食品宅配各社のミールキットが伸びている。コロナ禍で在宅率が高まり調理の機会が増え、料理への関心も高まった。短時間で簡単に作れる利便性が、毎日の料理に負担を感じるユーザーの悩みに合致した。異業種の取り扱いも増えており、市場への浸透が加速している。
新規コラボ1.5倍で顧客獲得
オイシックス・ラ・大地は、野菜を多く摂れ、品質の良い食材を調理できるなど「豊かな食卓」と「時短」を同時に実現する”プレミアム時短”を提供価値にミールキットの浸透を図る。2021年4月時点で累計8000万食を出荷している。
ミールキット「KitOisix」は核となる商品の一つ。コロナ禍を追い風に、定期購入者数は前年同期比48%増となる22万2400人に達した(今年3月末時点)。
他社とのコラボ商品を積極化したことが、新規顧客層との接点拡大につながっている。
昨年の新規コラボレーション先は前年の1・5倍。大戸屋やモスバーガーなどの外食チェーンのほか、ディズニーやベネッセコーポレーションなど食以外の領域へ広げた。
コラボ商品では栗原はるみさんが監修したミールキットがヒットした。6月単月で約3万6000食を販売。調理時間は40分と長めだが、オンライン動画でレッスンを受けているかのような体験価値の提供がユーザーの支持を集めた。「料理の楽しさを体験できる”プレミアム時短”を象徴するアイテムだった」(同社)とする。
19年10月に発売したヴィーガン向けミールキット「パープルキャロット」も好調。累計60万食を販売する(今年3月末時点)。朝食需要に対応したスープのミールキットもコロナ禍の健康志向の高まりを受けて売り上げを伸ばしたという。
トレンドや健康ニーズが多様化
ヨシケイ開発のミールキットの販売数(昨年4月~今年3月)も、前年同期比10%増の約1億3900万食と好調に推移した。ネットの注文件数が増えたほか、既存顧客の注文回数も増えた。
さまざまな商品ジャンルで販売数が伸びている。20~30代向けに展開する「Lovyu(ラビュ)」の外食気分を味わえるトレンド感を重視した「バリエーションコース」や、手軽な価格帯で展開する「すまいるごはん」の「プチママ」のほか、健康志向に対応した「和彩ごよみ」の不足しがちな栄養素を補う目的の「スタンダード」などの伸びが目立った。調理の手軽さに加えて、メニューのトレンド感や健康志向など、顧客ニーズの多様化がみられた。
コロナ禍で深刻な打撃を受けた食品業界の支援策を行い、食を通じた地域貢献を提案し購買意欲を喚起した。
徳島県のブランド鶏「阿波尾鶏」の需要喚起を図る公募型プロポーザルに参加し、阿波尾鶏を使った親子丼をミールキットとして商品化した。昨年の11月から今年6月までに3回にわたって販売しており、購入者からは「鶏のおいしさがよく伝わる」や「とてもふんわり出来上がる」などのレビューが寄せられ好評だった。
また「わさび」産地の応援企画も行った。わさびが合うメニューの購入者にわさびをプレゼント、わさびのPRや販路拡大につながったという。
全年代で注文率が向上
生協系も好調だ。コープデリ生活協同組合連合会の「コープデリミールキット」の販売数(昨年4月~今年3月)は前年同期比31・3%増の約961万点と、前年から大きく伸ばした。家事の負担感が増えた悩みを解決する利便性や、本格的な料理が自宅で作れるエンターテインメント性が奏功し、旅行や外食の代替需要を獲得した。
好調だったのは「WorldDish(ワールドディッシュ)」シリーズで、世界各国の名物料理を簡単に作れるもの。ルーローハンやガパオライス、ビーフストロガノフが人気メニューで、「今まで作れなかったものが簡単に作れる」や「海外旅行ができなくなったが、家で本格的な味が楽しめる」などと好評だった。このほか、定番メニューでは、ビビンバ丼や八宝菜、ドライカレーが人気上位3品となっている。
需要の拡大に合わせて、昨年10月にカタログでの取り扱いを拡大。ミールキットを中心に商品提案を行うコーナーを新設したことで、全年代で注文率が向上した。子育て世帯のファミリー層以外に中高年層の利用が増えるなどすそ野が広がっている。
新規客獲得については今年3月にミールキットを主軸に、新規客獲得を実施した。テレビCMやSNS広告を活用して、幅広い層の獲得を目指した。
高額商品で選択肢を広げる
パルシステム生活協同組合連合会が扱うミールキット「料理キット」の販売数(昨年4月~今年3月)は前年同期比37%増の862万点だった。売上高規模は約75億円と拡大している。
昨年は6~8月の受注が予想を上回って急増した。通常は長期休暇を挟むためミールキットの利用回数が減少しがちだが、「料理の機会が増え、手作りが見直された。ミールキットが夏休みの利用回数の維持・増加に貢献した」(パルシステム)という。
