本紙が2月下旬に実施した「主要通販各社の新卒採用調査」によると、2023年春に入社予定の新卒社員の採用数は、前年と比べて増加した企業が多い結果となった。採用活動自体については学生側が有利となる「売り手」市場を感じている企業が多かったようで、引き続き人材の獲得合戦は激しさを増している状況となった。主要通販実施企業各社の新卒採用活動の内容を見てみる。
本紙が主要な通販実施企業約20社を対象に調査を実施し、有効回答を得られた各社の今春の新卒採用の状況は別表の通りとなった。前年との採用人数の比較について増減数を回答した企業の内、「増加」したのが7社、「減少」したのが5社となった。また、「前年と同数」とした企業は2社だった。
採用人数の前年比を見てみると、増加した企業が多かったものの、そのほとんどが2~3人程度の微増の範囲であった。最も増加幅が大きかったのは新日本製薬で、前年比10人増。回答企業の中では唯一の二桁増となっており、「要員計画の結果」と回答している。
一方で減少幅が大きかったのはベルーナで同18人減。「定着率の向上」をその理由に挙げている。また、同9人減のファンケルは「内定承諾率の低下。1人当たりの内定社数が増加」と回答。同6人減となったジュピターショップチャンネルについては「採用予定人数減のため」と回答した。
また、男女比率に関しては回答企業12社中、7社が男性よりも女性の入社人数が多くなり、同数だったのは2社。残りの3社は女性よりも男性の方が多かった。
採用告知に当たって活用した手段(複数回答)としては、「自社サイト」が最も多く、次いで大手就活サイトの「マイナビ」となった。そのほか、「新卒紹介会社の活用」、「合同説明会」、「ダイレクトリクルーティング」も同数で上位となっているほか、「イベント参加(オンラインなども含む)」や「インターンシップ」なども見られた。また、「既存社員の紹介」や「学校からの紹介」などもあり、大きく網を張って大量の人数の中から探し出すということではなく、ある程度事前に人物データを揃えることができる学生に対して個別にアプローチするというケースも少なくなかった。
6月に内定のゴールを設計
採用活動の時期については、多くの企業が6月に内定を出すことをゴールにスケジュールが進行した。例年と比べて採用活動時期の前倒しや後ろ倒しをしたとする企業は少なく、多くの企業が例年通りのスケジュールであると回答した。
ただ、採用活動を行っている期間については二極化が進んでおり、22年の2月、3月からおおむね4カ月以内にすべての選考スケジュールを完了したところがいくつかある一方で、21年の夏前から約1年かけて採用活動を行ったというところも見られた。
採用手法については、ほぼすべての企業が何らかの形でオンラインを取り入れたと回答。会社説明会や1次、2次面接など選考過程の早い段階で取り入れるようなケースだけではなく、最終面接や社員交流会、内定出し、内定式などもすべてオンラインで完結したところもあった。
関連して、オンライン選考の利点について、主な回答では「会社説明会の動画配信、面接のオンライン化により効率的に選考を進めることができた。地方在住学生の参加率増」(ジュピターショップチャンネル)、「オンラインメインの選考フローになったことにより、場所や時間に縛られず学生が集まり、より企業側・学生側双方の視野が広まっていること」(RIZAPグループ)、「現場社員を含めた工数削減。場所による制限がなくなるため、大人数での説明会実施が可能」(ゴルフダイジェスト・オンライン)、「地方学生のエントリーが増加」(スクロール)、「遠方学生でも気軽に接点を持つことができた」(オルビス)、「全国各地の学生にリーチしやすい。会場準備などを含め開催しやすい」(アスクル)、「スケジュール都合での面接辞退率が減少した(学生の移動時間がなくなったため)。対面よりも学生にリラックスして参加してもらえる。1日の面接回数が増やせる(合間の準備時間を削れるため)」(ZOZO)、「場所を選ばないため、企業側からするとより多くの学生にアプローチできる、また、会場設営、費用の削減効果(他の集客やフォローへ割く時間が増やせる)といった点。学生からすると選考への参加ハードルは下がり、より多くの企業の選考等に参加することが可能となった(自宅から参加可能)」(DINOS CORPORATION)といった回答が見られた。
