本紙姉妹誌の「月刊ネット販売」で実施した売上高調査「ネット販売白書」では、2022年度のネット販売実施企業上位300社の合計売上高は7兆7888億円となり、前年調査の7兆144億円と比べて11・0%増加した。コロナ禍の巣ごもり消費に沸いた前年度からは少し落ち着きが見られている。首位は前回に引き続き、アマゾンジャパンとなり、2位以下を大きく引き離した。(
9月25日発売の「月刊ネット販売」10月号「第23回ネット販売白書」に300社の売上高ランキングと商材別市場解説を掲載)
300社の内、上表では上位30社までを掲載している。30社の中で増収となったのが13社でその内6社が2桁増収となった(前年は17社の増収で、その内7社が2桁増収)。一方で減収の企業も10社(前年は5社の減収)となり。苦戦しているところも目立った。
ランキングのトップ3を見ていくと、首位のアマゾンジャパンは、前回の21年度の伸び率である16%増を大きく上回る、前年比26・5%増を記録。売上高は3兆2097億円となり、2位以下に圧倒的な大差をつけた。引き続き、直販の強化と並行して直販よりも効率的に流通総額や売り上げを上げることができる同社の仮想モール事業「マーケットプレイス」への出店誘致に注力。特に中小事業者を出店に誘導するテレビCM放映などを前年から続け、積極化して新規出店者の獲得を推進した。
また、前回に続いて2位となったのはヨドバシカメラで、同1・8%減の2099億円。2期連続で減収だった。21年3月期はコロナ禍を受けて、前年比60%増の2200億円超と大きく伸びていたが、反動があったようだ。
3位は衣料品ジャンルからZOZOがランクイン。前期は主力のゾゾタウン本店とヤフー店、BtoB事業の商品取扱高合計で初めて5000億円を突破した。引き続きゾゾタウン事業が好調に推移しており、5月、9月、11月にセールイベントを実施したほか、夏と冬の本セール開始期間にはテレビCMを放送して集客を強化するなど販売力最大化に努めた。また、多様化するユーザーニーズに応えられる幅広いジャンルのブランド誘致を進めた結果、ブランド各社の実店舗が好調な中でもゾゾタウンへの在庫供給は増加した。
総合・日用品は反動減で苦戦
ジャンル別に見ると、「総合・日用品」では、アマゾンが2桁増を見せた一方、全体的にコロナ禍による前年の巣ごもり需要増への反動減があったほか、原材料や燃料の高騰による仕入れコスト増など様々な影響を受けて各社とも苦戦を強いられたようだ。上位企業では、これまで成長を続けていたアスクルが同15%減と低調。グループ会社のヤフーが展開するポイント増倍キャンペーンについて、ヤフー側の利益重視を軸とした戦略転換により、キャンペーンの規模やポイント還元幅を抑制した影響が直撃し、前年実績を下回る結果となった。
衣料品は有店舗回帰傾向も
「衣料品」では、コロナ禍を経て、有店舗アパレルの存在感は一段と高まっている。一方で、ファッション専業のECモールにおいても、消費者のデジタルシフトが定着したこともあってゾゾを中心に業績を伸ばしている。有店舗アパレルでは、消費者のリアル回帰の流れから実店舗の回復が顕著で、EC化率は弱含んでいるものの、実店舗とECの相互利用を促すところが見られている。
主だったところでは、ユニクロが同3・1%増の1309億円となった。EC化率自体は16・2%と高くないが、昨今ではライブコマースを強化しており、「ユニクロライブステーション」の累計視聴者数は1000万人超になったとも言われている。
化粧品は上位30社から漏れる
「化粧品」ジャンルについては、上位30位に入った企業は無かったものの、コロナ禍の化粧品市場では、スキンケア品を中心とする通販企業が堅調に推移した。
主な企業ではファンケルが、「ファンケル化粧品」で主力スキンケアは好調だったものの、メイク品が低調だった。グループのアテニアは、越境ECを中心に好調に推移。また、オルビスは、ここ数年、「価格」訴求から「価値」訴求への転換など戦略的に顧客の絞り込みを進めている。スマートフォンアプリを軸とするCRM戦略の展開で顧客の囲い込みが進んでおり、今期(23年12月期)は、メイク関連の買い回りが減少するなど、スキンケア以外の商品購入に課題を残すものの、顧客数や売り上げが増加に転じるなど復調の兆しが見える。グループのディセンシア(同)はプレステージブランドとしてブランディングを強化し、リピート転換率の向上や解約率が低下を図るが、低迷が続いている。
