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再配達率が低水準に推移<コロナ禍で受取手段の多様化進展> 25年度の10%目標達成なるか

2022年 7月 7日 13:30

 コロナ禍における2年間で宅配便の受取方法の多様化が大きく進展した。置き配が一気に普及したことに加え、宅配ロボットの実証実験やスマートキーを活用したオートロック式集合住宅への置き配など新たな取り組みも試行されるようになっている。併せて多様化の目的としている宅配便の再配達の削減も一定の成果を上げているように見られる。この2年間の受取方法の多様化の動向を振り返るともに、今後のさらなる再配達の削減が可能なのかを探る。
 



















 国土交通省などが「置き配検討会」を立ち上げたのは2019年3月。その約1年後に新型コロナウイルス感染症が国内でも広がり始めることになった。それまで盗難などを不安視して一般ユーザーに受け入れられにくかった置き配だが、検討会も当初は予想もしなかっただろうほどに、置き配に対する見方が大きく変化することになる。

 「置き配検討会」は、その前身となる「宅配事業とEC事業の生産性向上連絡会」において宅配便の再配達の削減に向けて(1)宅配事業者とEC事業者とのデータ連携の推進(2)再配達の実態の詳細分析(3)多様な受取方法の推進を行うことが決定し、(3)を具体的に進める狙いで立ち上がった。置き配に積極的な日本郵便といった宅配便事業者、アマゾンジャパンや楽天グループといった仮想モール事業者、ファンケルなど通販事業者などがメンバーだった。検討会は21年3月までに5回開催し、置き配の現状と実施に向けたポイント」をまとめるに至った。まさに新型コロナウイルス感染症が拡大し始め、最初の緊急事態宣言が発令される直前でのとりまとめだった。

 国交省が17年10月分から、4月分とともに調査するようになった宅配便の再配達率に関す調査では、15~16%(全体)で推移しいていたのが、20年4月の結果は4月7日に7都府県、4月16日に対象を全国に拡大した緊急事態宣言の発令から一気に8・5%(同)と10%未満まで低下した。

 この再配達率は、20年度に13%程度と掲げていた目標を大きく下回るもの。外出自粛や非対面・非接触という行動様式の必要性から、置き配をはじめとした受取方法の多様化への対応が大きく進展したためと言える。

 その再配達率は、その後に10%を下回ることはないが、11%台(同)が続き、直近の今年4月は11・7%になっている。新たな再配達率の目標である25年度に10%程度の達成まで約2ポイントという状況だ。

宅配大手のいずれもが置き配を

 住居の玄関前や自転車のカゴの中などへの置き配は大手宅配便事業者の中でも日本郵便が先行しており、積極的に取り組んでいた。一方、ヤマト運輸や佐川急便はセキュリティ等の課題等もあるためか、コロナ以前に大々的に実施するにはいたらなかったようだ。むしろヤマト運輸はオープン型(複数の宅配便事業者が活用可能)の宅配便ロッカーへより注力する姿勢を示し、同ロッカーが受取の多様化の急先鋒としての施策としていた。

 ところが、2社とも非対面・非接触の要請から、配達先でインターフォンを通じて、玄関前などに荷物を置くことを依頼されるといったケースが増えるようになった。そして、佐川急便は20年5月に置き配の「指定場所配達サービス」を開始し、ヤマトも同年6月にEC専用の配送商品である「EAZY(イージー)」をスタート。両社とも正式に置き配に取り組むこととなった。

 このうちヤマト運輸のイージーは、配達直前での配達先変更、受取時間の変更も行えるといった新たな機能を有するのが特徴。置き配だけでなく、対面での受け取りでも受取手の利便性を向上したものとした。

 いずれにしても宅配便大手3社のいずれもが置き配へ大きく舵を切ったことが、コロナ禍において非対面・非接触の購入手段として通販・ECの需要が増えることに伴い、荷物量が増加する中でも、ほぼ宅配便が逼迫することがなかった大きな要因と見られる。

新たな再配達率目標の”10%”へ

 25年度を目標とする再配達率10%程度に達するには、11%台となっている現状より2ポイント近い低減が求められる。コロナ禍で大きく低下した再配達率だが、今後、さらに2ポイントの低下というのはそう簡単にクリアできるだろうか。

 前回の目標だった15%程度は21年度の4月、10月、22年度の4月のいずれとも下回る状況が続いている。今後のコロナの収束はまだ見通せる状況でなく、通販・EC需要の変動、さらにリモート勤務から出勤へのシフトも徐々に進展しているだけに、直近の11%台という再配達率を維持することができるかは定かではない。

置き配の進化系など実験が進む

 しかし、置き配に関しても新たな取り組みや実験が相次いでいて、再配達の削減を重視するところは多い。ヤマト運輸は2月からデジタルキーを活用した「車内への置き配」の実証実験を開始。受取手の自家用車にデジタルキーで解錠可能な専用でデバイスを設置してデジタルキーによりトランクなどを開けてECサイトで購入下商品を置くという取り組みだ。また、同社は3月から、複数のデジタルキーを一括管理できるシステムを開発し、デジタルキーを提供する5社と連携して、オートロック式集合住宅などのエントランスを解錠して、事前に指定を受けた場所へ置き配を可能にした。

 また、宅配ロボットについては、4月に国会で道路交通法改正案が可決し、その中で自動配送ロボットも「遠隔操作型小型車」として位置付けられている。1年以内の施行予定で、来年4月以降に、登録制で公道での走行が可能になる。

 また、国交省は非接触・非対面型輸配送の推進のためのモデルを構築する調査・事業を基に「手引き」などを取りまとめ、ホームーページ上で公開している。「手引き」では、再配達の削減に向け、集合住宅におけるオートロック解錠デバイスの活用、多様な受取方法や関係者の連携などの取り組みなどを紹介し推進している。
 
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