春先にコロナが5類へと移行した2023年は、通販業界にとってリアルへの消費回帰など逆風が見られる1年となった。追い打ちをかけるように、急激な円安や人件費の高騰など、コスト増も加速。通販を支える物流においても、運賃値上げの動きが大きく進んだ。本紙が行ったアンケートでも、前年に続いてコスト増に関するキーワードが上位にランクイン。各社にとって厳しい年であったことが窺えた。今年1年間に通販業界で起きた、主な出来事を読者と共に振り返ってみる。
「2023年の通販業界10大ニュース」は、今年1年間に通販業界で起きた主な出来事やニュース、トレンドなどを本紙編集部が20項目程度に絞り込み、アンケートなどを受けて独自にランキング化したもの。アンケートでは今後の通販市場の動向において、重要だと思われる項目から順番に3つを受け付けており、合わせてその理由も聞いている。
生活用品の値上げで節約志向に
1位を獲得したのは「商品値上げ、相次ぐ」で72ポイント。アンケート回答の内容を見てみると、「商品が全般的に値上げしているため、ブランドや最新性よりもお手頃な商品が選ばれる傾向にあり、その動向が売り上げに響いている」、「弊社の商品でも影響が出ている部分があるため」、「衣食住でどこに優先的にお金を使い、どこを節約するかが変わってくる可能性」、「値上げは仕方がないが、消費者の動向は冷え込んでいる」、「自社の商品値上げだけでなく、各種生活関連商品の値上げが続くことで、一般消費者の節約志向が高まっている」、「適正価格が浸透することで、各社が適切に投資をできる環境が整うことでサービスごとの特徴をより先鋭化できる可能性が広がるため」、「食品を中心に値上げが相次ぐ中で給与は上がらず、全般的に消費マインドが低下・衰退している。購買意欲を高める訴求方法や、納得感のあるプライシングがますます重要になるのではないか」といった意見が寄せられた。
見えない影響に不安の声も
2位となったのが「『物流の2024年問題』目前へ」で69ポイント。アンケート回答では、「まだ消費者の意識として通販で送料がかかることを容認するレベルには達しておらず、通販事業者のコストに直接影響すると思われる」、「具体的にどのような影響が出るかは手探りの状況であり、不安ばかりが募るが、発生する事象に柔軟に対応していくしかない」、「重要な経営リスクとして危機意識を持って取り組んでいる。現在、対応可能なあらゆる策を検討し、内容を精査している」、「通販事業において物流は切っては切れない問題。内部の仕組みも外部の対応も変更していかなければならず、またコスト削減にもつながり、長く安定したサービスを提供していくためにも、常に取り組んでいかなければならない点だと思う」、「損益を圧迫。運送会社の選定激化」、「顧客体験の一部である”配送”に影響が出ることは通販業界全体にとって不利益になるし、さらなる物流コストの上昇を懸念している」といった意見が見られた。
物流関連の話題が上位に続く
3位は「宅配運賃、物流各社で値上げ」で57ポイント。2位に続き、こちらも物流関連の話題がランクイン。主な回答では「お客様への商品お届けのためには欠かせないパートナーなので、対応せざるを得ないが利益を圧迫する」、「通販として顧客へ商品を届ける費用が変わり、収益に大きな影響を及ぼす可能性がある」、「コストに直接関係してくる」、「原材料費でも値上げが続く中、宅配運賃も値上げが続くと各経費の効率化を続けても厳しい状況になってくる」、「事業への影響が最も大きく、さらに今後大きな動きが予測される」、「現在、送料無料で運営しているため、弊社にとって送料の値上げは大きなダメージ」といった回答が寄せられた。
送料無料表示を巡る動きに注目
4位は「政府、送料無料表示の見直しへ」で、34ポイント。こちらも引き続き、送料に関する話題となった。「実際に発生する費用を当社が負担することで顧客サービスの一環として(送料無料を)実施してきている。今後も継続したいので、表示方法を工夫しなければならない」、「表示方法の決定内容次第で現状の表現方法、販売方法に影響が出る可能性が考えられる」、「配送コストに対する顧客の意識変革につながることが期待されるため」、「送料無料で運営してきたので、現在は『送料込み』表示に変更している」、「『送料無料表示』というのは実質的には商品代金に含まれているものであり、表現を置き換えたら実態がどうにかなるわけではない。代金が抑えられているとすれば、それは企業努力の結果なのになぜ政府が規制しようとするのか。パフォーマンスに過ぎない」との回答があった。
期待が高まる通販のAI活用
5位は「ECでのAI活用進む」で29ポイント。サービスの向上が期待できる前向きな話題として唯一のランクインとなった。主な回答は、「チャットボット、レコメンドなど活用の精度や幅は広げることができると考える」、「パーソナライズ化が進むことで、買い物体験に求められる基準が大きく変わると考えられるため」、「AI導入で大幅な業務の効率化が図れる半面、情報漏洩などのリスクを懸念している。今後は膨大なデータ量を扱う大手モール企業との格差がますます拡大するのではないか。また、ブログやSNSなどのコンテンツ作成がスタッフの負担になっていたが、AIによる自動生成で大幅な生産性向上につながった。今後の課題はプロンプトの精度を高め、発信内容をよりブラッシュアップしていくこと」という声が聞かれている。
