来年10月から、ふるさと納税ポータルサイトにおけるポイント付与が事実上禁止されることを受け、楽天グループが撤回を求めるべく、オンラインで署名活動を開始するなど波紋が広がっている。また、今年10月からは「返礼品を過度に強調するような宣伝広告」も制限される。「ポータルサイトの販促」を制限する動きについて、総務省自治税務局市町村税課の長谷川雄也課長補佐と、中間事業者としてふるさと納税に関わるEC企業・ベルヴィの宮﨑義則CEO兼COOにインタビューした。
納税はECではない
総務省 市町村税課課長補佐 長谷川 雄也 氏
――松本剛明総務相が、6月25日の記者会見で「自治体の払う手数料からポイントを付与するのはおかしい」という趣旨のコメントをしたのに対し、楽天の三木谷浩史社長はXにおいて「ポイントは『弊社負担』だ」と反発している。なぜこういった食い違いが生まれたのか。
「われわれもポータルサイト運営者が出しているポイントを、直接地方自治体が負担しているとは思っていない。ただ、ここは水掛け論になるかと思うが、一方で自治体は少なからぬ手数料を支払っているわけで、例えば楽天の売り上げの中にはその手数料が含まれており、そこを前提として営利活動を行っていることは事実。大臣のコメントは、そこから踏み込んで自身の認識として発言したと捉えてほしい」
――楽天側は「ポイント付与はふるさと納税プロモーションのための企業努力だ」と言いたいのでは。
「楽天の主張する内容について否定することはない」
――しかし、ポイント付与を禁止するということは主張を否定しているのと同じでは。
「いや、われわれはポイント原資がどうこうと言いたいわけではない」
――つまり、ポイントを与えること自体が問題だと。
「そうだ。そもそも、ふるさと納税の趣旨は『ふるさとやお世話になった地方団体に感謝し、もしくは応援する気持ちを伝える』ために行うもの。通販とは全く違うもので、返礼品やポイントを目的に『節税』する制度ではない」
――三木谷氏は「コンセンサスも取らず」と激怒している。なぜこのタイミングでの改正なのか。
「ポイント競争が加熱しているからだ。もちろん急に思いついて急に改正したわけではなく、これまでも楽天含めて運営事業者に投げかけをし、議論をしてきた。10月からは返礼品を過度に強調するような宣伝広告にも制限がかかる。ふるさと納税はあくまで寄付であり、Eコマースではない。寄付者自らの意思を尊重する制度とするために、ポイントについても広告についても一定の考え方を示したわけだ。そうでない運用を自治体がするなら、それは制度の趣旨にそぐわないと言わざるを得ない」
――事前に話をしていたとのことだが、自治体やポータルサイトの反応は。
「自治体には、ポータルサイトのポイント付与競争が加熱しているという、総務省と共通する認識があると思う。ポータルサイトからも、一定の理解を示してもらったという認識だ」
――楽天だけは理解を示さなかったということか。
「別に個社から同意書をもらっているわけではないが、システム改修に必要な期間など、技術的な面も含めて、見直しを前提に検討しているという話はしていた」
――ポータルサイトが寄付者にたくさんポイントを付与するのは今にはじまった話ではない。趣旨にそぐわない状態がずっと続いていたのに放置していたということか。
「付与率がどんどん上がって、制度の趣旨にそぐわない状態が増してきたとは言えるのではないか。(ポイントを与えることで)寄付者の自主的な寄付の選択を阻害してはいけない」
――ただ「2000円払うだけで返礼品がもらえてポイントもたくさん付く」という理由で寄付をしている人が多いのは事実。
「もちろんそれは承知している。やはりそこは『制度の趣旨を尊重する』ために、適宜運用を変えていかなければいけない。譲れないのは、通販とふるさと納税は全く違う趣旨のもとで運営されるべきもの、ということ。恐らくそこで(楽天などのEC事業者とは)相容れない部分があるのだろう」
――「楽天で寄付と同時に買い物をするとお得だから」という理由で納税するのはおかしい、と。
「『ポイント付くからここで寄付しよう』というのは、制度の趣旨には沿っていないということ。特殊な税制なので、全体の相互理解があってこそ制度が成り立つことを理解してほしい」
――いっそ制度をやめればいいのでは。
「それを言ったら元も子もない。税の使い道を自らの意思で決められるようにする、というのも制度の趣旨」
――自治体が支払うポータルサイトへの手数料に関してはどう捉えているのか。
