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楽天市場・送料課金の余波① 小型店の負担大きく、「還元」も期待できず

2012年 9月27日 10:03

楽天メール.JPG  「【重要】課金体系の見直しにつきまして」。こんな件名のメールが、楽天から楽天市場の出店事業者に送られたのは、9月10日のこと。内容は、送料に課金することに対する楽天の「言い分」を連ねたものだ。

 この中で楽天は、送料無料を前提とした価格設定に変更する理由として「楽天市場の流通総額の約75%は、『送料無料(送料込み)』での価格設定となって」いることを挙げている。あたかも送料無料が楽天市場の標準となっているかのような表現だが、果たしてモールの実態を表した数字といえるのだろうか。

 確かに、出店店舗や商品のうち75%が送料無料ならば「標準に近づいている」といえよう。しかし「流通総額」ということは、例えば店として全品送料無料を実施していなくても、「○円以上の購入は送料無料」というラインを設けていれば、それより上の購入金額が算入されるわけだ。

 家電のように単価の高い商品を扱う店舗であれば「送料無料」となる流通総額は増えるし、売り上げ上位の店舗が全品送料無料を採用すれば、影響は大きくなる。多くの店舗が全品送料無料を実施していないとみられる中、楽天市場の多数を占める、売り上げ規模の小さい店舗の「実態」を反映しない数字を持ち出すのは、果たして適当といえるのだろうか。

送料値上げは必至

 楽天市場で食品を販売する橋本さん(仮名)は、今回の課金体系変更を受けて「送料を20%近く上げざるをえない」とため息をつく。サイトの月商は数十万円程度。大手サイトのように、規模による配送の効率化は期待できない。また、値下げとなるオプションは利用していないため「送料課金」が利用料にそのまま上乗せされる。

 「利益率が低い商品や、購入商品の組み合わせによっては赤字になる可能性がある」(橋本さん)。例えば、単価の安い商品の単品注文があった場合、粗利は数十円しか確保できない。その一方、送料は数百円かかるわけで、ここに課金されれば「持ち出し」になりかねないのは想像に難くない。

 「高い送料を設定する店は送料無料の店より課金が安くなるため、店舗間に不公平感が出る」と一部で楽天側が店舗に説明していることに対しても、橋本さんは「常識的な商売をしていれば送料で儲けるなんてことは考えられない」と反論する。

 例えば、実際に100円の送料がかかるところ、顧客から200円の送料を徴収したとしても、差額の「100円」はそのまま儲けになるわけではない。なぜなら、梱包などの経費や人件費は、例え注文単価は安くとも変わらず必要だからだ。

 特に、規模の小さい店舗の場合、販管費は粗利で吸収しにくい。1つの注文で例え「利ざや」が生まれていたとしても、トータルでみれば「利益」にはつながっていないのだ。

 楽天では「売価に送料を含めた上での送料無料」の徹底を店舗に求めているが、ここにも問題がある。大手であれば、地域によって差がある送料の平準化も可能だが、小規模サイトではそれも難しくなる。配送会社との「交渉」による値下げが期待しにくいからだ。

 近場の送料に価格を合わせれば、遠方からの注文は赤字になるし、遠方に合わせれば近距離からの注文は消費者にとって負担増となる。橋本さんは「(送料無料は)顧客の負担が増えるので考えていない」と話す。

リスクを店に転嫁

 小規模店舗にとっては死活問題ともいえる今回の課金体系変更。橋本さんの場合、倉庫に預けるには不向きな商材を扱っているため、将来的にも「還元」はまったく期待できない。

 「楽天が負うべき事業リスクや解决すべき問題を、店舗や利用者に転嫁するのはおかしい」。橋本さんはこう不満を漏らす。これは橋本さんだけではなく、今回の変更で利用料値上げとなる、すべての店舗が感じていることではないか。

 こうした店舗側の疑問や不満に回答を求めるため、本紙では楽天市場事業の責任者へのインタビューを申し込んだが、楽天では「広報レベルでお話した内容以上にお答えすることは何もない」(PR推進グループ)として取材に応じなかった。(つづく

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