その上で、今後の課題として感じた部分についても質問。主な回答では「対面時と比較して相手の反応が感じ取りにくくなる。通信機器の不備や通信環境の不都合などで、面接時間ややりとりに影響が出てしまう。オフィスなどの『場』から感じ取れる社風などが伝わりにくい」(ZOZO)、「最終面接まではオンラインで完結してしまうため、自社への志望意欲を高めることが難しかった」(マガシーク)、「人数が多い説明会を実施する場合に難しさを感じた」(新日本製薬)、「オフラインと違い、細かな学生のリアクションや雰囲気を感じ取りにくいことで、オフラインよりも温度感が伝わらず、学生との距離をうまく縮められないこと。学生も同様に感じているため、より会社選びに慎重になっている部分はあるかと思う」(RIZAPグループ)、「回線接続等のネットワーク環境の個人差、各イベント参加が容易であるが故のキャンセル率の増加、より深い学生の質の確認といった面で難しさを感じた」(DINOS CORPORATION)、「細かいニュアンスや雰囲気等は把握しづらい。回線トラブルリスクがある(企業側、学生側の双方にある)」(ベルーナ)、「対面と比べ社風の伝えにくさは感じる。企業、学生双方にとって、最後までオンラインで実施することはマッチングの観点からは難しいと感じている」(アスクル)、「面接の態度や雰囲気などがわかりにくいため学生の志望度が見えない」(ファンケル)との回答があった。
そのほか、選考過程での各社の特徴的な取り組みに関しては、ジュピターショップチャンネルがすべて個人面接にて実施しているほか、先輩社員との座談会を導入。ゴルフダイジェスト・オンラインでは二次面接の前に二次面接対策講座を行ったり、最終面接前には面談を実施。ベルーナは人事部や現場社員の面談のほか、レポート提出を実施。RIZAPグループでは面接内の即時フィードバックを実施。「どうして受かったのか・落ちたのか分からない」という状況で終わるのではなく、1回1回のRIZAPグループとの接点が学生にとって今後に役立つものであって欲しいという思いからそうした機会を提供しているとした。
学生は「安定性」を重視
テレワークの有無も判断材料に
今年春入社の新卒採用市場について、企業が感じた印象を聞いてみた。
本項目の質問について回答した10社の内8社が「売り手市場(学生側が優位)」と回答し、「買い手市場(企業側が優位)」と回答した企業は1社もなかった。「どちらとも言えない」は2社となっている。前回調査では回答15社の内、12社が「売り手」とし、「買い手」は2社だった。前年に続き、学生が有利な売り手市場であるとの傾向が見られている。
「売り手」とした主な回答理由では、「特にエンジニア採用では、企業の求人数に対して、エンジニア志望学生の数が少なく、採用イベントに出た際も学生は引く手あまたな印象を受ける(優秀な学生は、年内には内々定を多数持っている印象)」(アスクル)、「オンラインでの就職活動を当たり前と捉え、焦ることなく落ち着いて企業を絞り込んで就職活動を行っている傾向であったため」(DINOS CORPORATION)、「昨年春の新卒採用市場と同じく、オンライン選考が主流で説明会や選考に臨むハードルが下がったこともあり、複数社の内定を持っている学生が多かったため」(マガシーク)、「学生の内定所有数が多く内定辞退が目立った」(ファンケル)とする回答があった。
なお、「どちらとも言えない」の回答については、「弊社のターゲット人材では質問に該当するような印象を受けなかったため」(オルビス)、「コロナ禍で買い手市場に振れた昨年より、少し学生優位が戻ってきている感じもある」(ゴルフダイジェスト・オンライン)との声があった。
働き方の内容には強い関心
就職活動を行っている学生たちは、どのような項目を重視して企業選びを行ったのか。採用活動を通じて感じた企業側の主な見解としては、「企業理念への共感。若手の裁量が大きいか」(オルビス)、「企業の安定性(財務状況、継続性、福利厚生)、自己成長出来る環境(働き方)」(ベルーナ)、「企業の安定性(倒産リスク)、福利厚生面」(新日本製薬)、「コロナ禍で大きな企業でも不振になるなど世相が大きく変わる中で、そういった環境下でも耐えることができる企業かどうかはより見られていたと思う。より確実になくならない『企業の安定』を重視するタイプ↓インフラなど不可欠な業界・大手企業を重視。自分のキャリアを築くことで『自己キャリアを基にした安定』を重視するタイプ↓早く成長できる、裁量を持てる環境を重視。これからもより重視される『業界の安定』を重視するタイプ↓IT・テクノロジー系などに重きを置いている企業を重視」(RIZAPグループ)、「引き続き自分のやりたいことができるかという点は重視していた。さらに23年卒は大学へ通えていた時とコロナ禍でのオンライン授業のどちらも経験し、その差を体感しているため、場所や時間のフレキシブルさも重視しているように感じる」(DINOS CORPORATION)、「例年の傾向通り、社員の人柄や社風に魅力を感じている方が多い印象。また入社後のキャリアやテレワークなどの働き方を重視する傾向もあると感じる」(アスクル)、「福利厚生、住宅補助など」(ファンケル)といった回答があった。
