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コロナの反動脱し概ね堅調<在京キー局各社の前期TV通販業績> ロッピングライフら3社が増収で着地

2024年 6月20日 12:00

 在京テレビキー局5社が手がけるテレビ通販事業の前期(2024年3月期)の業績が出そろった。前年はコロナ禍に伴う巣ごもり消費増の反動減などで各社とも苦戦を強いられたが、当期はDINOSCORPORATIONは2ケタ減収となったが、おおむね堅調でロッピングライフやTBSグロウディア、テレビ東京ダイレクトは増収となり、日本テレビも微減にとどめた。コロナ禍からの反動減の影響から脱し、独自商品の開発や新たな売り場の確保など今後の拡大策に向けた展開が各社で今期以降、加速していきそうだ。
 
売れ筋軸に売上増増収を維持   

 ロッピングライフの前期の総売上高は前年比7・0%増の182億1700万円。このうち、番組グッズなどのネット販売を含めた通販売上高は同6・3%増の178億3600万円だった。前期累計で4億6000万円を売り上げた内転筋運動ボール「東急スポーツオアシス フィットネスクラブがつくったスタイリーボール」のほか、安眠枕「西川 睡眠Labo ピローマットSoft」(前期累計売上高3億8000万円)、口腔洗浄器「トゥースジェット」(同3億6000万円)、調理器具「電子レンジ調理器 ムテキレンジ」(同3億円)、マッサージ器「ルルドプレミアムシートマッサージャー特別セット」(同3億円)といった商品を中心にテレビ通販では各放送枠ともに前年実績を超える売り上げとなったことに加え、通販カタログ売り上げも堅調だったことで増収となった。

 通販枠別売上高は主力の午前枠は前年比4・9%増の86億8800万円、深夜枠は同16・1%増の4億3100万円、BS枠が同5・0%増の1億900万円、特番枠が同13・8%増の44億600万円だった。

 テレビ通販以外のチャネルの売上高はカタログ通販が同8・1%増の16億2500万円、ネット販売は前年上期に売れ行きを伸ばした番組関連グッズの反動減で同17・1%減の3億3600万円、東京駅など都内で展開する実店舗はコロナ禍収束で客足が戻ったことで同70・9%増の3億5700万円と伸びた。テレビ朝日のテレビ朝日系列局の通販事業のフルフィルメント業務を請け負う系列局向け通販支援事業は同16・6%減の8700万円だった。

 前期の営業利益は原価率のアップやフルフィルメント費用の増加が響き、同16・7%減の7億6800万円。
 なお、今期の出足は「前年並み」(同社)としており、今期の業績見通しについては「先行き不透明な状況」(同)として前年並み程度を予想している。

美容健康商品苦戦で2桁減収に  

 前期のDINOSCORPORATION(ディノス)の総売上高、514億7400万円(前年比13・2%減)に占める通販売上高は前年比13・4%減の479億4500万円でこのうち、テレビ通販売上高は同12・2%減の158億1900万円だった。「外出機会増加による消費需要の分散の影響」(同社)で特に売り上げをけん引してきた美容健康カテゴリーの商品の苦戦が響き、2桁減収となったようだ。

 前期の売れ筋は調理器具「電子レンジ専用調理器具レンジメートPROグランデ」や水流で歯の汚れを落とす「ウォーターピック コードレス セレクト」、包丁セット「ストーンバリア包丁&専用シャープナー特別セット」などだった。

 今期の出足については「足もとの状況は非回答」(同社)としている。今期のテレビ通販の方向性については親会社のフジ・メディア・ホールディングスによれば、限定商品の開発強化やウェブやアプリとの連動強化による集客アップなどで売上高の拡大を図るとしている。

平日午前の3分枠などが好調に推移

 TBSグロウディアの前期の売上高は前年比7・4%増の301億9300万円で通販関連事業を展開するショッピング事業本部の総売上高は同1・5%増の154億4300万円だった。このうち、テレビ通販売上高(地上波とBS・CS局でのテレビ通販および系列局とのテレビ・ラジオの共同通販事業、番組およびアニメ関連のグッズのネット販売、卸事業などを含めた合計売上高)は同1・2%増の149億1600万円だった。

 昨年4月から放送を開始した月~金放送の情報番組「ひるおび」内の3分の通販枠「ひるおびショッピングキニナルチョイス」が通期を通して好調な売れ行きとなったほか、毎週土曜日放送の情報番組「王様のブランチ」内の通販枠「ブランチショッピング」など他のレギュラー枠も堅調に売り上げを伸ばした。また、親会社のTBSホールディングスによると「DVD収入の増加に加えて、展覧会事業とTVショッピングなどの一部がTBSテレビから移管された」としており、これらも増収に貢献したようだ。なお、前期の売れ筋は目元専用美容器具やソーラーパネル付ポータブル電源などだったという。