6位は「長引く猛暑で季節商材不振」。主な回答は「アパレルにおいては気温、季節とは切っても切れない関係で、この気温の変化の流れをくみとりながら商材や仕入れ方も変えていかなければならないことは、事業全体への影響が大きいため、重要と考えている」、「春秋が短くなり、季節の2極化が進めば、顧客の購買行動が大きく変わる可能性がある」。7位は「改正特商法が施行」。主な回答は「電話勧誘販売の適用が拡大され、クロスセルやアップセルを実施することが煩雑となった」、「消費者庁と企業側の認識のズレも大きく、業界としての対話が重要と考える」、「クロスセルやアップセルが電話勧誘販売となると、エントリー価格で新規を獲得し、F2転換を図ったり、LTV向上につなげたりする従来の顧客育成戦略そのものに影響が生じる」。
8位は「新型コロナ、5類移行」。主な回答は、「通販商品の購入動向も大きく異なってきているため、その動向にあった商品選定やプロモーションが重要になっている」、「経済活動の正常化、海外からの訪日客の増加などに期待している」。9位は「通販企業の個人情報流出、今年も」。主な回答は「個人の顧客を扱う会社として、十分に注意して行動をしていかなければならない。情報が流出すると会社の損失が過大である」、「通販事業への顧客の不信感につながる。また、その対応にはコストもかかり、非常に悩ましい」。
10位は「ステマ規制開始」。主な回答は、「SNS等を利用したプロモーションは通販事業者としては重要な販促手法だが、規制と取り締まりが消費者庁や警察自体が行うよりも、ネット利用者から声が出るほうが早く、また、インフルエンサーやタレントにとっては、この規制違反によって社会的信用を失うため」、「今後どのような運用が行われるか気になるため」。
なお、トップ10入りは逃したものの、次点には「ヤフーショッピング、失速」がランクイン。主な回答は「ヤフーは『出店料無料』で店舗を集めたはいいものの、質の低い店舗が大量に流入したことが足かせになっているのではないか。ポイントが付かないとなると仮想モールとしてのアピールポイントに乏しく、未来はない。とはいえ、ヤフーが衰退するとEC事業者、ひいては消費者にとっては選択肢が狭まるわけで、それは良くないこと。ぜひ頑張ってもらいたい」、「戦略の変更は致し方ないが、力を入れてきた売り場の売れ行きが急に下がるのは死活問題で、モール運営者としての信用問題だと思う」。
全体的に値上げや物流課題、企業の不祥事などネガティブな話題が多く挙がっており、通販業界にとっては試練の年となった。2024年はどこまで巻き返しを図れるか、業界の底力が試される1年となりそうだ。
「2023年の通販業界10大ニュース」は、今年1年間に通販業界で起きた主な出来事やニュース、トレンドなどを本紙編集部が20項目程度に絞り込み、アンケートなどを受けて独自にランキング化したもの。アンケートでは今後の通販市場の動向において、重要だと思われる項目から順番に3つを受け付けており、合わせてその理由も聞いている。
生活用品の値上げで節約志向に
1位を獲得したのは「商品値上げ、相次ぐ」で72ポイント。アンケート回答の内容を見てみると、「商品が全般的に値上げしているため、ブランドや最新性よりもお手頃な商品が選ばれる傾向にあり、その動向が売り上げに響いている」、「弊社の商品でも影響が出ている部分があるため」、「衣食住でどこに優先的にお金を使い、どこを節約するかが変わってくる可能性」、「値上げは仕方がないが、消費者の動向は冷え込んでいる」、「自社の商品値上げだけでなく、各種生活関連商品の値上げが続くことで、一般消費者の節約志向が高まっている」、「適正価格が浸透することで、各社が適切に投資をできる環境が整うことでサービスごとの特徴をより先鋭化できる可能性が広がるため」、「食品を中心に値上げが相次ぐ中で給与は上がらず、全般的に消費マインドが低下・衰退している。購買意欲を高める訴求方法や、納得感のあるプライシングがますます重要になるのではないか」といった意見が寄せられた。
見えない影響に不安の声も
2位となったのが「『物流の2024年問題』目前へ」で69ポイント。アンケート回答では、「まだ消費者の意識として通販で送料がかかることを容認するレベルには達しておらず、通販事業者のコストに直接影響すると思われる」、「具体的にどのような影響が出るかは手探りの状況であり、不安ばかりが募るが、発生する事象に柔軟に対応していくしかない」、「重要な経営リスクとして危機意識を持って取り組んでいる。現在、対応可能なあらゆる策を検討し、内容を精査している」、「通販事業において物流は切っては切れない問題。内部の仕組みも外部の対応も変更していかなければならず、またコスト削減にもつながり、長く安定したサービスを提供していくためにも、常に取り組んでいかなければならない点だと思う」、「損益を圧迫。運送会社の選定激化」、「顧客体験の一部である”配送”に影響が出ることは通販業界全体にとって不利益になるし、さらなる物流コストの上昇を懸念している」といった意見が見られた。
