改正景表示法が、10月1日に施行された。確約手続き、繰り返し違反の課徴金加算など制裁効果を強める。消費者庁は、9月末に「№1表示」等の実態調査を公表。企業の多くが違反行為を「理解していない」(表示対策課)として、根拠になる調査手法を初めて示した。違反には、景表法で厳正に対処する。
行政指導、確約 対象になる可能性
改正景表法は、確約手続きが新設される。”違反の疑いのある行為”を対象に、消費者庁と企業が協調的に解決する仕組みだ。消費者庁は不当表示を早期に是正できる。企業は、違反認定を受けず、課徴金も課されない。
ただ、違反認定が微妙な指導案件が、確約案件として扱われる可能性はある。前年度の指導件数は、約170件。事業者に確約を提案すれば、表示の迅速な是正が図れ、行政訴訟も減る。違反認定を避けたい大手企業が対象になれば、確約の内容は、社名を含め公表されるため、十分な制裁効果を発揮する。事業者が提出した確約計画の認定の裁量も行政側にある。
繰り返し違反に対する課徴金の加算も、違反行為の抑止を狙ったものだ。過去10年以内に課徴金命令を受けた企業を対象に、2度目の違反で課徴金額を1・5倍にする。課徴金算出の根拠となる売上額等の把握が困難な場合、売上額の推計も可能にする。
「直罰規定」導入で警察案件も
「直罰規定」の新設も強い制裁効果がある。
景表法は、これまで「間接罰」で運用されてきた。措置命令を受けた企業の命令違反を対象に「2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」を科す。
新設された直罰は、優良誤認・有利誤認を対象に「100万円以下の罰金」を科す。ステルスマーケティングは対象にならない。額は小さいが、罰金は刑事罰。警察当局による「捜査・取り調べ↓逮捕↓検察による起訴↓裁判」というプロセスを経て刑が確定する。
導入に消費者庁は、「名称や法人を変えて繰り返し違反を行う悪質業者に一定の抑止効果がある」(国会答弁)とする。対象事案は、行政処分で不十分な悪質性の高い事例、故意性のある事例と、国会で答弁している。
消費者庁の景表法処分は、例年、6~7割を「みなし違反」である不実証広告規制を適用されている。企業が提出した科学的根拠の評価もほとんど説明が行われない。ただ、法廷では、検察側に明確な違反行為とする立証責任がある。
行政による取締りは広告主が基本だが、直罰では、広告代理店やアフィリエイター等も共犯関係が認められれば起訴される可能性はある。「逮捕」「起訴」などの事案になればマスコミも大きく報じる。社名も報じられる。「罰金100万円」でも企業への影響も大きい。
「№1表示」「高評価%表示」を調査
広告規制は、昨年10月のステルスマーケティング規制の導入、今年10月の改正法施行と強化されている。ステマ規制は、施行後、年度内に処分はなかったが、2件を指導した。今年度にすでに2件が処分されている。
昨年度の「№1表示」の措置命令は、44件のうち約3割(13件)。今年はまだ処分事例がない。消費者庁は、「理解が進んでいない」(表示対策課)として、今年3月に実態調査を行った。
消費者庁は、”顧客満足度№1”などの「№1表示」、”医師の90%が推奨”などの「高評価%表示」を対象に調査した。いずれも自社商品と競合商品を比較し、第三者の主観的評価に基づく「イメージ調査」を問題視する。
事業者ヒアリングでは、「競合他社が表示をしている」、「自社商品が見劣りする」等の理由で表示を行っていた。「調査会社を信頼していた」などと大半は調査の詳細を把握していなかった。把握していたのはヒアリングした15社中1社のみ。消費者庁は、「把握していないと、表示の管理上の措置を問う景表法第22条違反になる」(同)とする。根拠の合理性を問われれば、不当表示として問題になる可能性もある。
根拠となる調査4要件示す
表示の合理的根拠になる調査の要件について、今回初めて示した。要件は、(1)比較対象となる商品・サービスの適切な選定、(2)調査対象者の適切な選定、(3)公平な調査方法、(4)表示と調査結果の適切な対応――の4点から判断する。
「比較対象の選定」では、市場における主要なものが含まれていない場合に問題になる。「事業者であれば当然、競合製品も分かる。常識の範囲で対象にすべき」(同)とする。
「調査対象者の選定」は、利用者を対象にせず、単なるイメージ調査、関係者や従業員を対象にした場合に問題になる。「少なくとも無作為抽出は必要」とする。「医師の推奨」等の表示も評価に必要な専門的知見と対応していない場合、問題になる。
「公平な調査方法」は、自社商品を最上位に固定して誘導したり、№1のタイミングで調査を終了する行為が問題になる。