 今期の出足については「全体に滑り出しは順調だが、物価高が消費マインドを引き下げているのが懸念材料」(同社)としている。今期の業績見通しについては明らかにしていない。

食品頒布会苦戦も雑貨が好調で増収

 テレビ東京ダイレクトの前期の総売上高は前年比2・2%増の113億6700万円だった。このうち、通販枠の販売や管理などを行う通販提携事業売上高(同7・2%減の3億3700万円)を除く主力の生活雑貨通販事業のカタログ通販を含むテレビ通販(同5・2%増の55億2200万円)と同事業のネット販売(同3・6%増の18億4800万円)の合計売上高(同4・8%増の73億7200万円)および食品通販事業(同2・0%減の25億900万円)、宿泊予約事業(同21・7%減の3億8800万円)、テレビ東京の番組関連グッズのネット販売および実店舗での小売事業(同55・4%増の6億7600万円)、その他売上高(同63・4%減の8200万円)などをあわせた通販関連売上高は同2・5%増の110億2700円だった。

 コロナ禍での売れ行き増の反動減の影響などで近年、好調だったゴルフ関連用品の売れ行きが苦戦したほか、食品通販「虎ノ門市場」で販売戦略をこれまで主力だった定期的に食品を購入者に配送する頒布会から単品での販売を軸とした形に切り替えようと昨夏から商品や番組構成を変更したものの、想定通りに単品販売が伸びず、通販番組で露出が減った頒布会は顧客の利便性向上のために一昨年から頒布会を途中キャンセルしやすくした影響なども重なり売り上げが減少。冬場の海鮮品の販売などは前年実績を上回るなど堅調だったが食品全体の売り上げは落ち込んだ。

 一方で夏場から季節商品などを軸に売れ行きを堅調に伸ばし、また、雑貨や寝具、運動用品など定番の売れ筋の紹介頻度や訴求を強化しつつ、昨年10月からテレビ東京で毎週金曜日の午前10時台に生活雑貨を販売する新枠を確保したことなどで主力の生活雑貨の通販事業が前年実績を上回って推移した。加えて、テレビ東京グループの戦略として前期から本格化したテレビ東京のコンテンツ戦略局と制作局が企画・主導する形で「忖度なし?長嶋一茂の正直通販!」や「じっくり聞いタロウ~通販王決定戦」「おかわりタクうま」などの情報番組型通販番組を年間15回程度放送し、1億6000万円程度の売り上げを上げたこと。また、通販サイトや実店舗で販売するテレビ東京の番組関連グッズの売れ行きなども好調でトータルでは増収となった。

 前期の売れ行き上位商品は運動補助ボール「東急スポーツオアシス スタイリーボール」、「ファイテン 磁気治療腰サポーター」、窓に張り付け日差しを防ぐ「遮熱クールアップ」、マットレス「エアウィーヴスマート」、除湿剤「調湿木炭出雲屋炭八」など。これらの売れ筋は当期から発売した新商品の「ファイテン磁気治療腰サポーター」以外は以前から販売を行っており、前年も売れ筋上位商品だったが、当期の売り上げはいずれも2桁増となり、好調な売れ行きとなった。このほか、昨年7月に発売したマジェスティゴルフと共同開発したゴルフドライバー「DANGAN7MAX」やスマートフォンを充電できる手回し充電機能が付いたラジオ「エコラジ7」などの新商品の売れ行きも伸びた。

 前期の営業利益は原材料高騰や食品通販におけるネット販売への先行投資などによって同14・2%減の4億9700万円だった。

 今期の出足となる4、5月度の売上高は雑貨、食品とも前年実績および計画値を上回り、堅調に推移しているという。4月からは前期まで月―木だった午前の主力枠「なないろ日和!」を金曜日(※前期まで別の通販枠「7スタい~な」を放送)も放送することにし主力枠の放送時間を増やしたほか、前期から本格化しているテレビ東京本体が主導する情報番組型通販番組を今期も引き続き展開を強化して「売り場」を広げる。また、「虎ノ門市場」において「LINE」などSNSを活用したECでの販促施策を強化するなどで売り上げを拡大し、一方で番組制作の効率化や通販カタログ送付を別送から商品同梱にするなどの経費削減策を進める。今期の業績は売上高が前年比6%強程度(約120億円)の増収、営業利益は同60%強程度(約8億円)の増益を目指すとしている。

