コロナ禍における消費活動の変化を最も大きく受けることとなった大手小売り業界の実店舗。”ウィズコロナ”が見込まれる今年度についても、営業休止や時短運営といった様々な形でリアルの店舗活動に制限がかけられることが予想される。ECとの連携による相互補完の関係づくりは、引き続き重要課題となるようで、各社で模索が続く。全国展開する大手小売り企業を中心に、各社が取り組む直近のEC関連施策を見てみる。
ファストリは大型スタジオ開設
ファーストリテイリングは4月より、傘下ブランドの「ユニクロ」や「ジーユー」などの本部を構える都内・江東区の社屋「有明本部」の4階を倉庫からオフィスへと改装し、撮影スタジオやカスタマーセンターなどの機能も本格稼働させた。
同拠点は国内のEC専用倉庫として運営しており、今回改装したスペースについては、元々、先に出来上がった商品をストックしておく倉庫として活用していた。近年は自動倉庫の効率化が進み、出荷までのスキームが短縮されたことで、ストックスペースを必要としなくなったことから、今回の改装に至ったという。
まずは、撮影スタジオを開設。企業が独自に所有するスタジオとしては日本最大級の約6000平方メートルの面積を有しており、写真や動画が撮影できる大型スタジオに加え、自然光でも撮影ができるスタジオも開設した。
通販サイトで使う商品画像の物撮りや、実店舗で使うPOPといったモデル着用画像の撮影などを行うという。
同時にウェブ制作部門専用のワーキングスペースも設置しており、最新の商品や着こなしの情報をデジタルに変換できる仕組み。
カスタマーセンターに関しては、現在運営している山口本社の拠点に加えて、今回の同拠点内にも開設。現在はコロナの感染対策に伴い、1席ずつ開けての使用となるため、まずは60席程度の人員で稼働するが、将来的にはコロナが収束した段階で、100席程度まで増やして運営していく考え。売り場を問わず、顧客から集まった声や要望をダイレクトに経営や本部社員に届け、リアルタイムに商品・サービス開発などに活用する体制を強化していく。
そのほか、完成した商品や広告物を実地検証するため、ユニクロの標準店や大型店の仮想店舗も設置。売り場づくりの研究に活用していく。
なお、同社の今中間期(2020年9月~21年2月)の「国内ユニクロ事業」の内、EC売上高は、前年同期比40・5%増の738億円と大きく伸長。在宅需要にマッチした商品の販売が好調に推移した。
今期のニトリはアプリ利用拡大
ニトリホールディングスでは今期(2021年2月期)はアプリを起点とした経営戦略を強化していく。実店舗とネットの販売チャネルをつなぐ機能を有するアプリの利用者を拡大させることで、2025年にはEC売上高を1500億円まで引き上げることを目指している。
同社の公式アプリである「ニトリアプリ」はEC機能をはじめ、実店舗とネット共通のポイントや会員証などを有している。また、AIを活用した商品画像検索ツールでは希望商品の写真やスクリーンショット画像を同アプリで読み込むだけで、実店舗や通販サイトにある同一・類似商品が自動検索で表示されて購入もできるなど、実店舗とECを連携させたO2Oアプリとして位置付けている。
前期はアプリ会員を対象に商品購入時のポイント追加付与の実施や、自宅の家具のサイズや納品経路に加えて、設置スペースや窓のサイズを空間認識して計測できるAR機能を搭載した「サイズwithメモ」機能を刷新。利便性の向上により、利用者数が大きく増加し、20年2月の522万人から、今年2月には908万人まで拡大した。
3月30日に行われた決算説明会では、白井俊之社長が「今期はアプリ施策を中心に”個客”を捉える経営に転換していく」と宣言しており、アプリ会員数を1300万人まで伸ばすことを見込んでいる。それに伴い、O2O戦略の推進による実店舗の省人化や買い物時間の短縮など、ウィズコロナ時代にも即した環境整備も図っていく考え。
なお、国内のEC売上高については、アプリの利用者を拡大させることで21年2月期の705億円から、4年後の25年には1500億円まで伸ばしていく計画。
そのほか、通販関連では海外でのEC強化にも乗り出していく。現状、海外ではアジアや米国に実店舗を展開しているが、まず、中国に関しては昨年末からホームファッションのECを本格的に開始した。今年3月末時点での同国でのEC取扱商品数は3000点となり、前年の約6倍まで急拡大することができていることから、さらなる伸びを目指していく。
米国についてもウェブでの販路をテコ入れしていく考え。
ライフはアプリに加え宅配会社
スーパーマーケットチェーンを展開するライフコーポレーションは、ネットスーパー事業の強化に向けた施策に相次ぎ取り組んでいる。3月8日に初となるネットスーパー用アプリ「ライフネットスーパーアプリ」の提供を開始し、4月7日にはラストワンマイルを担う新会社「株式会社ライフホームデリバリー」を設立。ネットスーパー事業のさらなる成長に向けて体制を強化している。
