特定保健用食品(トクホ)の許可を取得し花王が展開する食用油等の「エコナ」関連製品に発ガンの懸念がある物質が高濃度に含有されていた問題で、製造元の花王は10月8日、消費者庁に同製品のトクホ許可表示の失効届を提出した。消費者庁発足後初の、食品安全性に関わる大型案件で、同庁の今後の対応を占う試金石として注目されたが、花王が自ら事態を収拾した形だ。「エコナ」問題には区切りがついたが、トクホ許可取得製品の再審査中における表示の扱いや消費者への情報提供手段など、消費者庁の具体的な対応のあり方に課題が残されている。
今回、問題になった「グリシリドール脂肪酸エステル」は油脂製造の脱臭過程で生成される物質で、分解(消化)されることにより発ガン性物質に変わる可能性が指摘されている。同物質の安全性に関し、欧州を中心に議論が活発化していたことを受け、花王が「エコナ」製品の分析を行った結果、一般食用油と比べ「グリシドール脂肪酸エステル」が高濃度に含まれていたことから、9月16日に「エコナ」関連製品の出荷自粛を決め、消費者庁へ報告。これに対し、消費者庁では、「エコナ」関連製品問題の対応を検討するため、「食品SOS対応プロジェクト」(以下PT)を設置していた。
トクホ許可に関しては、「健康増進法」の一部移管に伴い、消費者庁が行う形となっているが、今回の問題で一つの焦点になったのは、トクホ許可を取得した食品について、新たな科学的知見が生じた場合の対応だ。
「エコナ」関連製品のケースでは、トクホ許可取得後の分析で発ガン性が疑われる物質が一般食用油よりも高濃度に含有されていたことがこれに当たるわけだが、PTでは、科学的知見の充実による許可の再審査を行うべき状況になったと指摘。消費者庁長官は再審査の手続きに入り、食品安全委員会および消費者委員会の意見をもとにトクホ許可の取り消しを判断すべきとした。
一方、消費者委員会は、10月7日の会合でこの問題を協議したが、委員からはトクホ許可の取り消しや停止が妥当とする意見が相次いだ。このため花王では同日に「エコナ」関連製品の販売を中止を決めトクホ許可表示の失効届を提出。今後、問題成分の含有量を一般食用油と同レベルにまで引き下げる技術を確立した上で、新生「エコナ」として再度トクホ許可を申請する考えだ。
消費者庁としては、トクホ許可の取り消しも視野に入れた対応は初めてのケースで、PTを通じ「エコナ」関連製品の事例をもとに、対応指針を検討してきたが、結果としては花王が失効届を出したことで一応の区切りがついた形だ。ただ一方では、再審査中におけるトクホ許可表示の扱いをどうするかという法的な課題も浮上しており、今後、消費者委員会でトクホ制度のあり方を検討していくことになるようだ。
また、もう一つ課題と言えるのは、消費者庁の情報提供のあり方。消費者の健康被害の未然防止といった観点からも、迅速な情報提供は重要だが、過度に不安を煽るような情報が流れれば、事業者側の経営に大きな影響を及ぼすことになる。
花王の場合も、「エコナ」関連製品年間売り上げ規模は200億円とされており、経営面への影響は小さくはない。さらに販売を停止する商品には、通販で展開するペットフード「花王ヘルスラボ」も含まれている。現状「売り上げは微々たるもの」(花王広報部)だが、これまで獲得してきた顧客の離脱の可能性などを考えれば、ペット関連通販事業の存続にも関わってくるはずだ。
「花王さんは、消費者庁のいい教材になってしまった」。メーカー等の関係者からは、こうした声も聞かれるが、今回の問題で浮き彫りとなったのは消費者を後ろ盾にした同庁の影響力。通販事業者も注意が必要だ。
特定保健用食品(トクホ)の許可を取得し花王が展開する食用油等の「エコナ」関連製品に発ガンの懸念がある物質が高濃度に含有されていた問題で、製造元の花王は10月8日、消費者庁に同製品のトクホ許可表示の失効届を提出した。消費者庁発足後初の、食品安全性に関わる大型案件で、同庁の今後の対応を占う試金石として注目されたが、花王が自ら事態を収拾した形だ。「エコナ」問題には区切りがついたが、トクホ許可取得製品の再審査中における表示の扱いや消費者への情報提供手段など、消費者庁の具体的な対応のあり方に課題が残されている。
今回、問題になった「グリシリドール脂肪酸エステル」は油脂製造の脱臭過程で生成される物質で、分解(消化)されることにより発ガン性物質に変わる可能性が指摘されている。同物質の安全性に関し、欧州を中心に議論が活発化していたことを受け、花王が「エコナ」製品の分析を行った結果、一般食用油と比べ「グリシドール脂肪酸エステル」が高濃度に含まれていたことから、9月16日に「エコナ」関連製品の出荷自粛を決め、消費者庁へ報告。これに対し、消費者庁では、「エコナ」関連製品問題の対応を検討するため、「食品SOS対応プロジェクト」(以下PT)を設置していた。
トクホ許可に関しては、「健康増進法」の一部移管に伴い、消費者庁が行う形となっているが、今回の問題で一つの焦点になったのは、トクホ許可を取得した食品について、新たな科学的知見が生じた場合の対応だ。
「エコナ」関連製品のケースでは、トクホ許可取得後の分析で発ガン性が疑われる物質が一般食用油よりも高濃度に含有されていたことがこれに当たるわけだが、PTでは、科学的知見の充実による許可の再審査を行うべき状況になったと指摘。消費者庁長官は再審査の手続きに入り、食品安全委員会および消費者委員会の意見をもとにトクホ許可の取り消しを判断すべきとした。
一方、消費者委員会は、10月7日の会合でこの問題を協議したが、委員からはトクホ許可の取り消しや停止が妥当とする意見が相次いだ。このため花王では同日に「エコナ」関連製品の販売を中止を決めトクホ許可表示の失効届を提出。今後、問題成分の含有量を一般食用油と同レベルにまで引き下げる技術を確立した上で、新生「エコナ」として再度トクホ許可を申請する考えだ。
消費者庁としては、トクホ許可の取り消しも視野に入れた対応は初めてのケースで、PTを通じ「エコナ」関連製品の事例をもとに、対応指針を検討してきたが、結果としては花王が失効届を出したことで一応の区切りがついた形だ。ただ一方では、再審査中におけるトクホ許可表示の扱いをどうするかという法的な課題も浮上しており、今後、消費者委員会でトクホ制度のあり方を検討していくことになるようだ。
また、もう一つ課題と言えるのは、消費者庁の情報提供のあり方。消費者の健康被害の未然防止といった観点からも、迅速な情報提供は重要だが、過度に不安を煽るような情報が流れれば、事業者側の経営に大きな影響を及ぼすことになる。
花王の場合も、「エコナ」関連製品年間売り上げ規模は200億円とされており、経営面への影響は小さくはない。さらに販売を停止する商品には、通販で展開するペットフード「花王ヘルスラボ」も含まれている。現状「売り上げは微々たるもの」(花王広報部)だが、これまで獲得してきた顧客の離脱の可能性などを考えれば、ペット関連通販事業の存続にも関わってくるはずだ。
「花王さんは、消費者庁のいい教材になってしまった」。メーカー等の関係者からは、こうした声も聞かれるが、今回の問題で浮き彫りとなったのは消費者を後ろ盾にした同庁の影響力。通販事業者も注意が必要だ。