モール出店休止や特番苦戦で微減 

 日本テレビ放送網の前期の通販売上高は前年比2・9%減の78億7500万円だった。昨年4月から主力枠が紐づく情報番組が刷新した影響で出足は苦戦したものの夏以降は持ち直し、以降は売れ筋商品を軸に同枠の売上高は好調に推移したものの、基幹システムの入れ替えの影響で仮想モールの出店を5月上旬まで一時休止したことが影響、また、放送分数減少に伴い、深夜枠が苦戦したほか、特番も振るわず、売上高は前年実績を下回った。

 期初の番組改編で月~木午前帯の主力の通販枠が紐づく午前帯の情報番組をリニューアルしたことで通販枠が情報番組内のコーナーとしての展開ではなく、当該番組後の10分尺の独立番組「日テレポシュレ 三ツ星モール」となったことで視聴習慣などの影響から出足の売り上げは伸び悩んだものの、前番組の視聴者をつかむため、番組冒頭に出演者同士での掛け合いを行ったり、紹介商品の特徴や特典、価格などの訴求点を強調するなど演出面の工夫が奏功。前年からのヒット商品で当期は前年実績よりも2割程度さらに売れ行きを伸ばした調理器具「レンジメートプロ」のほか、まとめ買いを促すなどの演出や販促策で前年よりも売り上げを伸ばした冷凍ズワイガニや冷凍ホタテなどの海鮮品、脱毛器「シャインエステボーテ3」、老眼鏡「ピントグラス」などのほか、昨年6月から日テレグループの限定品としてグループの日テレ7やBS日テレ、また、系列局の読売テレビの通販子会社のセンテンスとともに発売したコードレス掃除機「ダイソン マイクロ モーターバー」が売れ行きを伸ばし、主力午前枠の売上高は前年実績を2割程度、上回って推移した。

 一方で秋口に海外で開催されたスポーツの国際大会の編成が時差で深夜帯になったことなど編成上の都合で早朝・深夜の通販枠の放送分数が前年比で約1割減となった影響などで同枠の売上高が前年比で8%程度下回った。また、年3回行った特番は昨年7月放送分では季節商品が振るわず売上高が同4割減と苦戦、同11月放送分についても前年実績を下回った(※前年は135分尺の番組をしたが当期は60分尺と55分尺の2つの番組を別日に放送。売上比較は前年番組と当期2番組の合計値)ことから特番全体でも同2割程度の減収だった。BS日テレで放送するインフォマーシャルも計画的に放送枠を減らしているため同枠の売上高は前年実績を下回った。

 ネット販売売上高も日本テレビの通販サイト「日テレ屋web」は人気番組のイベントと連動した関連グッズなどの売れ行きが好調で売上高は前年比で1割増となったものの、「楽天市場」や「ヤフーショッピング」など各仮想モール経由の売上高は前期末に実施した基幹システムの入れ替えのために3月から5月上旬にかけて各出店店舗を休止、同期間中の売り上げがなくなったことで仮想モール経由のネット販売売上高は同25%減となったことなどで、トータルでは通期で減収となった。

 利益を表す「収支」は同1・3%増の3億7700万円。基幹システムの入れ替えや昨年4月から受注業務の委託先変更などで一定の期間、重複業務が発生したことによるコスト増や同じく4月から配送委託先を変更して配送委託費が増えた影響で上期時点では前年同期比で3割減で推移したものの、重複業務のよるコストアップ状態が上期までに解消し、コスト削減効果が出てきたことや、展開商品などを絞るなどして商品紹介映像の制作を効率化するなど番組製作費の圧縮などを行ったことなどが奏功した。

 今期の出足は4、5月の月次売上高は全体的に芳しくないようだがジュエリーなど一部の商品の売れ行きは堅調のよう。今期も引き続き、売れ筋商品を軸に主力の午前枠の売り上げを伸ばしていくほか、深夜枠などについても番組の内容・演出の工夫などで枠効率を高める。

 さらに前期から開始した日テレ7やBS日テレなどグループ会社の通販部門と連携した商品開発や通販番組の展開強化、今年1月に放送した系列局6社が参加した各局の地元のおすすめ食品を紹介・販売する通販特番「O‐1グルメ大賞」や6月に放送した系列局の読売テレビの通販子会社のセンテンスと共同でそれぞれの売れ筋商品を紹介する通販特番「東vs西爆売れショッピング」など系列局と協力した取り組みを広げ、番組制作の効率化のほか、新鮮味のある番組・商品の企画・開発を強化していく。

 また、ネット販売についても前年の減収要因となったシステム刷新による仮想モールへの出店休止が当期はないことや5月から新たに「Q0010」に新たに出店したことなどもあり、前年実績を上回って推移する見通しで今期の売上高は85億円程度、収支は5億円台を目指すとする。

 
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