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ジャパネットグループが建設した「長崎スタジアムシティ」の全貌は? 店舗やホテルで商品を体験、通販とのシナジーも

2024年10月24日 12:00

 ジャパネットグループが長崎市内に建設したスタジアムを中心にアリーナやホテル、商業施設、オフィスなどからなる大型施設「長崎スタジアムシティ」が10月14日に開業した。長崎スタジアムシティの建設・運営は地域創生事業の一環として手掛けているが、主力の通販事業とシナジーを生み出す仕掛けも施されており、注目される。通販の雄、ジャパネットグループが作り上げた「長崎スタジアムシティ」の全貌とは――。
 

 「長崎スタジアムシティ」は長崎市内を流れる浦上川沿いに建つ「V・ファーレン長崎」がホームとしても使用するスタジアム「PEACE STADIUM」を中心に多機能・可変型のアリーナ「HAPPINESS ARENA」、眼下にスタジアムが広がるホテル「スタジアムシティホテル長崎」、商業施設などが入る「スタジアムシティSOUTH」、オフィスビルの「スタジアムシティNORTH」の主に5つからなる複合施設だ。

 軸となるのはスタジアムやアリーナだろうが、「長崎スタジアムシティ」にはジャパネットグループのジャパネットウォーターが施設内で醸造したビールを提供する店や温泉・サウナが楽しめる温浴施設、長崎の町を見ながら無料で利用できる足湯、スタジアムを縦断するジップラインなどなど来場者にとって魅力的な様々な施設、アクティビティが様々ある。

 そうした施設の1つとして出店しているのがジャパネットたかたで取り扱う商品を展示、販売する実店舗「ジャパレクラボ」。今夏まで福岡市内の商業施設に出店していたが同施設閉鎖に伴い、長崎スタジアムシティに移転させた店舗で現状、同社唯一の実店舗となる。

 広さ約330平方メートルの店内ではテレビ通販などで販売する大型テレビや掃除機、炊飯器、羽毛布団などの売れ筋や一部アウトレット品のほか、「スタジアムシティホテル長崎」の客室で使用している寝具やアメニティなどの備品な70~80点の商品を展示。「利益還元祭」などジャパネットたかたが全社的に実施するセール期間中は対象商品なども展示するという。

 来店者は展示している商品を実際に手に取って、店員に質問しながら商品の性能などを確かめた上で購入を検討できる。いわゆるショールーミング店とは異なり、持ち帰ることができる小型商品については店内で在庫しており、来店者は気に入った商品があればその場で購入して持ち帰ることもできる。テレビや布団など持ち帰りが困難な大型商品は在庫しておらず、注文を受け付けて顧客宅に配送する手続きを行う。

 商品の展示のほか、調理家電を使った実演ができるようキッチンコーナーを設けたり、ジャパネットで売れ筋の高圧洗浄機「ケルヒャー」を使って汚れ落としが体験できる高圧洗浄機コーナー、来店者が記念撮影するなどして楽しめるテレビ通販番組収録の疑似体験ができるスタジオ体験スペースなども設けている。

 「ジャパレクラボ」の目的について「(通販ではできない)商品を実際に手に取って確かめてから購入することができる場を設けたいということも1つだが直接、お客様と触れ合える貴重な場でお客様の『生の声』を集めたい。店内で商品をお試し頂いたり、購入頂いたお客様に、アンケートやインタビューをして許可を頂いた上でテレビショッピングや通販カタログに『お客様の声』を掲載させて頂くほか、例えば『こういうところが使いにくい』など接客時にお客様に伺った内容を吸い上げて商品の改善や開発に活かしている。また、例えば過去に作った2パターンの新聞折込チラシを見て頂き、どちらが見やすいかと伺い、チラシの制作チームにフィードバックして、よりよいチラシ作りに役立てていく取り組みなども行う」(全社商材企画戦略部ジャパレクラボ企画運営課店舗グループの豊村和矢氏)という。

 「ジャパレクラボ」の運営は福岡にあった前店舗が開業した2016年9月から8年目。「店舗運営や接客、目的であるお客様のご意見の収集方法についてもある程度、ノウハウを蓄積していた。新店舗でも経験を活かして、店舗独自の販促を含めてより効果的な店舗運営を行ってきたい」(同)とする。