消費者庁は、日本マーケティングリサーチ協会、公正取引協議会連合会、日本広告審査機構(JARO)、業界団体、消費者団体を通じて周知した。
「NO.1表示」の実態調査
消費者調査、半数で割れる 消費者庁「意思決定の影響大きい」
「№1表示」について、消費者の意識調査では、購入の意思決定に「影響する」が約5割あった。調査でも影響の大きさが指摘されているが、「影響しない」も約5割と割れる。消費者庁は「捉え方はさまざまあるが、消費者庁は影響が大きいと捉える」(高居良平表示対策課長)と判断した。
1000人の消費者を対象にウェブアンケートを行った。意思決定の影響は、「かなり影響する」と捉えた消費者は、全体の約5%(46人)にとどまる。「やや影響する」が5割近く含まれている。「№1表示」同様、「第三者の主観的評価」に依存する意識調査であり、慎重に評価する必要があるだろう。
22年に検討されたステマ規制も、具体的な被害事例がなく、消費者相談が5年で40件だった。ステマをテーマにした学術研究における問題点の指摘、インフルエンサー300人を対象に行った調査で、5割が「悪いこと」と認識している印象論を根拠に規制導入が進んだ。
顧客満足度や推奨に関する調査で、「№1表示」を行うことにより、「同種の他社商品に比べ優れていると思う」、こうした調査が「実際の利用者に調査をしている」と思うのはいずれも4割超だった。
「専門家の〇%が推奨」など「高評価%表示」も同様だった。「影響する」、「影響しないは約5割を割れている。こちらも「やや影響する」を除き、「かなり影響する」と回答したのは、約5%にとどまる。「同種の他社商品と比べ優れていると思う」は約4割。とくに「医師の90%が推奨」が5割近かかった。調査は、約5割の消費者が医師の知見による専門的な根拠や裏づけがあると感じていた。
調査では、368件の広告物も調べた。「№1表示」は全体の75%、「高評価%表示」は25%あった。内容は「満足度(顧客満足度№1等)」、「推奨(おすすめしたい№1、専門家の〇%が推奨)、「~と思う・期待(〇%が無理なく痩せることが期待できると回答)」、「人気・支持(くちコミ№1等)」、「利用したい(使ってみたい№1等)」、「安全・安心(専門家の〇%が安心して利用できると回答)」、「充実・豊富(情報充実度№1等)」など7つに分類されるという。
「№1表示」では、顧客満足度や品質満足度、コスパ満足度など商品に対する満足、「高評価%表示」では、「医師の〇%が推奨」、「おすすめしたい〇〇」など専門家等による利用の推奨が多かったとしている。
行政指導、確約 対象になる可能性
改正景表法は、確約手続きが新設される。”違反の疑いのある行為”を対象に、消費者庁と企業が協調的に解決する仕組みだ。消費者庁は不当表示を早期に是正できる。企業は、違反認定を受けず、課徴金も課されない。
ただ、違反認定が微妙な指導案件が、確約案件として扱われる可能性はある。前年度の指導件数は、約170件。事業者に確約を提案すれば、表示の迅速な是正が図れ、行政訴訟も減る。違反認定を避けたい大手企業が対象になれば、確約の内容は、社名を含め公表されるため、十分な制裁効果を発揮する。事業者が提出した確約計画の認定の裁量も行政側にある。
繰り返し違反に対する課徴金の加算も、違反行為の抑止を狙ったものだ。過去10年以内に課徴金命令を受けた企業を対象に、2度目の違反で課徴金額を1・5倍にする。課徴金算出の根拠となる売上額等の把握が困難な場合、売上額の推計も可能にする。
「直罰規定」導入で警察案件も
「直罰規定」の新設も強い制裁効果がある。
景表法は、これまで「間接罰」で運用されてきた。措置命令を受けた企業の命令違反を対象に「2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」を科す。
新設された直罰は、優良誤認・有利誤認を対象に「100万円以下の罰金」を科す。ステルスマーケティングは対象にならない。額は小さいが、罰金は刑事罰。警察当局による「捜査・取り調べ↓逮捕↓検察による起訴↓裁判」というプロセスを経て刑が確定する。
導入に消費者庁は、「名称や法人を変えて繰り返し違反を行う悪質業者に一定の抑止効果がある」(国会答弁)とする。対象事案は、行政処分で不十分な悪質性の高い事例、故意性のある事例と、国会で答弁している。
消費者庁の景表法処分は、例年、6~7割を「みなし違反」である不実証広告規制を適用されている。企業が提出した科学的根拠の評価もほとんど説明が行われない。ただ、法廷では、検察側に明確な違反行為とする立証責任がある。
行政による取締りは広告主が基本だが、直罰では、広告代理店やアフィリエイター等も共犯関係が認められれば起訴される可能性はある。「逮捕」「起訴」などの事案になればマスコミも大きく報じる。社名も報じられる。「罰金100万円」でも企業への影響も大きい。