好調だったのは、すき焼き鍋で「かなり伸びた商品」(同)。内食需要の高まりを受けて、高価格帯商品の開発を進めていたものの一つで、実際に外食の代わりに選択するユーザーが多かった。また、同様の理由で、エスニック系商品のセットも好調だった。
また、ギョーザの手作りキットも売り上げが伸びた。これまで売れ行きが目立っていなかったがコロナ禍で手作りが見直される中で注目され、国産野菜や産直肉などを使ったおいしさへの理解が進んだとみられる。
こうした需要の拡大を受けて、今年3月から、冷凍食品を組み合わせたキットを訴求する新規客獲得策を始めた。賞味期限が長い冷凍食品を活用して主菜と副菜を調理できるもので、ミールキットのおいしさや利便性の体験につなげていく。
今年4月から週刊カタログのページ数を1ページ増やして3ページに拡大。取り扱いアイテム数は約10アイテム増やして約40アイテムに拡充した。顧客の選択肢を増やし利便性を高めた。
スーパーなど取り扱い広がる
食品宅配事業者以外にも、ミールキットを取り扱う取り扱いが増えている。19年以降、ベルーナや、NTTドコモがオイシックス・ラ・大地と組んで新規に取り扱いを開始。また、アマゾンも生鮮品ECサービス「Amazonフレッシュ」でミールキットの拡販に注力しているようだ。
新規参入の各社も、コロナ禍に売り上げを伸ばしたもよう。NTTドコモと連携するオイシックス・ラ・大地によると、ミールキット「dミールキット」の定期会員数は順調に推移しているという。
コロナをきっかけにミールキットの需要が高まり、「食品の新しいカテゴリーとして成長しているようだ」(食品宅配の担当者)と指摘する声もある。
今年に入ってから、スーパーなど実店舗の参入も目立つ。3月にスーパーマーケットを展開するユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスが通販サイト限定商品としてミールキット「イータイムシェフ」の販売を開始。良品計画も5月に、冷凍食品の新シリーズ「すぐ使える」と「フライパンでつくるミールキット」を投入した。
ただ、既存プレイヤーからは「食品宅配と、スーパーなどの実店舗はターゲットや利用目的が異なり、実店舗系のネット販売でミールキットの需要がどこまで伸びるか注視している」(同)との声も聞こえる。7&iHDがアスクル運営の「ロハコ」に出店して展開していた「IYフレッシュ」はミールキットを主軸に展開していたものの、採算が合わずエリア拡大が難しく撤退していた。今後、競争が激化し市場の中で明暗が分かれる可能性もありそうだ。
新規コラボ1.5倍で顧客獲得
オイシックス・ラ・大地は、野菜を多く摂れ、品質の良い食材を調理できるなど「豊かな食卓」と「時短」を同時に実現する”プレミアム時短”を提供価値にミールキットの浸透を図る。2021年4月時点で累計8000万食を出荷している。
ミールキット「KitOisix」は核となる商品の一つ。コロナ禍を追い風に、定期購入者数は前年同期比48%増となる22万2400人に達した(今年3月末時点)。
他社とのコラボ商品を積極化したことが、新規顧客層との接点拡大につながっている。
昨年の新規コラボレーション先は前年の1・5倍。大戸屋やモスバーガーなどの外食チェーンのほか、ディズニーやベネッセコーポレーションなど食以外の領域へ広げた。
コラボ商品では栗原はるみさんが監修したミールキットがヒットした。6月単月で約3万6000食を販売。調理時間は40分と長めだが、オンライン動画でレッスンを受けているかのような体験価値の提供がユーザーの支持を集めた。「料理の楽しさを体験できる”プレミアム時短”を象徴するアイテムだった」(同社)とする。
19年10月に発売したヴィーガン向けミールキット「パープルキャロット」も好調。累計60万食を販売する(今年3月末時点)。朝食需要に対応したスープのミールキットもコロナ禍の健康志向の高まりを受けて売り上げを伸ばしたという。
トレンドや健康ニーズが多様化
ヨシケイ開発のミールキットの販売数(昨年4月~今年3月)も、前年同期比10%増の約1億3900万食と好調に推移した。ネットの注文件数が増えたほか、既存顧客の注文回数も増えた。
さまざまな商品ジャンルで販売数が伸びている。20~30代向けに展開する「Lovyu(ラビュ)」の外食気分を味わえるトレンド感を重視した「バリエーションコース」や、手軽な価格帯で展開する「すまいるごはん」の「プチママ」のほか、健康志向に対応した「和彩ごよみ」の不足しがちな栄養素を補う目的の「スタンダード」などの伸びが目立った。調理の手軽さに加えて、メニューのトレンド感や健康志向など、顧客ニーズの多様化がみられた。
コロナ禍で深刻な打撃を受けた食品業界の支援策を行い、食を通じた地域貢献を提案し購買意欲を喚起した。
