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どうなる?現代書林の刑事裁判、「間接正犯」成立なるか

2013年 2月 4日 11:30

昨年12月に始まった健康食品通販のキトサンコーワと、その商品の関連本を出版していた現代書林(本社・東京都新宿区、坂本桂一社長)の薬事法違反事件を巡る公判が3回目を迎えている。注目されるのは、書籍出版で関与した現代書林が同法違反(未承認医薬品の広告の禁止)で罪に問われるか否か。立証を巡り、検察、弁護人双方が意見を闘わせた。

 現代書林の出版した書籍の販売が広告に当たるか否か。検察は、現代書林がキトサンコーワと共謀して出版した事実、書籍の内容に深く関与したことを立証する必要がある。その上で「書店の販売員を介して書籍を陳列・販売した」ことを証明しなければならない。

 「販売員を介して」という嫌疑は「間接正犯」と呼ばれ、他人を「道具」のように使う犯罪行為のこと。例えば、暴力で他人を支配し犯罪に利用した場合や、医者が患者を殺すつもりで事情の知らない看護婦に毒薬を渡して殺害した場合などに成立する。

 「取調べ中、刑事が『調書にサインしないのなら子供を逮捕して聞くしかない』と脅された。だから調書にあることは全部嘘」。キトサンコーワ社長の國安春子被告は昨年12月の公判1日目、こう涙ながらに説明した。有罪の強力な証拠となり得る自供が任意のものでないと主張するものだ。

 公判では検察からの「現代書林から書籍を出せば売り上げが上がると言われたのではないか」「取材先は現代書林から提案されたのではないか」という質問に「覚えていない」と証言。出版内容を巡る現代書林の関与を否定してみせた。

 「間接正犯」にも弁護人は「書店販売は複数の取次店を介している」「現代書林が書店に強い影響力を持つことはありえない」と反論しており、現代書林元社長の武谷紘之被告も「書店での販売は知らなかった」「書店での陳列は各店の判断で関与できない」と答弁。出版から9年が経過していることも立証のハードルを高くしている。

 一方の検察は、取次店や書店とそこに従事する社員を介して書店に書籍が陳列されるという、その仕組み自体を大きな「道具」と捉え、そこに流通する書籍に現代書林が強い権限を持っていたことを立証することで、「間接正犯」の成立を狙っているとみられる。

 検察による武谷被告への質問で特筆すべきは「絶版の権限はどこにあるのか」というもの。「営業部」と答える武谷被告に「最終決定は社長ではないか」「社長を務めている間に絶版の決断はあったか」と畳みかけた。加えて、出版社には出版書籍や絶版処理した書籍の情報を取次店に流すことができる権限があることを被告人質問から証明。これにより、現代書林が書籍の流通システムを使い、主体的に流通を操作できたと証明しようとしているのかもしれない。

 キトサンコーワとのタイアップ出版にも「自費出版は原稿をもらい製作するもので、(基本的に)書店販売しない」(武谷被告)と、その違いを明らかにした上で「(タイアップ出版は)出版社側には製作費をカバーできるメリットがある。(キトサンコーワは)認知が上がり、書籍が売れれば商品が売れるメリットがある」(同)との証言を引き出した。「キトサンの効果を多くの人に知ってもらいたかった」と話す國安被告の出版理由ならば自費出版で事足りるものであり、タイアップ出版には現代書林の意向も含まれている、と印象づけたいのかもしれない。書籍編集を担当した川原田修被告からも具体的な編集作業について「内容と構成、ライターの人選、原稿チェック、タイトルの提案、書籍デザインなど全般の進行管理」との答弁を得、書籍の内容に関与していたことを印象づけた。

 裁判は、現代書林が問題となった書籍を「絶版処理」していなかったことも販売の意思があったと受け取られ、現代書林に不利に解釈されるかもしれない。2月に行われる4回目の公判では出版社と書店をつなぐ流通に詳しい証人を呼び、検察、弁護人双方が質問を行う。これが「間接正犯」成立の是非を判断する大きなポイントになりそうだ。


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