「№1表示」「高評価%表示」を調査
広告規制は、昨年10月のステルスマーケティング規制の導入、今年10月の改正法施行と強化されている。ステマ規制は、施行後、年度内に処分はなかったが、2件を指導した。今年度にすでに2件が処分されている。
昨年度の「№1表示」の措置命令は、44件のうち約3割(13件)。今年はまだ処分事例がない。消費者庁は、「理解が進んでいない」(表示対策課)として、今年3月に実態調査を行った。
消費者庁は、”顧客満足度№1”などの「№1表示」、”医師の90%が推奨”などの「高評価%表示」を対象に調査した。いずれも自社商品と競合商品を比較し、第三者の主観的評価に基づく「イメージ調査」を問題視する。
事業者ヒアリングでは、「競合他社が表示をしている」、「自社商品が見劣りする」等の理由で表示を行っていた。「調査会社を信頼していた」などと大半は調査の詳細を把握していなかった。把握していたのはヒアリングした15社中1社のみ。消費者庁は、「把握していないと、表示の管理上の措置を問う景表法第22条違反になる」(同)とする。根拠の合理性を問われれば、不当表示として問題になる可能性もある。
根拠となる調査4要件示す
表示の合理的根拠になる調査の要件について、今回初めて示した。要件は、(1)比較対象となる商品・サービスの適切な選定、(2)調査対象者の適切な選定、(3)公平な調査方法、(4)表示と調査結果の適切な対応――の4点から判断する。
「比較対象の選定」では、市場における主要なものが含まれていない場合に問題になる。「事業者であれば当然、競合製品も分かる。常識の範囲で対象にすべき」(同)とする。
「調査対象者の選定」は、利用者を対象にせず、単なるイメージ調査、関係者や従業員を対象にした場合に問題になる。「少なくとも無作為抽出は必要」とする。「医師の推奨」等の表示も評価に必要な専門的知見と対応していない場合、問題になる。
「公平な調査方法」は、自社商品を最上位に固定して誘導したり、№1のタイミングで調査を終了する行為が問題になる。
消費者庁は、日本マーケティングリサーチ協会、公正取引協議会連合会、日本広告審査機構(JARO)、業界団体、消費者団体を通じて周知した。
「NO.1表示」の実態調査
消費者調査、半数で割れる 消費者庁「意思決定の影響大きい」
「№1表示」について、消費者の意識調査では、購入の意思決定に「影響する」が約5割あった。調査でも影響の大きさが指摘されているが、「影響しない」も約5割と割れる。消費者庁は「捉え方はさまざまあるが、消費者庁は影響が大きいと捉える」(高居良平表示対策課長)と判断した。
1000人の消費者を対象にウェブアンケートを行った。意思決定の影響は、「かなり影響する」と捉えた消費者は、全体の約5%(46人)にとどまる。「やや影響する」が5割近く含まれている。「№1表示」同様、「第三者の主観的評価」に依存する意識調査であり、慎重に評価する必要があるだろう。
22年に検討されたステマ規制も、具体的な被害事例がなく、消費者相談が5年で40件だった。ステマをテーマにした学術研究における問題点の指摘、インフルエンサー300人を対象に行った調査で、5割が「悪いこと」と認識している印象論を根拠に規制導入が進んだ。
顧客満足度や推奨に関する調査で、「№1表示」を行うことにより、「同種の他社商品に比べ優れていると思う」、こうした調査が「実際の利用者に調査をしている」と思うのはいずれも4割超だった。
「専門家の〇%が推奨」など「高評価%表示」も同様だった。「影響する」、「影響しないは約5割を割れている。こちらも「やや影響する」を除き、「かなり影響する」と回答したのは、約5%にとどまる。「同種の他社商品と比べ優れていると思う」は約4割。とくに「医師の90%が推奨」が5割近かかった。調査は、約5割の消費者が医師の知見による専門的な根拠や裏づけがあると感じていた。
調査では、368件の広告物も調べた。「№1表示」は全体の75%、「高評価%表示」は25%あった。内容は「満足度(顧客満足度№1等)」、「推奨(おすすめしたい№1、専門家の〇%が推奨)、「~と思う・期待(〇%が無理なく痩せることが期待できると回答)」、「人気・支持(くちコミ№1等)」、「利用したい(使ってみたい№1等)」、「安全・安心(専門家の〇%が安心して利用できると回答)」、「充実・豊富(情報充実度№1等)」など7つに分類されるという。
「№1表示」では、顧客満足度や品質満足度、コスパ満足度など商品に対する満足、「高評価%表示」では、「医師の〇%が推奨」、「おすすめしたい〇〇」など専門家等による利用の推奨が多かったとしている。