「今回こういったポイント付与の制限をすることで、すぐに手数料が引き下がるということはないだろうが、中長期的には自治体の負担が軽減されることを期待している。もちろん、ポータルサイトの営利活動を前提とした主張を否定する気はないが、法令に基づく制度として運用している以上、趣旨に見合わないものについては一定の見直しをするというのが総務省のスタンスだ」
――手数料率はポータルサイト間の競争が働けば下がっていくのでは。
「もちろん、そういう考え方もあるだろうが、現実問題としては徐々に上がっている」
――手数料に関する規定を設けることはできないのか。
「総務省としては、手数料そのものに制約をかけることはできない。そのため、通常の商取引以上にポイントを付与するポータルサイトを利用する自治体については、ふるさと納税制度の参加を認めないというやり方になった」
――ポータルサイトの役割についてどう評価するか。
「寄付額が増えているということで、もちろんいろいろなプラスはあると思うし、ポータルサイトの役割を否定することはない。一方で、寄付者が住む自治体の一部においては、大きく税収が減っている。そういう自治体の理解があってこその制度ということ。もちろん、地方自治体から制度の継続を前提とした要望は上がっているが、いろいろな人たちの趣旨に対する理解があってこそ成り立っている制度なので、こうした見直しが必要になってくる」
ポータルへの出稿必須
ベルヴィ CEO兼COO 宮崎 義則 氏
――今回のポイント規制をどうみるか。
「なんでそんなことするのかな、というのが率直な感想。ただ、現状の形が続くのが一番いいが、全てのポータルサイトでポイントが無くなるなら、それはそれで全サイトが同じところに落ち着くことになるのではないか。最終的にカード決済のポイントしか付かないとなれば、楽天カードの保有者は日本で一番多いわけで、『楽天ふるさと納税』が有利ということになるかもしれない」
――ポイントが付かなくなることで、ふるさと納税の寄付額が減少する、ということにはならないのか。
「それはないと思う。やはりふるさと納税は高額納税者の利用が非常に多い。ポイントがもらえるからふるさと納税を利用しているというよりも、しないと損だからやっているわけで、そこまで影響は無いのではないか。寄付額の30%までの返礼品がもらえる以上、ふるさと納税をしなくなるということはないと思う。ただ、楽天市場において、寄付と一緒に買い物をすることでたくさんポイントをもらう、というニーズは減るかもしれない」
――10月からは返礼品等を強調した広告宣伝も禁止となる。
「ここがちょっと良く分からない。『返礼品等を強調した寄付者を誘引するための宣伝広告は禁止』とあるが、これは例えば、楽天市場内に掲載するRPP広告(検索結果表示広告)も全て禁止、ということなのかどうか。最近は中間事業者が費用を負担し、ポータルサイト内に広告を出稿するケースが多い。要は、寄付額を増やしさえすれば中間事業者は収益を得ることができるので、自分たちで広告費を投入するという狙いで、これを禁止したいのかなとは思っているが。ただ、ポータルサイトでの広告が全面禁止となれば、すでに寄付額の多い自治体以外はポータルサイト内検索の上位に上がってこないことになる。その場合は、ポータルサイト側が検索ロジックを見直してくれないと困る。例えば、新しく登録した返礼品はしばらく上位に表示される、とかならともかく、現状は最後尾からのスタートなので」
――自治体は検索広告を頻繁に利用しているのか。
「使っているところはかなり多いのではないか。そうしないと検索で上位に来ないのが実情。例えば、新しい返礼品を登録しても、アクセスを作らないと寄付が増えない。もちろん、寄付額が増えれば自然と検索でも上位に上がってくるわけだが、問題はそこまでの過程。やはり広告に頼らざるを得ないので、その広告が駄目だと言われたら厳しい部分はある」
――総務省は「ふるさと納税は寄付なので、寄付者自らの意思を尊重する制度とするために、ポイントについても広告についても一定の規制をする」という考え方のようだ。
「レギュレーションの作り方が甘いからそうなったのではないか。ただ、返礼品に関しての不透明感はまだまだ残っているし、そういった部分を先に変えてほしい。例えば美顔器などで、製造は中国だが、研究・開発や広告宣伝などを国内で行っている場合は地場産品として扱い、ふるさと納税の返礼品としている自治体がある。これは非常にあやふやに思えるので、もっと基準をクリアにしてもらいたい」
