の制限があるものの、スマホからの操作で10~15分程度で簡単にネット上に店が構えられる仕組みだ。
こうしたことでヤフーショッピングにはすでに埼玉県や兵庫県などの地方自治体や各地域の観光協会、農協、道の駅、アンテナショップなどが出店し物販が行われている。また、今年は農林水産省とタイアップして、地域の食材などをPRする試み「地場もん国民大賞」などにも協力しており、これにエントリーし、ヤフーショッピングでも当該商品を販売しているものは我々が一生懸命、インターネット上でプロモーションをしている。これからも地域の活性化に向けて、我々、ヤフーも貢献していきたい。