物流関連の話題が上位に続く
3位は「宅配運賃、物流各社で値上げ」で57ポイント。2位に続き、こちらも物流関連の話題がランクイン。主な回答では「お客様への商品お届けのためには欠かせないパートナーなので、対応せざるを得ないが利益を圧迫する」、「通販として顧客へ商品を届ける費用が変わり、収益に大きな影響を及ぼす可能性がある」、「コストに直接関係してくる」、「原材料費でも値上げが続く中、宅配運賃も値上げが続くと各経費の効率化を続けても厳しい状況になってくる」、「事業への影響が最も大きく、さらに今後大きな動きが予測される」、「現在、送料無料で運営しているため、弊社にとって送料の値上げは大きなダメージ」といった回答が寄せられた。
送料無料表示を巡る動きに注目
4位は「政府、送料無料表示の見直しへ」で、34ポイント。こちらも引き続き、送料に関する話題となった。「実際に発生する費用を当社が負担することで顧客サービスの一環として(送料無料を)実施してきている。今後も継続したいので、表示方法を工夫しなければならない」、「表示方法の決定内容次第で現状の表現方法、販売方法に影響が出る可能性が考えられる」、「配送コストに対する顧客の意識変革につながることが期待されるため」、「送料無料で運営してきたので、現在は『送料込み』表示に変更している」、「『送料無料表示』というのは実質的には商品代金に含まれているものであり、表現を置き換えたら実態がどうにかなるわけではない。代金が抑えられているとすれば、それは企業努力の結果なのになぜ政府が規制しようとするのか。パフォーマンスに過ぎない」との回答があった。
期待が高まる通販のAI活用
5位は「ECでのAI活用進む」で29ポイント。サービスの向上が期待できる前向きな話題として唯一のランクインとなった。主な回答は、「チャットボット、レコメンドなど活用の精度や幅は広げることができると考える」、「パーソナライズ化が進むことで、買い物体験に求められる基準が大きく変わると考えられるため」、「AI導入で大幅な業務の効率化が図れる半面、情報漏洩などのリスクを懸念している。今後は膨大なデータ量を扱う大手モール企業との格差がますます拡大するのではないか。また、ブログやSNSなどのコンテンツ作成がスタッフの負担になっていたが、AIによる自動生成で大幅な生産性向上につながった。今後の課題はプロンプトの精度を高め、発信内容をよりブラッシュアップしていくこと」という声が聞かれている。
6位は「長引く猛暑で季節商材不振」。主な回答は「アパレルにおいては気温、季節とは切っても切れない関係で、この気温の変化の流れをくみとりながら商材や仕入れ方も変えていかなければならないことは、事業全体への影響が大きいため、重要と考えている」、「春秋が短くなり、季節の2極化が進めば、顧客の購買行動が大きく変わる可能性がある」。7位は「改正特商法が施行」。主な回答は「電話勧誘販売の適用が拡大され、クロスセルやアップセルを実施することが煩雑となった」、「消費者庁と企業側の認識のズレも大きく、業界としての対話が重要と考える」、「クロスセルやアップセルが電話勧誘販売となると、エントリー価格で新規を獲得し、F2転換を図ったり、LTV向上につなげたりする従来の顧客育成戦略そのものに影響が生じる」。
8位は「新型コロナ、5類移行」。主な回答は、「通販商品の購入動向も大きく異なってきているため、その動向にあった商品選定やプロモーションが重要になっている」、「経済活動の正常化、海外からの訪日客の増加などに期待している」。9位は「通販企業の個人情報流出、今年も」。主な回答は「個人の顧客を扱う会社として、十分に注意して行動をしていかなければならない。情報が流出すると会社の損失が過大である」、「通販事業への顧客の不信感につながる。また、その対応にはコストもかかり、非常に悩ましい」。
10位は「ステマ規制開始」。主な回答は、「SNS等を利用したプロモーションは通販事業者としては重要な販促手法だが、規制と取り締まりが消費者庁や警察自体が行うよりも、ネット利用者から声が出るほうが早く、また、インフルエンサーやタレントにとっては、この規制違反によって社会的信用を失うため」、「今後どのような運用が行われるか気になるため」。
なお、トップ10入りは逃したものの、次点には「ヤフーショッピング、失速」がランクイン。主な回答は「ヤフーは『出店料無料』で店舗を集めたはいいものの、質の低い店舗が大量に流入したことが足かせになっているのではないか。ポイントが付かないとなると仮想モールとしてのアピールポイントに乏しく、未来はない。とはいえ、ヤフーが衰退するとEC事業者、ひいては消費者にとっては選択肢が狭まるわけで、それは良くないこと。ぜひ頑張ってもらいたい」、「戦略の変更は致し方ないが、力を入れてきた売り場の売れ行きが急に下がるのは死活問題で、モール運営者としての信用問題だと思う」。
全体的に値上げや物流課題、企業の不祥事などネガティブな話題が多く挙がっており、通販業界にとっては試練の年となった。2024年はどこまで巻き返しを図れるか、業界の底力が試される1年となりそうだ。