――ポイント付与を禁止することについて、何か自治体は言っているか。
「それは特にない。大きな影響を及ぼすと思っていないのではないか」
――今後、ユーザーがポータルサイトを選ぶ基準はどこになると考えるか。
「カードポイントしか付かないわけで、『5と0のつく日』での楽天カード保有者の優遇が問題ないのであれば、楽天ふるさと納税が有利になるのではないか。あとは返礼品の数、UI・UXや商品ページの作り込みなどもポイントになるだろう」
――アマゾンがふるさと納税に参入する影響は。
「現段階で聞いている話だと、初期費用が高いプランについては、手数料率を他のポータルサイトよりも大幅に下げるということだ。つまり、寄付額の多い自治体を取るのがアマゾンの狙いではないか。ふるさと納税市場の15~20%程度は持っていくかもしれない。ただ、まずは様子見する自治体が多いと予想している」
「そのため、スタート当初は他のポータルサイトよりも返礼品の数は少なくなるのではないか。ただ、人気のある返礼品については、FBAから即日出荷する形を採ると聞いているので、もともと寄付額の多い自治体が年末などに勝負をかけると、1人勝ちということになるかもしれない。年内に届くかどうか、というのはかなり重要な要素なので。ただ、どこの自治体も人気返礼品の在庫が潤沢にあるわけではないし、特に生鮮食品は在庫を確保するのが難しい。なので、どこまで自治体が対応できるかはやや疑問がある」
――ポータルサイトに支払う手数料率について、自治体は高いと思っているのか。
「中間事業者よりも取っているので、自治体は間違いなく高いと思っている。10%がスタンダードになっている感じなので、私から見ても取りすぎという感はある」
――ポイントが無くなることで手数料率は下がると思うか。
「下がればいいと思うが、結局その分は別のプロモーションに使うのではないか」
――返礼品等を強調した広告宣伝が禁止になることで、どんな影響がありそうか。
「ポータルサイトの検索ロジックを考えると、返礼品が前面に出てこないとなかなか寄付額は増えない。そのため、数%の勝ち組自治体へ、これまで以上に寄付が集中する一方、90%以上の負け組自治体が生まれかねない。それが総務省の考える正義なのか、ということ。このままではポータルサイトの検索上位に来る返礼品に寄付が集まり続けるわけで、先行者利益をひっくり返すのが難しい、ということは総務省にも理解してもらいたい」
納税はECではない
総務省 市町村税課課長補佐 長谷川 雄也 氏
――松本剛明総務相が、6月25日の記者会見で「自治体の払う手数料からポイントを付与するのはおかしい」という趣旨のコメントをしたのに対し、楽天の三木谷浩史社長はXにおいて「ポイントは『弊社負担』だ」と反発している。なぜこういった食い違いが生まれたのか。
「われわれもポータルサイト運営者が出しているポイントを、直接地方自治体が負担しているとは思っていない。ただ、ここは水掛け論になるかと思うが、一方で自治体は少なからぬ手数料を支払っているわけで、例えば楽天の売り上げの中にはその手数料が含まれており、そこを前提として営利活動を行っていることは事実。大臣のコメントは、そこから踏み込んで自身の認識として発言したと捉えてほしい」
――楽天側は「ポイント付与はふるさと納税プロモーションのための企業努力だ」と言いたいのでは。
「楽天の主張する内容について否定することはない」
――しかし、ポイント付与を禁止するということは主張を否定しているのと同じでは。
「いや、われわれはポイント原資がどうこうと言いたいわけではない」
――つまり、ポイントを与えること自体が問題だと。
「そうだ。そもそも、ふるさと納税の趣旨は『ふるさとやお世話になった地方団体に感謝し、もしくは応援する気持ちを伝える』ために行うもの。通販とは全く違うもので、返礼品やポイントを目的に『節税』する制度ではない」
――三木谷氏は「コンセンサスも取らず」と激怒している。なぜこのタイミングでの改正なのか。
「ポイント競争が加熱しているからだ。もちろん急に思いついて急に改正したわけではなく、これまでも楽天含めて運営事業者に投げかけをし、議論をしてきた。10月からは返礼品を過度に強調するような宣伝広告にも制限がかかる。ふるさと納税はあくまで寄付であり、Eコマースではない。寄付者自らの意思を尊重する制度とするために、ポイントについても広告についても一定の考え方を示したわけだ。そうでない運用を自治体がするなら、それは制度の趣旨にそぐわないと言わざるを得ない」