一方、三強の一角であるディーエイチシー(=DHC)は22年11月、オリックスが創業者の吉田嘉明氏から株式の過半を取得して買収。経営体制も刷新されており、今後の動向が注目される。
健食はECへのシフトが鮮明に
健康食品は、EC市場へのシフトが鮮明となっている。コロナ禍での健康志向の高まりを受け、市場全体は堅調に推移。一方、かつては単品訴求による投下資本の集中で急成長を遂げる企業が存在したが、競争環境の激化を受けて、獲得効率の悪化、これに伴う新規獲得、リピート育成の課題が浮上している。
市場は、「紙(カタログ)・テレビ」を活用する大手通販のECシフト、ECを主軸に対応する進行企業が二分する。上位企業の多くは、機能性表示食品制度の導入を受け、ここ数年で、研究開発力に強みを持つメーカー系のECが台頭してきている。
家電も巣ごもりで反動減に
「家電」では、近年はコロナ禍を受けた巣ごもり需要を受けて大きく売り上げを伸ばした企業が目立っていたが、コロナ特需が落ち着いてからは反動を受けた企業が少なくなかった。22年度に関しても同様の傾向が見られている。
ヨドバシカメラに次ぐ企業では、ヤマダホールディングスが自社サイト刷新などの奏功により、通販売上高が1500億円を超えた。23年2月には、群馬県高崎市にEC購入商品の受け取りを可能とするウェブとリアルの融合型店舗を開設している。
また、ビックカメラの通販売上高は、1434億円になった。前期から「収益認識に関する会計基準」を適用しており、旧基準の売上高は前期比3・6%減の1507億円となる。巣ごもり需要やテレワーク需要の反動減もあり、減収となった。
食品の首位はオイシックス
食品カテゴリーはEC専業だけでなく、GMSやスーパー、専門店などさまざまな業態が乱立。中でも、コロナ禍で大きく伸長した宅配需要は行動制限の緩和とともにコロナ前の水準に戻りつつあるようで、これに伴って増収企業の伸び率も鈍化傾向にあるようだ。
この分野で最も売り上げが大きかったオイシックス・ラ・大地は3年連続で1000億円を突破して増収となったものの、前回調査(13・5%増)からは伸び率が鈍化している。広告費を大規模に投下して顧客数は39万人に増えたが、コロナ禍の需要増加の反動や行動制限の緩和が影響し月間平均客単価が減少した。
また、イオンも上位にランクインしており、ネットスーパー対応店舗が353店舗中245店舗まで拡大するなどデジタルシフト戦略が加速。デリカや冷凍食品、値ごろ感のあるPBブランドといった品ぞろえの拡充や、ピックアップ拠点の拡大などを図り市場での存在感を示している。
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表の見方>
調査は2023年7~8月、通販・通教実施企業約1000社に対して行った。無回答の企業に関しては本誌や姉妹紙「週刊通販新聞」の取材データや公表資料、民間信用調査を基に本誌推定値(「※」)を算出。社名横の「受」は受注比率から算出した売上高を示す。
BtoCでもデジタルコンテンツやチケット販売、宿泊予約、金融などの非物販に加え、オフィス用品などBtoBも調査対象から外した。対象決算期‥「前期実績」は22年6月~23年5月に迎えた決算期、「今期見込み」は23年6月~24年5月に迎える決算期。増減率は前の期の数値が判明していない企業や変則決算のため比較できない場合については掲載していない。
表内項目の「EC化率」は原則、総通販売上高に占めるネット販売売上高の占有率。一部、総売上高に占めるネット販売売上高の占有率となる。表中、企業名横の「◎」は次の理由による。
(1)アマゾンは物販以外の事業を含むアマゾンの日本事業の総売上高(3)ZOZOは会計上の売上高で、商品取扱高(流通総額)は5443億1700万円(5)ビックカメラはコジマ、ソフマップを含むグループにおけるネット通販売上高の合計(8)ニトリホールディングスは13カ月の変則決算(13)アダストリアはモール経由を含めた国内の全EC売上高(15)ベイクルーズはモール経由を含めた全EC売上高の推定値⑯DCMホールディングスは22年3月に子会社となったエクスプライスとDCMのEC事業の合算値。なお、エクスプライスは10カ月分の算入で、また決算月を1月期に変更したエクスプライスの22年6月期売上高は678億7400万円だった(20)ワールドはグループのEC売上高合計(22)オンワードホールディングスはモール経由を含めた国内EC売上高(25)DINOS CORPORATIONのEC化率は総通販売上高から受注ベースのネット販売売上高を掛け合わせて算出した数字を掲載しており、売上ベースのEC化率とは異なる(26)パルはモール経由を含めた国内の全EC売上高(28)TSIホールディングスはモール経由を含めた国内の全EC売上高(30)マッシュホールディングスはウサギオンラインの売り上げを含む推定値
