バッグ専門店「カバンのセレクション」を運営する市川総業では、楽天グループが運営する仮想モール「楽天市場」に出店してから、今年で23周年を迎えた。ビジネスバッグやカジュアルバッグの分野で、有名ブランドの正規品取扱店として知られる同社だが、ネット販売の黎明期から継続して事業を続けているわけだ。制作企画部の岡原弘幸部長(=
顔写真㊤)が入社したのは2004年のこと。
岡原「今は所沢市に本社と実店舗を構えているが、以前は東京・新宿で店舗を営んでいた。前社長が新しいもの好きというか、時代の流れを読める人だったらしく、かなり早い段階でECに参入したと聞いている」
当時のEC事業部は少人数で運営しており、岡原部長が加入してようやく3人体制になったという。まだ実店舗の売り上げの方が大きく、ECでの販売個数はさほど多くはなかったものの、ある程度の売れ行きは見込める段階だった。ただ、商品在庫は店舗と共有しており、しかも手作業で在庫を管理していたため、知らないうちにECの在庫を切らしてしまうケースが多々あったという。
岡原「店舗で商品が売れたら情報をもらい、手作業で在庫を減らすという作業をしていた。また、ネット回線もあまり速くない時代だったので、画像サイズをなるべく小さくするなど、まだまだECには窮屈な部分もあった」
岡原部長が楽天市場店の運営に関わりはじめたのは07年頃。転機になったのは、当時の楽天の担当ECコンサルタント(ECC)と「ツーカーの仲」になってからだ。
岡原「とにかく誠実なECCで、事情を理解しようとしている言動にあふれていた。当店のことを良く見てくれていたし、販売している商品のことも良く知っていた。とても話がしやすく理解度も高いので、毎日のように打ち合わせをするようになった」
岡原部長は広告予算の増加と抑制をセットにして上層部に掛け合い、試行錯誤をしながら出稿を増やしていった。もともとEC売上高は順調に伸びていたが、これ以降は成長にブーストがかかることになった。また、多モール展開も開始。多店舗展開用の管理ツールを導入したことで、ネックだった在庫管理もスムーズとなり、EC売上高の成長に拍車をかける形となった。ただ、同社の場合は型番商品が中心のため、価格競争に巻き込まれやすい。どうやって他店と差別化を図ってきたのか。
制作企画部の千代間優課長(=
顔写真㊦)「ブランドのイメージを大事にしたいので、クーポン配布などの値引きはあまり積極的には行っていない。企画などで差別化したいと思っている」
岡原「差別化が難しいのは事実。ただ、他店より少しでも先を行く、例えばページを見やすくしたり、キャッチコピーの分かりやすさを重視したり、細かい部分を突いていくしかないので、皆でスキルアップを図っていった。また、売るために大事なのは在庫。好調な商材を多めに確保し、競合店が在庫を切らしている状況でも、当店は切らさないようにするなど、さまざまな観点から総合的に戦ってきた」
直近まで担当ECCだった高橋雅人氏とも、非常に良い関係を保っていたという。
千代間「年が変わるタイミングには『高橋さん、担当代わらないですよね?』といつも聞いていた。高橋さんは『この商材面白いですよ』など、私が考えつかない観点からの助言がとても多く、『ショップ・オブ・ザ・イヤー(SOY)2019』を受賞できたのも高橋さんのおかげだと思っている。楽天市場の出店店舗にとってECCはとても大事」
高橋「新しいことにチャレンジしているのがSOYを受賞できた要因ではないか」
特定の日に「楽天ポイント」の付与率を高めるキャンペーンなど、店舗と密にコミュニケーションを取ることにより、さまざまな販促を実施。また、顧客対応を重視している点もSOYの受賞につながった。
高橋「ユーザーのレビューへの対応をみても、顧客を大事にする文化が根づいているのが分かる。20年以上楽天市場で商売をしている店舗に共通する部分なのかもしれないが、とにかく顧客ファースト。また、新しいことへ常に挑戦する姿勢も素晴らしい」
岡原「レビューの力は非常に強いと思っているし、レビューの信ぴょう性の高さこそが楽天市場の力の源ではないか。他の仮想モールと比較してもレビューの信ぴょう性の高さはずば抜けている。数年前に、店舗がレビューしたユーザーにインセンティブを与える行為を原則禁止したことで、信ぴょう性が上がるとともに、レビューの価値も相対的に上がった。だからこそ、レビュー1個を獲得するための努力を惜しむべきではないし、電話対応やメール対応などのカスタマーサービスはとても重要だ」
近年は、プライベートブランド(PB)への取り組みも開始した。ある人気ブランドを取り扱えなくなった時期があり、リスクを分散するために始めたという。当初は既存ブランド商品のオリジナルカラーである「別注色」からスタート。そこから「マンセル」というPBの立ち上げにつなげた。
岡原「PBは在庫リスクを背負うので諸刃の剣ではあるが、だからこそ利益も得られる。リスクを好機と捉えて投資してくれている社長に感謝したい」
ECを始めてからもうすぐ四半世紀を迎える市川総業。今後、楽天には何を期待するのか。そしてECにおける新たな取り組みは。
千代間「楽天さんは何か方針転換がある場合でも、きちんと説明してくれるので信頼できる。楽天さんはユーザーフレンドリーなので、やろうとした戦略に乗っかれば利益を得られるという気持ちで運営している。また、型番商品はどうしても価格競争に巻き込まれがちなので、別注色やPBの売り上げ比率を拡大していきたい」