――事前に話をしていたとのことだが、自治体やポータルサイトの反応は。
「自治体には、ポータルサイトのポイント付与競争が加熱しているという、総務省と共通する認識があると思う。ポータルサイトからも、一定の理解を示してもらったという認識だ」
――楽天だけは理解を示さなかったということか。
「別に個社から同意書をもらっているわけではないが、システム改修に必要な期間など、技術的な面も含めて、見直しを前提に検討しているという話はしていた」
――ポータルサイトが寄付者にたくさんポイントを付与するのは今にはじまった話ではない。趣旨にそぐわない状態がずっと続いていたのに放置していたということか。
「付与率がどんどん上がって、制度の趣旨にそぐわない状態が増してきたとは言えるのではないか。(ポイントを与えることで)寄付者の自主的な寄付の選択を阻害してはいけない」
――ただ「2000円払うだけで返礼品がもらえてポイントもたくさん付く」という理由で寄付をしている人が多いのは事実。
「もちろんそれは承知している。やはりそこは『制度の趣旨を尊重する』ために、適宜運用を変えていかなければいけない。譲れないのは、通販とふるさと納税は全く違う趣旨のもとで運営されるべきもの、ということ。恐らくそこで(楽天などのEC事業者とは)相容れない部分があるのだろう」
――「楽天で寄付と同時に買い物をするとお得だから」という理由で納税するのはおかしい、と。
「『ポイント付くからここで寄付しよう』というのは、制度の趣旨には沿っていないということ。特殊な税制なので、全体の相互理解があってこそ制度が成り立つことを理解してほしい」
――いっそ制度をやめればいいのでは。
「それを言ったら元も子もない。税の使い道を自らの意思で決められるようにする、というのも制度の趣旨」
――自治体が支払うポータルサイトへの手数料に関してはどう捉えているのか。
「今回こういったポイント付与の制限をすることで、すぐに手数料が引き下がるということはないだろうが、中長期的には自治体の負担が軽減されることを期待している。もちろん、ポータルサイトの営利活動を前提とした主張を否定する気はないが、法令に基づく制度として運用している以上、趣旨に見合わないものについては一定の見直しをするというのが総務省のスタンスだ」
――手数料率はポータルサイト間の競争が働けば下がっていくのでは。
「もちろん、そういう考え方もあるだろうが、現実問題としては徐々に上がっている」
――手数料に関する規定を設けることはできないのか。
「総務省としては、手数料そのものに制約をかけることはできない。そのため、通常の商取引以上にポイントを付与するポータルサイトを利用する自治体については、ふるさと納税制度の参加を認めないというやり方になった」
――ポータルサイトの役割についてどう評価するか。
「寄付額が増えているということで、もちろんいろいろなプラスはあると思うし、ポータルサイトの役割を否定することはない。一方で、寄付者が住む自治体の一部においては、大きく税収が減っている。そういう自治体の理解があってこその制度ということ。もちろん、地方自治体から制度の継続を前提とした要望は上がっているが、いろいろな人たちの趣旨に対する理解があってこそ成り立っている制度なので、こうした見直しが必要になってくる」
ポータルへの出稿必須
ベルヴィ CEO兼COO 宮崎 義則 氏
――今回のポイント規制をどうみるか。
「なんでそんなことするのかな、というのが率直な感想。ただ、現状の形が続くのが一番いいが、全てのポータルサイトでポイントが無くなるなら、それはそれで全サイトが同じところに落ち着くことになるのではないか。最終的にカード決済のポイントしか付かないとなれば、楽天カードの保有者は日本で一番多いわけで、『楽天ふるさと納税』が有利ということになるかもしれない」
――ポイントが付かなくなることで、ふるさと納税の寄付額が減少する、ということにはならないのか。
「それはないと思う。やはりふるさと納税は高額納税者の利用が非常に多い。ポイントがもらえるからふるさと納税を利用しているというよりも、しないと損だからやっているわけで、そこまで影響は無いのではないか。寄付額の30%までの返礼品がもらえる以上、ふるさと納税をしなくなるということはないと思う。ただ、楽天市場において、寄付と一緒に買い物をすることでたくさんポイントをもらう、というニーズは減るかもしれない」