300社の内、上表では上位30社までを掲載している。30社の中で増収となったのが13社でその内6社が2桁増収となった(前年は17社の増収で、その内7社が2桁増収)。一方で減収の企業も10社(前年は5社の減収)となり。苦戦しているところも目立った。
ランキングのトップ3を見ていくと、首位のアマゾンジャパンは、前回の21年度の伸び率である16%増を大きく上回る、前年比26・5%増を記録。売上高は3兆2097億円となり、2位以下に圧倒的な大差をつけた。引き続き、直販の強化と並行して直販よりも効率的に流通総額や売り上げを上げることができる同社の仮想モール事業「マーケットプレイス」への出店誘致に注力。特に中小事業者を出店に誘導するテレビCM放映などを前年から続け、積極化して新規出店者の獲得を推進した。
また、前回に続いて2位となったのはヨドバシカメラで、同1・8%減の2099億円。2期連続で減収だった。21年3月期はコロナ禍を受けて、前年比60%増の2200億円超と大きく伸びていたが、反動があったようだ。
3位は衣料品ジャンルからZOZOがランクイン。前期は主力のゾゾタウン本店とヤフー店、BtoB事業の商品取扱高合計で初めて5000億円を突破した。引き続きゾゾタウン事業が好調に推移しており、5月、9月、11月にセールイベントを実施したほか、夏と冬の本セール開始期間にはテレビCMを放送して集客を強化するなど販売力最大化に努めた。また、多様化するユーザーニーズに応えられる幅広いジャンルのブランド誘致を進めた結果、ブランド各社の実店舗が好調な中でもゾゾタウンへの在庫供給は増加した。
総合・日用品は反動減で苦戦
ジャンル別に見ると、「総合・日用品」では、アマゾンが2桁増を見せた一方、全体的にコロナ禍による前年の巣ごもり需要増への反動減があったほか、原材料や燃料の高騰による仕入れコスト増など様々な影響を受けて各社とも苦戦を強いられたようだ。上位企業では、これまで成長を続けていたアスクルが同15%減と低調。グループ会社のヤフーが展開するポイント増倍キャンペーンについて、ヤフー側の利益重視を軸とした戦略転換により、キャンペーンの規模やポイント還元幅を抑制した影響が直撃し、前年実績を下回る結果となった。
衣料品は有店舗回帰傾向も
「衣料品」では、コロナ禍を経て、有店舗アパレルの存在感は一段と高まっている。一方で、ファッション専業のECモールにおいても、消費者のデジタルシフトが定着したこともあってゾゾを中心に業績を伸ばしている。有店舗アパレルでは、消費者のリアル回帰の流れから実店舗の回復が顕著で、EC化率は弱含んでいるものの、実店舗とECの相互利用を促すところが見られている。
主だったところでは、ユニクロが同3・1%増の1309億円となった。EC化率自体は16・2%と高くないが、昨今ではライブコマースを強化しており、「ユニクロライブステーション」の累計視聴者数は1000万人超になったとも言われている。
化粧品は上位30社から漏れる
「化粧品」ジャンルについては、上位30位に入った企業は無かったものの、コロナ禍の化粧品市場では、スキンケア品を中心とする通販企業が堅調に推移した。
主な企業ではファンケルが、「ファンケル化粧品」で主力スキンケアは好調だったものの、メイク品が低調だった。グループのアテニアは、越境ECを中心に好調に推移。また、オルビスは、ここ数年、「価格」訴求から「価値」訴求への転換など戦略的に顧客の絞り込みを進めている。スマートフォンアプリを軸とするCRM戦略の展開で顧客の囲い込みが進んでおり、今期(23年12月期)は、メイク関連の買い回りが減少するなど、スキンケア以外の商品購入に課題を残すものの、顧客数や売り上げが増加に転じるなど復調の兆しが見える。グループのディセンシア(同)はプレステージブランドとしてブランディングを強化し、リピート転換率の向上や解約率が低下を図るが、低迷が続いている。
一方、三強の一角であるディーエイチシー(=DHC)は22年11月、オリックスが創業者の吉田嘉明氏から株式の過半を取得して買収。経営体制も刷新されており、今後の動向が注目される。
健食はECへのシフトが鮮明に