本紙が主要な通販実施企業約20社を対象に調査を実施し、有効回答を得られた各社の今春の新卒採用の状況は別表の通りとなった。前年との採用人数の比較について増減数を回答した企業の内、「増加」したのが7社、「減少」したのが5社となった。また、「前年と同数」とした企業は2社だった。
採用人数の前年比を見てみると、増加した企業が多かったものの、そのほとんどが2~3人程度の微増の範囲であった。最も増加幅が大きかったのは新日本製薬で、前年比10人増。回答企業の中では唯一の二桁増となっており、「要員計画の結果」と回答している。
一方で減少幅が大きかったのはベルーナで同18人減。「定着率の向上」をその理由に挙げている。また、同9人減のファンケルは「内定承諾率の低下。1人当たりの内定社数が増加」と回答。同6人減となったジュピターショップチャンネルについては「採用予定人数減のため」と回答した。
また、男女比率に関しては回答企業12社中、7社が男性よりも女性の入社人数が多くなり、同数だったのは2社。残りの3社は女性よりも男性の方が多かった。
採用告知に当たって活用した手段(複数回答)としては、「自社サイト」が最も多く、次いで大手就活サイトの「マイナビ」となった。そのほか、「新卒紹介会社の活用」、「合同説明会」、「ダイレクトリクルーティング」も同数で上位となっているほか、「イベント参加(オンラインなども含む)」や「インターンシップ」なども見られた。また、「既存社員の紹介」や「学校からの紹介」などもあり、大きく網を張って大量の人数の中から探し出すということではなく、ある程度事前に人物データを揃えることができる学生に対して個別にアプローチするというケースも少なくなかった。
6月に内定のゴールを設計
採用活動の時期については、多くの企業が6月に内定を出すことをゴールにスケジュールが進行した。例年と比べて採用活動時期の前倒しや後ろ倒しをしたとする企業は少なく、多くの企業が例年通りのスケジュールであると回答した。
ただ、採用活動を行っている期間については二極化が進んでおり、22年の2月、3月からおおむね4カ月以内にすべての選考スケジュールを完了したところがいくつかある一方で、21年の夏前から約1年かけて採用活動を行ったというところも見られた。
採用手法については、ほぼすべての企業が何らかの形でオンラインを取り入れたと回答。会社説明会や1次、2次面接など選考過程の早い段階で取り入れるようなケースだけではなく、最終面接や社員交流会、内定出し、内定式などもすべてオンラインで完結したところもあった。
関連して、オンライン選考の利点について、主な回答では「会社説明会の動画配信、面接のオンライン化により効率的に選考を進めることができた。地方在住学生の参加率増」(ジュピターショップチャンネル)、「オンラインメインの選考フローになったことにより、場所や時間に縛られず学生が集まり、より企業側・学生側双方の視野が広まっていること」(RIZAPグループ)、「現場社員を含めた工数削減。場所による制限がなくなるため、大人数での説明会実施が可能」(ゴルフダイジェスト・オンライン)、「地方学生のエントリーが増加」(スクロール)、「遠方学生でも気軽に接点を持つことができた」(オルビス)、「全国各地の学生にリーチしやすい。会場準備などを含め開催しやすい」(アスクル)、「スケジュール都合での面接辞退率が減少した(学生の移動時間がなくなったため)。対面よりも学生にリラックスして参加してもらえる。1日の面接回数が増やせる(合間の準備時間を削れるため)」(ZOZO)、「場所を選ばないため、企業側からするとより多くの学生にアプローチできる、また、会場設営、費用の削減効果(他の集客やフォローへ割く時間が増やせる)といった点。学生からすると選考への参加ハードルは下がり、より多くの企業の選考等に参加することが可能となった(自宅から参加可能)」(DINOS CORPORATION)といった回答が見られた。