徳島県のブランド鶏「阿波尾鶏」の需要喚起を図る公募型プロポーザルに参加し、阿波尾鶏を使った親子丼をミールキットとして商品化した。昨年の11月から今年6月までに3回にわたって販売しており、購入者からは「鶏のおいしさがよく伝わる」や「とてもふんわり出来上がる」などのレビューが寄せられ好評だった。
また「わさび」産地の応援企画も行った。わさびが合うメニューの購入者にわさびをプレゼント、わさびのPRや販路拡大につながったという。
全年代で注文率が向上
生協系も好調だ。コープデリ生活協同組合連合会の「コープデリミールキット」の販売数(昨年4月~今年3月)は前年同期比31・3%増の約961万点と、前年から大きく伸ばした。家事の負担感が増えた悩みを解決する利便性や、本格的な料理が自宅で作れるエンターテインメント性が奏功し、旅行や外食の代替需要を獲得した。
好調だったのは「WorldDish(ワールドディッシュ)」シリーズで、世界各国の名物料理を簡単に作れるもの。ルーローハンやガパオライス、ビーフストロガノフが人気メニューで、「今まで作れなかったものが簡単に作れる」や「海外旅行ができなくなったが、家で本格的な味が楽しめる」などと好評だった。このほか、定番メニューでは、ビビンバ丼や八宝菜、ドライカレーが人気上位3品となっている。
需要の拡大に合わせて、昨年10月にカタログでの取り扱いを拡大。ミールキットを中心に商品提案を行うコーナーを新設したことで、全年代で注文率が向上した。子育て世帯のファミリー層以外に中高年層の利用が増えるなどすそ野が広がっている。
新規客獲得については今年3月にミールキットを主軸に、新規客獲得を実施した。テレビCMやSNS広告を活用して、幅広い層の獲得を目指した。
高額商品で選択肢を広げる
パルシステム生活協同組合連合会が扱うミールキット「料理キット」の販売数(昨年4月~今年3月)は前年同期比37%増の862万点だった。売上高規模は約75億円と拡大している。
昨年は6~8月の受注が予想を上回って急増した。通常は長期休暇を挟むためミールキットの利用回数が減少しがちだが、「料理の機会が増え、手作りが見直された。ミールキットが夏休みの利用回数の維持・増加に貢献した」(パルシステム)という。
好調だったのは、すき焼き鍋で「かなり伸びた商品」(同)。内食需要の高まりを受けて、高価格帯商品の開発を進めていたものの一つで、実際に外食の代わりに選択するユーザーが多かった。また、同様の理由で、エスニック系商品のセットも好調だった。
また、ギョーザの手作りキットも売り上げが伸びた。これまで売れ行きが目立っていなかったがコロナ禍で手作りが見直される中で注目され、国産野菜や産直肉などを使ったおいしさへの理解が進んだとみられる。
こうした需要の拡大を受けて、今年3月から、冷凍食品を組み合わせたキットを訴求する新規客獲得策を始めた。賞味期限が長い冷凍食品を活用して主菜と副菜を調理できるもので、ミールキットのおいしさや利便性の体験につなげていく。
今年4月から週刊カタログのページ数を1ページ増やして3ページに拡大。取り扱いアイテム数は約10アイテム増やして約40アイテムに拡充した。顧客の選択肢を増やし利便性を高めた。
スーパーなど取り扱い広がる
食品宅配事業者以外にも、ミールキットを取り扱う取り扱いが増えている。19年以降、ベルーナや、NTTドコモがオイシックス・ラ・大地と組んで新規に取り扱いを開始。また、アマゾンも生鮮品ECサービス「Amazonフレッシュ」でミールキットの拡販に注力しているようだ。
新規参入の各社も、コロナ禍に売り上げを伸ばしたもよう。NTTドコモと連携するオイシックス・ラ・大地によると、ミールキット「dミールキット」の定期会員数は順調に推移しているという。
コロナをきっかけにミールキットの需要が高まり、「食品の新しいカテゴリーとして成長しているようだ」(食品宅配の担当者)と指摘する声もある。
今年に入ってから、スーパーなど実店舗の参入も目立つ。3月にスーパーマーケットを展開するユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスが通販サイト限定商品としてミールキット「イータイムシェフ」の販売を開始。良品計画も5月に、冷凍食品の新シリーズ「すぐ使える」と「フライパンでつくるミールキット」を投入した。
ただ、既存プレイヤーからは「食品宅配と、スーパーなどの実店舗はターゲットや利用目的が異なり、実店舗系のネット販売でミールキットの需要がどこまで伸びるか注視している」(同)との声も聞こえる。7&iHDがアスクル運営の「ロハコ」に出店して展開していた「IYフレッシュ」はミールキットを主軸に展開していたものの、採算が合わずエリア拡大が難しく撤退していた。今後、競争が激化し市場の中で明暗が分かれる可能性もありそうだ。