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「売り手市場」が継続<主要通販各社の2024年新卒採用> リアルも含めて学生にアプローチ

2024年 3月 7日 12:00

 本紙が2月下旬に実施した「主要通販各社の新卒採用調査」によると、2024年春に入社予定の新入社員への採用活動に関して、前年度に引き続き学生側が有利となる「売り手」市場を感じていた企業が多いことが分かった。コロナも落ち着きを見せる中、オンラインだけでなくリアルも併用した採用活動が再開されるなど学生へのアプローチが積極化している。主要通販実施企業各社の新卒採用活動を見てみる。
 












 本紙が主要な通販実施企業約20社を対象に調査を実施し、有効回答を得られた各社の今春の新卒採用の状況は別表の通りとなった。前年との採用人数の比較について増減数を回答した企業の内、「増加」したのが5社、「減少」したのが9社となった。また、「前年と同数」とした企業は1社もなかった。

 採用人数の前年比を見てみると、増減数のほとんどが2~3人程度となっており、おおむね前年度と同じ規模で採用計画を進めたことが窺えた。最も増加幅が大きかったのはZOZOで、前年比16人増。回答企業の中では唯一の二桁増となっている。同5人増のQVCジャパンは「人事部門内で新卒採用担当が増えたことに加え、2023年度に実施していなかったインターンシップや大学説明会を行ったことが大きいと思う」とした。

 一方で減少幅が大きかったのはベルーナで同15人減。「定着率の向上、業績を加味した採用数」としている。また、同7人減の日本生活協同組合連合会は「内定辞退率の増加(全国転勤、休日数などを理由とした辞退者が増加)」と回答。

 また、男女比率に関しては回答企業12社中、11社が男性よりも女性の入社人数が多くなり、男性の方が多かったのは1社のみだった。

 そして、次年度の2025年度採用計画については、回答企業11社のうちほとんどで前年度並みを予定。その内、前年度よりも8人増加予定のファンケルは「研究所の組織編成に伴い、各研究所での募集人数が若干名増えたため」、同約5人増予定の新日本製薬は「経営戦略から人財戦略を検討した結果」、同2~3倍程度の増加予定のジュピターショップチャンネルは「当年度事業計画に合わせた採用人員計画のため」、同6~8人程度減となるゴルフダイジェスト・オンラインは「中期経営計画に基づく採用戦略変更のため」としている。

複数チャネルで学生に接触

 採用告知に当たって活用した手段(複数回答)としては、最も多かったものが「マイナビ」や「リクナビ」をはじめとした「ナビサイト」。次いで、「自社ホームページ」となっている。さらに、スカウト型採用である「ダイレクト求人」も上位に挙げられており、「インターンシップ」や「SNS」、「合同説明会」といった定番の手法も続いている。少数回答としては、「採用動画(メッセージ性のある動画)」や「オフィスツアー」といったものも見られた。

 おおむねどの企業も共通して、4~5種類以上の告知チャネルを活用。従来までのようにウェブで大きく網を張って一定の母数を形成してから徐々に絞り込むという作業だけではなく、リアルを通じたイベントや直接対面のスカウトなども組み合わせて、より高い確率で意中の人材にアプローチできるような手法がトレンドになりつつあるようだ。

 特に効果が高かった手法やその流れについて、主な企業の回答としては「マイナビ等の媒体にて集客し、自社インターンシップに誘致、そこからのつなぎ止め施策として自社座談会イベントを継続的に行い、選考に移行させるパターンが有効」(アスクル)、「学生世代への当社の知名度が低くなっていることもあり、ナビや外部イベントなどでの流入が厳しい状況にあるため、スカウト(DR)で接触を持ち、その後自社イベントで当社のことを知ってもらい興味をもってもらうという流れが効果的と考えている」(DINOSCORPORATION)、「幅広い学生への認知拡大効果が高いものはマイナビ等の外部媒体への求人掲載。志望度の高い学生の獲得効果が高いものは自社採用HP・自社サービス上での採用広告掲載」(ZOZO)、「ナビサイトは母集団の数が一番多く、自社マッチ度が高い。22年6月より掲載を開始し、通常掲載に加え優先表示のオプションも利用」(ゴルフダイジェスト・オンライン)、「大学主催の説明会は、例えば当社オフィスと地理的距離の近い大学でオンライン説明会を実施したケースでは、後に当社開催の対面イベントへ誘導しやすかった」(QVCジャパン)といった声が見られた。

6月めどに内定

 採用活動の時期については、多くの企業が6月前後に内定を出すことをゴールにスケジュールが進行している。前年と比べて採用活動時期の前倒しや後ろ倒しをしたとする企業は少なく、例年通りのスケジュールであるとの回答だった。

 しかしながら、採用活動の開始時期は2極化しており、前年度の22年夏ごろから採用告知を開始していた企業と、年明けの23年2月ごろから開始していた企業とに分かれた。また、選考期間としては、3カ月間の短期で面接から内定までを行うとするケースがある一方、インターンシップも含めて半年以上かけながら長い時間で学生の個性や能力を見極めようとしているケースもいくつかあった。

 採用の流れとしては、おおむね説明会から始まり、書類選考、グループ面接、1次、2次面接、最終面接を軸としている。

 また、コロナ禍となってからは、ほぼすべての企業が何らかの形でオンラインを取り入れていると回答。会社説明会や初期面接など選考過程の早い段階で取り入れるようなケースに加え、社員交流会、内定出し、内定式などの場面でもオンラインの活用が見られた。