――10月からは返礼品等を強調した広告宣伝も禁止となる。
「ここがちょっと良く分からない。『返礼品等を強調した寄付者を誘引するための宣伝広告は禁止』とあるが、これは例えば、楽天市場内に掲載するRPP広告(検索結果表示広告)も全て禁止、ということなのかどうか。最近は中間事業者が費用を負担し、ポータルサイト内に広告を出稿するケースが多い。要は、寄付額を増やしさえすれば中間事業者は収益を得ることができるので、自分たちで広告費を投入するという狙いで、これを禁止したいのかなとは思っているが。ただ、ポータルサイトでの広告が全面禁止となれば、すでに寄付額の多い自治体以外はポータルサイト内検索の上位に上がってこないことになる。その場合は、ポータルサイト側が検索ロジックを見直してくれないと困る。例えば、新しく登録した返礼品はしばらく上位に表示される、とかならともかく、現状は最後尾からのスタートなので」
――自治体は検索広告を頻繁に利用しているのか。
「使っているところはかなり多いのではないか。そうしないと検索で上位に来ないのが実情。例えば、新しい返礼品を登録しても、アクセスを作らないと寄付が増えない。もちろん、寄付額が増えれば自然と検索でも上位に上がってくるわけだが、問題はそこまでの過程。やはり広告に頼らざるを得ないので、その広告が駄目だと言われたら厳しい部分はある」
――総務省は「ふるさと納税は寄付なので、寄付者自らの意思を尊重する制度とするために、ポイントについても広告についても一定の規制をする」という考え方のようだ。
「レギュレーションの作り方が甘いからそうなったのではないか。ただ、返礼品に関しての不透明感はまだまだ残っているし、そういった部分を先に変えてほしい。例えば美顔器などで、製造は中国だが、研究・開発や広告宣伝などを国内で行っている場合は地場産品として扱い、ふるさと納税の返礼品としている自治体がある。これは非常にあやふやに思えるので、もっと基準をクリアにしてもらいたい」
――ポイント付与を禁止することについて、何か自治体は言っているか。
「それは特にない。大きな影響を及ぼすと思っていないのではないか」
――今後、ユーザーがポータルサイトを選ぶ基準はどこになると考えるか。
「カードポイントしか付かないわけで、『5と0のつく日』での楽天カード保有者の優遇が問題ないのであれば、楽天ふるさと納税が有利になるのではないか。あとは返礼品の数、UI・UXや商品ページの作り込みなどもポイントになるだろう」
――アマゾンがふるさと納税に参入する影響は。
「現段階で聞いている話だと、初期費用が高いプランについては、手数料率を他のポータルサイトよりも大幅に下げるということだ。つまり、寄付額の多い自治体を取るのがアマゾンの狙いではないか。ふるさと納税市場の15~20%程度は持っていくかもしれない。ただ、まずは様子見する自治体が多いと予想している」
「そのため、スタート当初は他のポータルサイトよりも返礼品の数は少なくなるのではないか。ただ、人気のある返礼品については、FBAから即日出荷する形を採ると聞いているので、もともと寄付額の多い自治体が年末などに勝負をかけると、1人勝ちということになるかもしれない。年内に届くかどうか、というのはかなり重要な要素なので。ただ、どこの自治体も人気返礼品の在庫が潤沢にあるわけではないし、特に生鮮食品は在庫を確保するのが難しい。なので、どこまで自治体が対応できるかはやや疑問がある」
――ポータルサイトに支払う手数料率について、自治体は高いと思っているのか。
「中間事業者よりも取っているので、自治体は間違いなく高いと思っている。10%がスタンダードになっている感じなので、私から見ても取りすぎという感はある」
――ポイントが無くなることで手数料率は下がると思うか。
「下がればいいと思うが、結局その分は別のプロモーションに使うのではないか」
――返礼品等を強調した広告宣伝が禁止になることで、どんな影響がありそうか。
「ポータルサイトの検索ロジックを考えると、返礼品が前面に出てこないとなかなか寄付額は増えない。そのため、数%の勝ち組自治体へ、これまで以上に寄付が集中する一方、90%以上の負け組自治体が生まれかねない。それが総務省の考える正義なのか、ということ。このままではポータルサイトの検索上位に来る返礼品に寄付が集まり続けるわけで、先行者利益をひっくり返すのが難しい、ということは総務省にも理解してもらいたい」