 通販番組で気になる商品を直接、確かめる術がなかった顧客にとっても、顧客の生の声を収集して媒体や商品の改善などに役立てたいジャパネットにとっても「ジャパレクラボ」は有用と言え、通販事業とのシナジーが期待できそうだ。

 通販事業とのシナジーという意味でもう1つ注目したい施設が「スタジアムシティホテル長崎」だ。

 客室の備品にはジャパネットたかたで販売している商品を多く採用。例えば、寝具ではマットレスは「エアウィーブ」、布団は西川の羽毛布団を使用している。このほか、シャープの液晶テレビ、ダイソンのヘアドライヤー、アテックスの足用マッサージ器、アルインコの首用マッサージ器、アイリスオーヤマのデスクライト、パナソニックの衣類スチーマー、オムロンの血圧計、アラミックのシャワーヘッドなどが備え付けられている。備品を使って気に入った宿泊客はこれらすべてを購入することができる。なお、ホテルオリジナルのシャンプーやトリートメント、ボディソープなども購入可能だ。

 備品を購入したい宿泊客は客室にあるテレビを操作すると「ホテル案内」というコンテンツが表示され、同画面上のQRコードをスマートフォンなどで読み取ることで専用通販サイトに遷移、当該商品の特徴などを見ながらネット販売で購入できるもの。通販のほか、これらの備品は前述の「ジャパレクラボ」でも展示、販売しており、そこですぐに購入することもできる。

 ジャパネットたかたが取り扱う売れ筋商品などをホテルの備品とすることで、「実際に体験してもらい、商品の良さを実感して頂きたい」(同社)とし、同社の通販利用に入り口としたい狙いもあるようだ。

 「長崎スタジアムシティ」は通販事業とは別の地域創生事業の一環として運営していくが、「ジャパレクラボ」や「スタジアムシティホテル長崎」などで行う通販と連動した取り組みのほか、今後はスタジアムシティで行うコンサートやホテル宿泊などをツアーに組み込んだ旅行をジャパネットたかたの通販で販売していくなど通販事業との連携も推進していく考え。

 主力事業の通販とも連携させながら、今後も継続的に「長崎スタジアムシティ」を盛り立てて事業面で成功に導くことができるか。通販の雄、ジャパネットの新たな挑戦が始まった。

ジャパネットホールディングスの髙田旭人社長に聞く「長崎スタジアムシティ」のこれから

 ジャパネットグループが長崎市内に建設した大型複合施設「長崎スタジアムシティ」が10月14日に開業を迎えた。ジャパネットグループを率いる髙田旭人社長に「長崎スタジアムシティ」の開業に向けた想いとこれからについて聞いた。(同日開催の会見での本紙記者を含む報道陣との一問一答から要約・抜粋)

――長崎スタジアムシティが開業した。今の想いは。
 「昨日の(福山雅治さんのこけら落としの)ライブでは多くの皆さんに楽しんで頂き、共有できたことが本当にうれしかった。皆さんが『ここに毎日行きたい』と思える仕掛けをたくさん重ね、人々が集まり、楽しく喜びをシェアする場所を作っていきたい」

――長崎スタジアムシティの魅力は。
 「”非日常”の体験については、スタジアムやアリーナで行われるサッカーの試合やコンサートで味わって頂きたいが、”日常”の体験についても様々な施設で楽しめると思う。レストランは高級なところからリーズナブルなところまで様々あり、テナントに入って頂く店舗にもこだわって本当においしいところばかりだ。我々の直営のレストランもたくさんあり、優れた人材も多く入って頂き、私も料理を食べたが 本当においしい。商業施設では(スタジアムの上を縦断する)ジップライン、温泉やサウナが楽しめる『YUKULU』という温浴施設も素晴らしい。これから屋内型スポーツアクティビティ『VS STADIUM NAGASAKI』という子供たちが楽しくなるような場所もできていく。また、スタジアムの座席に座って(※スタジアムの座席は無料開放する)ゆっくりしたり、(商業施設にある棟の)最上階に設けた足湯に入ったりとか、何かを買わなくとも楽しめる。フットサル場やバスケットボール用の3×3コートもあり、皆さんに楽しんで頂ける本当によい場所だと思う」