その上で、今後の課題として感じた部分についても質問。主な回答では「対面時と比較して相手の反応が感じ取りにくくなる。通信機器の不備や通信環境の不都合などで、面接時間ややりとりに影響が出てしまう。オフィスなどの『場』から感じ取れる社風などが伝わりにくい」(ZOZO)、「最終面接まではオンラインで完結してしまうため、自社への志望意欲を高めることが難しかった」(マガシーク)、「人数が多い説明会を実施する場合に難しさを感じた」(新日本製薬)、「オフラインと違い、細かな学生のリアクションや雰囲気を感じ取りにくいことで、オフラインよりも温度感が伝わらず、学生との距離をうまく縮められないこと。学生も同様に感じているため、より会社選びに慎重になっている部分はあるかと思う」(RIZAPグループ)、「回線接続等のネットワーク環境の個人差、各イベント参加が容易であるが故のキャンセル率の増加、より深い学生の質の確認といった面で難しさを感じた」(DINOS CORPORATION)、「細かいニュアンスや雰囲気等は把握しづらい。回線トラブルリスクがある(企業側、学生側の双方にある)」(ベルーナ)、「対面と比べ社風の伝えにくさは感じる。企業、学生双方にとって、最後までオンラインで実施することはマッチングの観点からは難しいと感じている」(アスクル)、「面接の態度や雰囲気などがわかりにくいため学生の志望度が見えない」(ファンケル)との回答があった。
そのほか、選考過程での各社の特徴的な取り組みに関しては、ジュピターショップチャンネルがすべて個人面接にて実施しているほか、先輩社員との座談会を導入。ゴルフダイジェスト・オンラインでは二次面接の前に二次面接対策講座を行ったり、最終面接前には面談を実施。ベルーナは人事部や現場社員の面談のほか、レポート提出を実施。RIZAPグループでは面接内の即時フィードバックを実施。「どうして受かったのか・落ちたのか分からない」という状況で終わるのではなく、1回1回のRIZAPグループとの接点が学生にとって今後に役立つものであって欲しいという思いからそうした機会を提供しているとした。
学生は「安定性」を重視
テレワークの有無も判断材料に
今年春入社の新卒採用市場について、企業が感じた印象を聞いてみた。
本項目の質問について回答した10社の内8社が「売り手市場(学生側が優位)」と回答し、「買い手市場(企業側が優位)」と回答した企業は1社もなかった。「どちらとも言えない」は2社となっている。前回調査では回答15社の内、12社が「売り手」とし、「買い手」は2社だった。前年に続き、学生が有利な売り手市場であるとの傾向が見られている。
「売り手」とした主な回答理由では、「特にエンジニア採用では、企業の求人数に対して、エンジニア志望学生の数が少なく、採用イベントに出た際も学生は引く手あまたな印象を受ける(優秀な学生は、年内には内々定を多数持っている印象)」(アスクル)、「オンラインでの就職活動を当たり前と捉え、焦ることなく落ち着いて企業を絞り込んで就職活動を行っている傾向であったため」(DINOS CORPORATION)、「昨年春の新卒採用市場と同じく、オンライン選考が主流で説明会や選考に臨むハードルが下がったこともあり、複数社の内定を持っている学生が多かったため」(マガシーク)、「学生の内定所有数が多く内定辞退が目立った」(ファンケル)とする回答があった。
なお、「どちらとも言えない」の回答については、「弊社のターゲット人材では質問に該当するような印象を受けなかったため」(オルビス)、「コロナ禍で買い手市場に振れた昨年より、少し学生優位が戻ってきている感じもある」(ゴルフダイジェスト・オンライン)との声があった。
働き方の内容には強い関心
就職活動を行っている学生たちは、どのような項目を重視して企業選びを行ったのか。採用活動を通じて感じた企業側の主な見解としては、「企業理念への共感。若手の裁量が大きいか」(オルビス)、「企業の安定性(財務状況、継続性、福利厚生)、自己成長出来る環境(働き方)」(ベルーナ)、「企業の安定性(倒産リスク)、福利厚生面」(新日本製薬)、「コロナ禍で大きな企業でも不振になるなど世相が大きく変わる中で、そういった環境下でも耐えることができる企業かどうかはより見られていたと思う。より確実になくならない『企業の安定』を重視するタイプ↓インフラなど不可欠な業界・大手企業を重視。自分のキャリアを築くことで『自己キャリアを基にした安定』を重視するタイプ↓早く成長できる、裁量を持てる環境を重視。これからもより重視される『業界の安定』を重視するタイプ↓IT・テクノロジー系などに重きを置いている企業を重視」(RIZAPグループ)、「引き続き自分のやりたいことができるかという点は重視していた。さらに23年卒は大学へ通えていた時とコロナ禍でのオンライン授業のどちらも経験し、その差を体感しているため、場所や時間のフレキシブルさも重視しているように感じる」(DINOS CORPORATION)、「例年の傾向通り、社員の人柄や社風に魅力を感じている方が多い印象。また入社後のキャリアやテレワークなどの働き方を重視する傾向もあると感じる」(アスクル)、「福利厚生、住宅補助など」(ファンケル)といった回答があった。