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医薬品通販規制訴訟、控訴審始まる "ネットは劣る"は思い込み

2010年 9月 9日 15:43

 6-2.jpg通販やネット販売で扱える医薬品に制限を加えるのは憲法に違反するなどとして、医薬品ネット販売を行うケンコーコムとウェルネットが国を相手取り提起した行政訴訟の控訴審第1回弁論が9月2日、東京高裁で開かれた。先の地裁判決では、原告全面敗訴という結果に終わったが、控訴審で原告側は、ネットは対面に有意に劣るとの司法判断に対し、科学的な根拠のない思い込みと主張。原判決(一審判決)の誤った認識を追及するほか、店舗販売での情報提供の実態などをもとに、現行医薬品販売制度の矛盾点を突いていく構えだ。
 
 控訴人であるケンコーコム等の主な主張は、別表の通り。まずポイントとなるのは、別表1の「対面販売が優れているとする判断は恣意的で不合理」という主張だ。対面の場合、相手の顔を直接見られるためネットよりも優れているというのが原判決の判断理由だが、これに対し、控訴人側は科学的な証拠のない思い込みと指摘。控訴審では、コミュニケーション分野の専門家の意見を陳述書に盛り込み、より科学的に論証していく構えだ。
 
 次のポイントは、別表2の原判決が一般用医薬品と医療用医薬品を区別していない等とする点。これについては、「薬事法」で一般用意客品に関し「人体に対する作用が著しくない」(25条1)ものとされていることから、予め消費者の判断で使用されることを予定したものと指摘。一般用医薬品の副作用が重大とした原判決は、この部分を見落としているとする。
 
 また、副作用発生件数に対する捉え方についても、国側が年間二百数十件の副作用被害報告があるとしていたのに対し、控訴人側は発生頻度で捉えれば「1000万件に3件程度のレベル」(関葉子弁護士)と指摘。発生確率ではなく絶対数で捉えた原判決は、副作用リスクの重大性だけを誇張しネットが対面に劣ると判断したものとして、論証していく構えだ。
 
 さらに、原判決は対面販売の情報提供に鷹揚である半面、ネット販売のハザードを極端に過大視した内容があり矛盾(ダブルスタンダード)が甚だしいとするほか、配置販売業や特例販売業に異常に甘く、ネット販売にだけ極端に厳しい医薬品販売制度は平等原則にも反するとした。
 
 このほかにも控訴人側は、厚労省が今年6月に公表したドラッグストア等での医薬品購入時の情報提供に関する覆面調査で、副作用リスクが最も高い第1類医薬品で約20%、第2類医薬品で50%以上の店舗が情報提供を行っていなかった点などを突いていく考え。陳述でケンコーコムの後藤社長は、「国だから正しい、ではなく真に公正中立な立場からの説得力のある判断により正義が実現されることを願ってやまない」と述べた。
 
 今回の医薬品通販規制を巡っては、事前の検討過程や厚労省の情報提供のあり方に問題があるのは明らかで、制度の中身、規制導入後の実情などを見ても多くの矛盾をはらんでいる。この背景にあるのは、既得権益者の利益保護、あるいはネットは何となく危険というイメージと言えるが、医薬品に限らず他のネット分野でも同様の構図で規制が加えられる可能性は十分に考えられる。
 
 控訴審の第2回口頭弁論は12月2日に開かれる予定だが、ネット販売事業者は、この行政訴訟の行方を注視する必要がありそうだ。
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