――ジャパネットグループが「長崎スタジアムシティ」の運営を行う理由や意義は。
 「(地元である)長崎のためのチャレンジで長崎でなければ、1000億円という大きな投資は行わなかったと思う。だからこそ、しっかりと黒字化して持続可能な事業にしないと意味がない。民間企業がきちんとビジネスとして地域の方に感動を届けるということを成功させることこそ我々の意義だ。長崎というのは日本の地方都市が持つ良さや課題を含めて縮図となっている。その場所でやっていくことが先々、全国(の地域創生事業)にとって意味が出てくると思う。ジャパネットは計算して収益が上がるから行うというよりも、よいと思ったら踏み込んでやってみて、よいことをやり続ければ収益もついてくるという考え方で、あらゆるビジネスをやってる会社だ。これは父の代から守っていることだが、そういう意味では昨日、今日と皆さんを見て、我々がやっていることがいかに人を幸せにするかということを感じられたので、それを健全な形で持続的にビジネスとして成り立たせることにもこれから力を入れていく」

――「長崎スタジアムシティ」の今後の展望は。
 「持続可能にする、感動を生み続けるということの成功確率を高めないといけない。そのためのアイデアと仕掛けはまだまだある。我々のグループは旅行業も持っており、スタジアムシティを含めた長崎の旅を販売することも行う予定だ。先日、ゆこゆこというオンライン旅行サービスを行う会社をM&Aさせて頂いたが、その中で長崎を中心とした温泉宿をもっともっと訴求していったり、来年1月には我々が行っているBS放送がチャンネルの引越しして、リモコンでBSの10ボタン押すと番組が見られるようになる。そこでの番組を通じてもさらに全国の方々にスタジアムシティや長崎のよさを知っていただく機会をこれまで以上に増やしていけると思う。また、例えば、音楽イベントに関しても長崎スタジアムシティでコンサートをするだけではなくて、音楽番組を放送することができれば、そこでコストを吸収でき通常では呼ぶことができないミュージシャンを呼べるかもしれない。グループ内のあらゆるリソースを使って、また必要であれば新たな取り組みも重ねていきたい」

――施設内のホテル「スタジアムシティホテル長崎」の客室ではジャパネットたかたで販売する商品を宿泊客が試せ、通販やスタジアムシティの店舗「ジャパレクラボ」で購入できるようにしているが通販事業との連携の方向性は。
 「ホテルの客室の家具や寝具などすごくこだわっており、また、宿泊者からシャンプーも評判がよい。シャンプーは専門の方と一緒に長崎の素材を入れて何度も何度もサンプルを作って、研究し尽くしたものを作っている。客室で使用してよかったと思ったものについてはネット販売やジャパレクラボで購入できるようにしている。また、風呂やトイレについてもよいと思って頂ければリフォームもできますという提案もしていこうと思っている。ただ、せっかくお泊り頂いているのにあまり商売商売した客室にはしたくないので、そういうテイストはかなり抑えているが、よいものをお届けてしていくことが我々のサービスなので、その部分はもっともっと磨いていけるかなと思っている。このほか、先日、トライアルで長崎スタジアムシティで開催するコンサートを食事をしながら見て頂き、スタジアムシティホテル長崎で2泊3日、宿泊頂く旅行商品を(ジャパネットたかたで)販売したが、そうした旅行商品はこれから徐々に増やしていくことになると思う」

――ジャパネットグループ全体の売上高に占める「長崎スタジアムシティ」事業関連の売上高はどの程度になると想定しているか。
 「最終的に(グループ全体に占める売上高の割合は)5%ぐらいになると思う。金額的には(年間の売上高が)100億円程度となるのではないか。この長崎スタジアムシティでは(グループのプロサッカークラブの)『V・ファーレン長崎』、(グループのプロバスケットボールクラブの)『長崎ヴェルカ』の(試合を行うスタジアムとアリーナの運営をメインとした)領域で行うスポーツ・地域創生事業としているので、ここで何かさらに事業を増やしていこうとは考えていない。ただ、世の中の流れの中で他のスポーツや他の地域で地域創生事業をこのノウハウを活かして行おうということになれば(地域創生事業の売上高が)増えることはあるかもしれないが、今のところは考えていない」