岡原「ショップの屋号である『カバンのセレクション』は、『お客様に楽しく選んでもらえるような品揃えのショップにしたい』という意味が込められている。あまり知られていないが、良い商品を扱うバッグのブランドを見つけ出すための努力も、PBのラインアップ拡大と並行して行っている」
岡原「今は所沢市に本社と実店舗を構えているが、以前は東京・新宿で店舗を営んでいた。前社長が新しいもの好きというか、時代の流れを読める人だったらしく、かなり早い段階でECに参入したと聞いている」
当時のEC事業部は少人数で運営しており、岡原部長が加入してようやく3人体制になったという。まだ実店舗の売り上げの方が大きく、ECでの販売個数はさほど多くはなかったものの、ある程度の売れ行きは見込める段階だった。ただ、商品在庫は店舗と共有しており、しかも手作業で在庫を管理していたため、知らないうちにECの在庫を切らしてしまうケースが多々あったという。
岡原「店舗で商品が売れたら情報をもらい、手作業で在庫を減らすという作業をしていた。また、ネット回線もあまり速くない時代だったので、画像サイズをなるべく小さくするなど、まだまだECには窮屈な部分もあった」
岡原部長が楽天市場店の運営に関わりはじめたのは07年頃。転機になったのは、当時の楽天の担当ECコンサルタント(ECC)と「ツーカーの仲」になってからだ。
岡原「とにかく誠実なECCで、事情を理解しようとしている言動にあふれていた。当店のことを良く見てくれていたし、販売している商品のことも良く知っていた。とても話がしやすく理解度も高いので、毎日のように打ち合わせをするようになった」
岡原部長は広告予算の増加と抑制をセットにして上層部に掛け合い、試行錯誤をしながら出稿を増やしていった。もともとEC売上高は順調に伸びていたが、これ以降は成長にブーストがかかることになった。また、多モール展開も開始。多店舗展開用の管理ツールを導入したことで、ネックだった在庫管理もスムーズとなり、EC売上高の成長に拍車をかける形となった。ただ、同社の場合は型番商品が中心のため、価格競争に巻き込まれやすい。どうやって他店と差別化を図ってきたのか。
制作企画部の千代間優課長(=顔写真㊦)「ブランドのイメージを大事にしたいので、クーポン配布などの値引きはあまり積極的には行っていない。企画などで差別化したいと思っている」
岡原「差別化が難しいのは事実。ただ、他店より少しでも先を行く、例えばページを見やすくしたり、キャッチコピーの分かりやすさを重視したり、細かい部分を突いていくしかないので、皆でスキルアップを図っていった。また、売るために大事なのは在庫。好調な商材を多めに確保し、競合店が在庫を切らしている状況でも、当店は切らさないようにするなど、さまざまな観点から総合的に戦ってきた」
直近まで担当ECCだった高橋雅人氏とも、非常に良い関係を保っていたという。
千代間「年が変わるタイミングには『高橋さん、担当代わらないですよね?』といつも聞いていた。高橋さんは『この商材面白いですよ』など、私が考えつかない観点からの助言がとても多く、『ショップ・オブ・ザ・イヤー(SOY)2019』を受賞できたのも高橋さんのおかげだと思っている。楽天市場の出店店舗にとってECCはとても大事」
高橋「新しいことにチャレンジしているのがSOYを受賞できた要因ではないか」
特定の日に「楽天ポイント」の付与率を高めるキャンペーンなど、店舗と密にコミュニケーションを取ることにより、さまざまな販促を実施。また、顧客対応を重視している点もSOYの受賞につながった。
高橋「ユーザーのレビューへの対応をみても、顧客を大事にする文化が根づいているのが分かる。20年以上楽天市場で商売をしている店舗に共通する部分なのかもしれないが、とにかく顧客ファースト。また、新しいことへ常に挑戦する姿勢も素晴らしい」
岡原「レビューの力は非常に強いと思っているし、レビューの信ぴょう性の高さこそが楽天市場の力の源ではないか。他の仮想モールと比較してもレビューの信ぴょう性の高さはずば抜けている。数年前に、店舗がレビューしたユーザーにインセンティブを与える行為を原則禁止したことで、信ぴょう性が上がるとともに、レビューの価値も相対的に上がった。だからこそ、レビュー1個を獲得するための努力を惜しむべきではないし、電話対応やメール対応などのカスタマーサービスはとても重要だ」
近年は、プライベートブランド(PB)への取り組みも開始した。ある人気ブランドを取り扱えなくなった時期があり、リスクを分散するために始めたという。当初は既存ブランド商品のオリジナルカラーである「別注色」からスタート。そこから「マンセル」というPBの立ち上げにつなげた。
岡原「PBは在庫リスクを背負うので諸刃の剣ではあるが、だからこそ利益も得られる。リスクを好機と捉えて投資してくれている社長に感謝したい」
ECを始めてからもうすぐ四半世紀を迎える市川総業。今後、楽天には何を期待するのか。そしてECにおける新たな取り組みは。
千代間「楽天さんは何か方針転換がある場合でも、きちんと説明してくれるので信頼できる。楽天さんはユーザーフレンドリーなので、やろうとした戦略に乗っかれば利益を得られるという気持ちで運営している。また、型番商品はどうしても価格競争に巻き込まれがちなので、別注色やPBの売り上げ比率を拡大していきたい」
岡原「ショップの屋号である『カバンのセレクション』は、『お客様に楽しく選んでもらえるような品揃えのショップにしたい』という意味が込められている。あまり知られていないが、良い商品を扱うバッグのブランドを見つけ出すための努力も、PBのラインアップ拡大と並行して行っている」