 「説明会から内定まで基本的にはオンラインを活用」(新日本製薬)、「最終面接以外の説明会、グループ面接、Web適性検査、部門面接は1部門を除きすべてオンラインで実施。内定者のうち1名は九州在住だが、部門面接+最終面接のみの来社で無理なく選考に参加してもらえた。内定者懇親会も2度、オンラインで実施した」(QVCジャパン)、「最終面接まではオンラインで実施。企業説明会等もオンラインで実施することで参加人数増加に繋げている」(日本生活協同組合連合会)、「すべてオンライン面接で実施。課題は、対面時と比較して相手の反応が感じ取りにくくなる。通信機器の不備や通信環境の不都合などで、面接時間ややりとりに影響が出てしまう。オフィスなどの『場』から感じ取れる社風などが伝わりにくい。利点はスケジュール都合での面接辞退率が減少した(学生の移動時間がなくなったため)。対面よりも学生にリラックスして参加してもらえる。1日の面接回数が増やせる(合間の準備時間を削れるため)。遠方の学生の参加ハードルが下がった」(ZOZO)としている。一方で、「選考はすべて対面で実施。最初の接点である自社イベントのみオンラインで実施している。まず当社を知ってもらう段階ではオンラインで気軽に参加できる形で実施するようにしている」(DINOS CORPORATION)との声もあった。


学生は「働き方」重視、勤務地・待遇・テレワークなど

 今年春入社の新卒採用市場について、企業が感じた印象を聞いてみた。本項目の質問に回答した10社の内9社が「売り手市場(学生側が優位)」と回答し、「買い手市場(企業側が優位)」と回答した企業は1社もなかった。「どちらとも言えない」は1社となっている。前回調査では回答10社の内、8社が「売り手」とし、「買い手」は1社もなかった。前年に続き、学生側が有利な売り手市場の傾向が見られた。

 「売り手」とした主な回答理由では、「選考開始までの母集団から、選考開始後の移行率が23卒と比較して下がっており、選考途中の離脱(辞退)、内定出し後の辞退率は例年よりも高かったため」(アスクル)、「全体応募者数は減少傾向にあるものの、選考辞退数及び内定辞退数も増えたため」(ファンケル)、「他社内定による選考辞退者や複数内定を保有する学生も多くいたため」(ジュピターショップチャンネル)、「学生自体が企業を絞り込んで選考を進む傾向がより強くなり、最初の接触ができていないとそもそも検討の土台に上がれない状態であること」(DINOS CORPORATION)、「他社の採用強化、採用人数拡大などにより、優秀学生の採用の早期化、採用活動全般の長期化がされた印象」(ベルーナ)。「複数内定者が多かった。また例年であれば本解禁後(4年生の4~6月期)も一定の内定出し・内定承諾が出ていたものの、24卒はそこまで多くはなかった」(ゴルフダイジェスト・オンライン)とする回答があった。

 そのほかにも、「部署によって異なる。例えば業務内容が分かりやすく応募が集まりやすい部門は買い手市場だと感じた一方、母集団形成がしづらい部門は売り手市場だと思った。ただ、全体のエントリー数は想定より少なく、新卒採用全体的にみると売り手市場だと思う」(QVCジャパン)、「複数の内定を得る学生とそうでない学生は、今年に限らず常に起きていることと理解している。また、その割合が大きく変化している感覚はない」(新日本製薬)との声があった。

学生の多くが「安定性志向」

 就職活動を行っている学生たちは、どのような項目を重視して企業選びを行ったのか。採用活動を通じて感じた企業側の主な見解としては、「企業の安定性(財務状況、継続性、福利厚生)、自己成長出来る環境(働き方)」(ベルーナ)、「理念・方針への共感や社風がマッチするかを重視している学生が例年通り最も多かった一方で、企業の成長性や、柔軟な働き方(フレックスタイム制や在宅勤務、福利厚生等)ができるかどうかを重視する学生も増えたように感じた」(ファンケル)、「勤務地・休日・給与など、仕事内容以上に働き方や制度に目を向けている傾向がある」(日本生活協同組合連合会)、「ワークライフバランス、裁量権、ジョブ型雇用」(マガシーク)、「自分が活躍できる会社かどうか、事業として成長性があるかどうか」(スクロール)、「働きやすさ、成長実感が得られるかどうか」(アスクル)、「働きやすさ、やりがい、オフィス環境の充実、地元で働きたいなど」(QVCジャパン)、「信頼のおける企業か否か(社歴、売り上げ、社員など)。社会貢献性」(新日本製薬)、「社会貢献、具体的な仕事内容に加えて、働き方について」(ジュピターショップチャンネル)、「ビジネス部門では、企業理念や方針に共感できるか、自分らしく楽しく働けるか、好きなことに携われるか、会社や人の雰囲気があうか(人や社会の役に立てる、新しいチャレンジをしている)、自分の経験を活かせるか、自然体な自分で面接に参加できたか。開発部門では、成長できる環境か、優秀な人と一緒に働くことができるか、社風やカルチャーと合うか、企業理念や方針に共感できるか、希望の仕事ができるか、制度や待遇等に魅力を感じるか」(ZOZO)、「昨年より会社・社員の雰囲気を重視している傾向があった。昨年に引き続き自分のやりたいことができるかという点も重視している」(DINOS CORPORATION)、「ネームバリュー(優秀層は大手に決定)、自分と関わりが深い企業(昔から○○社のゴルフクラブを使っていて、そこに入社決定)、給与・福利厚生」(ゴルフダイジェスト・オンライン)といった回答があった。


 
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