――スポーツ施設の維持管理は非常に費用がかかる。長崎スタジアムシティの維持管理費用はどの程度か。
 「具体的な金額は言えないが考え方として、例えばアリーナではサッカーやバスケットボールの試合のアウェー戦のライブビューイングを行うが、そのためにすごく大きなビジョンを億単位の投資をして購入した。そうした大きなビジョンで試合を見れなければ、わざわざアリーナまで来て観戦する意味がないからだ。また、スタジアムの天然芝について日が当たらない場所に光を当てるための機材を購入している。一般的にはそうした機材はレンタルすることが多いと思うが、我々は体力があるので投資をした。施設をよりよくするための機材が短期的に資金が足りないとずっとレンタルをし続けなくてはならず、割高になる。同じく長いスパンでみて運営も外注よりは我々で会社で立ち上げて外部の力を借りながら内省化しようというという方針でやっている。この施設をジャパネットグループで腹を括ってずっとやると決めているからこそ、また、納得感がある投資は億単位であってもすぐに投資を決める意思決定の速さがあることも強みではないか」

――「長崎スタジアムシティ」の投資費用の回収はいつ頃になるか。
 「スタートとしてはすごく手応えを感じている。(10月14日のグランドオープン日の前に)アリーナとスタジアムで行った(『長崎ヴェルカ』の)バスケートボールと(『V・ファーレン長崎』の)サッカーの試合では収益はしっかりとれている。利用料は以前のものと比べると30倍程度に設定している。ジャパネットホールディングスが当該料金で貸し、例えばサッカーの試合であれば『V・ファーレン長崎』が借りるという構図だ。利用料金はあがるが実施した試合では問題なく、回収できている。すでに改善しているが、その時、施設内での食事の提供はかなり滞ってしまい、お客様をお待たせしてしまったにもかかわらずだ。さらにITを活用して工夫しながら施設内での食事などの提供の方法をよりスムーズにしていくことができれば収益もさらに改善してくるはず。お客様の満足と収益はトレードオフではなく両立する。そうしたことを重ねていけば25年間から30年間で想定している投資費用の回収をもっと早いタイミングでできる可能性もあると思う」

――本日(10月14日)のグランドオープンセレモニーで(前社長で父親の)髙田明氏も登壇して挨拶したがどう感じたか。
 「長崎スタジアムシティには1000億円の投資を行っているが父の代で築き上げたものをベースにチャレンジさせてもらっている。そうしたチャレンジを口出すのを我慢して見守ってもらってるというのは本当にありがたい。普通だったら、『俺の代の時にがんばって貯めたものをこんな使い方するのか』と言われそうなもの(笑)だが、そうは言わず、『すごい世界を作っているね』と言ってくれていることには感謝している。常に父の期待を超えることをやり続けることが恩返しだと思っている」

――長崎スタジアムシティ自体は魅力的で人も集まると思うが、長崎全体にどう人を呼び込むかといった長崎の地域創生についての考えは。
 「スタジアムシティに人が流れてしまう、スタジアムシティへ行く人が増えることで長崎全体に来る人も増えるのではないかなど様々な見方があると思う。我々はもちろん、長崎全体に来る人が増えることに貢献できればいいと思っている。しかし、我々は民間企業が行う事業としてスタジアムシティの魅力を磨くことが最優先だ。長崎市、長崎県全域の盛り上がりに関しては連携はしたいが、とても言い方が難しいが、そこまでの責任を持てない。ただし、例えば長崎に来る人で『時間があるから色々な所に行ってみたい』という方に向けて案内できるように、当社のコールセンターのスタッフに長崎の観光地などに行ってもらって体験してもらう研修を行い、(ジャパネットたかたで長崎スタジアムシティを含む旅行商品などを販売した際の問い合わせ時などに)電話口で実体験をもとに観光地などを紹介できるようにしており、我々の気持ちとしては目一杯、長崎を盛り上げたい。ただ、我々だけでなく長崎県の他の企業も一緒になって努力、工夫をしていかないとなかなか盛り上がっていかない。できることはオープンにして共有をしていきたいと思っている」
 
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