健康食品は、EC市場へのシフトが鮮明となっている。コロナ禍での健康志向の高まりを受け、市場全体は堅調に推移。一方、かつては単品訴求による投下資本の集中で急成長を遂げる企業が存在したが、競争環境の激化を受けて、獲得効率の悪化、これに伴う新規獲得、リピート育成の課題が浮上している。
市場は、「紙(カタログ)・テレビ」を活用する大手通販のECシフト、ECを主軸に対応する進行企業が二分する。上位企業の多くは、機能性表示食品制度の導入を受け、ここ数年で、研究開発力に強みを持つメーカー系のECが台頭してきている。
家電も巣ごもりで反動減に
「家電」では、近年はコロナ禍を受けた巣ごもり需要を受けて大きく売り上げを伸ばした企業が目立っていたが、コロナ特需が落ち着いてからは反動を受けた企業が少なくなかった。22年度に関しても同様の傾向が見られている。
ヨドバシカメラに次ぐ企業では、ヤマダホールディングスが自社サイト刷新などの奏功により、通販売上高が1500億円を超えた。23年2月には、群馬県高崎市にEC購入商品の受け取りを可能とするウェブとリアルの融合型店舗を開設している。
また、ビックカメラの通販売上高は、1434億円になった。前期から「収益認識に関する会計基準」を適用しており、旧基準の売上高は前期比3・6%減の1507億円となる。巣ごもり需要やテレワーク需要の反動減もあり、減収となった。
食品の首位はオイシックス
食品カテゴリーはEC専業だけでなく、GMSやスーパー、専門店などさまざまな業態が乱立。中でも、コロナ禍で大きく伸長した宅配需要は行動制限の緩和とともにコロナ前の水準に戻りつつあるようで、これに伴って増収企業の伸び率も鈍化傾向にあるようだ。
この分野で最も売り上げが大きかったオイシックス・ラ・大地は3年連続で1000億円を突破して増収となったものの、前回調査(13・5%増)からは伸び率が鈍化している。広告費を大規模に投下して顧客数は39万人に増えたが、コロナ禍の需要増加の反動や行動制限の緩和が影響し月間平均客単価が減少した。
また、イオンも上位にランクインしており、ネットスーパー対応店舗が353店舗中245店舗まで拡大するなどデジタルシフト戦略が加速。デリカや冷凍食品、値ごろ感のあるPBブランドといった品ぞろえの拡充や、ピックアップ拠点の拡大などを図り市場での存在感を示している。
<表の見方>
調査は2023年7~8月、通販・通教実施企業約1000社に対して行った。無回答の企業に関しては本誌や姉妹紙「週刊通販新聞」の取材データや公表資料、民間信用調査を基に本誌推定値(「※」)を算出。社名横の「受」は受注比率から算出した売上高を示す。
BtoCでもデジタルコンテンツやチケット販売、宿泊予約、金融などの非物販に加え、オフィス用品などBtoBも調査対象から外した。対象決算期‥「前期実績」は22年6月~23年5月に迎えた決算期、「今期見込み」は23年6月~24年5月に迎える決算期。増減率は前の期の数値が判明していない企業や変則決算のため比較できない場合については掲載していない。
表内項目の「EC化率」は原則、総通販売上高に占めるネット販売売上高の占有率。一部、総売上高に占めるネット販売売上高の占有率となる。表中、企業名横の「◎」は次の理由による。
(1)アマゾンは物販以外の事業を含むアマゾンの日本事業の総売上高(3)ZOZOは会計上の売上高で、商品取扱高(流通総額)は5443億1700万円(5)ビックカメラはコジマ、ソフマップを含むグループにおけるネット通販売上高の合計(8)ニトリホールディングスは13カ月の変則決算(13)アダストリアはモール経由を含めた国内の全EC売上高(15)ベイクルーズはモール経由を含めた全EC売上高の推定値⑯DCMホールディングスは22年3月に子会社となったエクスプライスとDCMのEC事業の合算値。なお、エクスプライスは10カ月分の算入で、また決算月を1月期に変更したエクスプライスの22年6月期売上高は678億7400万円だった(20)ワールドはグループのEC売上高合計(22)オンワードホールディングスはモール経由を含めた国内EC売上高(25)DINOS CORPORATIONのEC化率は総通販売上高から受注ベースのネット販売売上高を掛け合わせて算出した数字を掲載しており、売上ベースのEC化率とは異なる(26)パルはモール経由を含めた国内の全EC売上高(28)TSIホールディングスはモール経由を含めた国内の全EC売上高(30)マッシュホールディングスはウサギオンラインの売り上げを含む推定値