アプリは、既存のブラウザーによるネットスーパー、アマゾンジャパンを通じた販売に加え、ライフのネット販売の3つ目のアプローチと位置付けている。全278店舗のうち首都圏と近畿圏の合計61店舗で展開するネットスーパー「ライフネットスーパー」をより利用しやすくするために提供するもので、店舗での顧客体験をネットスーパーでも可能にし、顧客のライフへのロイヤルティ向上につなげる。
アプリの主な特長は、「一覧性の高い売り場」「ライフこだわりのプライベートブランド商品」「お気に入り商品を保存できるマイリスト」。スマホアプリでの素早く快適な操作性で豊富な品ぞろえから便利に買い物でき、セール商品などのチェックができ、多様なPB商品の人気商品が購入できる。マイリストではいつも購入商品を「お気に入り」に設定しておくと、アプリの下タブから確認でき、定番として毎回購入する商品は一括でカートに追加できるようにして買い物の時短を可能にするという。
4月7日に設立したライフホームデリバリーは、ライフのほか、スリーエスコーポレーション、間口ロジ関東が出資。ネットスーパー事業の宅配のほか、来店客から依頼を受けた買物商品のデリバリーも受け持つ。資本金は3000万円で、出資比率はライフ40%、スリーエスコーポレーション50%、間口ロジ関東10%。
ネットスーパー事業の拡大は、「システム」「オペレーション」「配送」のそれぞれが高いレベルで実現できることが必要とし、アプリに続き、物流の専門的知見やノウハウを持つ間口ホールディングスの子会社2社と新会社を設立した。
ファストリは大型スタジオ開設
ファーストリテイリングは4月より、傘下ブランドの「ユニクロ」や「ジーユー」などの本部を構える都内・江東区の社屋「有明本部」の4階を倉庫からオフィスへと改装し、撮影スタジオやカスタマーセンターなどの機能も本格稼働させた。
同拠点は国内のEC専用倉庫として運営しており、今回改装したスペースについては、元々、先に出来上がった商品をストックしておく倉庫として活用していた。近年は自動倉庫の効率化が進み、出荷までのスキームが短縮されたことで、ストックスペースを必要としなくなったことから、今回の改装に至ったという。
まずは、撮影スタジオを開設。企業が独自に所有するスタジオとしては日本最大級の約6000平方メートルの面積を有しており、写真や動画が撮影できる大型スタジオに加え、自然光でも撮影ができるスタジオも開設した。
通販サイトで使う商品画像の物撮りや、実店舗で使うPOPといったモデル着用画像の撮影などを行うという。
同時にウェブ制作部門専用のワーキングスペースも設置しており、最新の商品や着こなしの情報をデジタルに変換できる仕組み。
カスタマーセンターに関しては、現在運営している山口本社の拠点に加えて、今回の同拠点内にも開設。現在はコロナの感染対策に伴い、1席ずつ開けての使用となるため、まずは60席程度の人員で稼働するが、将来的にはコロナが収束した段階で、100席程度まで増やして運営していく考え。売り場を問わず、顧客から集まった声や要望をダイレクトに経営や本部社員に届け、リアルタイムに商品・サービス開発などに活用する体制を強化していく。
そのほか、完成した商品や広告物を実地検証するため、ユニクロの標準店や大型店の仮想店舗も設置。売り場づくりの研究に活用していく。
なお、同社の今中間期(2020年9月~21年2月)の「国内ユニクロ事業」の内、EC売上高は、前年同期比40・5%増の738億円と大きく伸長。在宅需要にマッチした商品の販売が好調に推移した。
今期のニトリはアプリ利用拡大
ニトリホールディングスでは今期(2021年2月期)はアプリを起点とした経営戦略を強化していく。実店舗とネットの販売チャネルをつなぐ機能を有するアプリの利用者を拡大させることで、2025年にはEC売上高を1500億円まで引き上げることを目指している。
同社の公式アプリである「ニトリアプリ」はEC機能をはじめ、実店舗とネット共通のポイントや会員証などを有している。また、AIを活用した商品画像検索ツールでは希望商品の写真やスクリーンショット画像を同アプリで読み込むだけで、実店舗や通販サイトにある同一・類似商品が自動検索で表示されて購入もできるなど、実店舗とECを連携させたO2Oアプリとして位置付けている。
前期はアプリ会員を対象に商品購入時のポイント追加付与の実施や、自宅の家具のサイズや納品経路に加えて、設置スペースや窓のサイズを空間認識して計測できるAR機能を搭載した「サイズwithメモ」機能を刷新。利便性の向上により、利用者数が大きく増加し、20年2月の522万人から、今年2月には908万人まで拡大した。
3月30日に行われた決算説明会では、白井俊之社長が「今期はアプリ施策を中心に”個客”を捉える経営に転換していく」と宣言しており、アプリ会員数を1300万人まで伸ばすことを見込んでいる。それに伴い、O2O戦略の推進による実店舗の省人化や買い物時間の短縮など、ウィズコロナ時代にも即した環境整備も図っていく考え。
なお、国内のEC売上高については、アプリの利用者を拡大させることで21年2月期の705億円から、4年後の25年には1500億円まで伸ばしていく計画。
そのほか、通販関連では海外でのEC強化にも乗り出していく。現状、海外ではアジアや米国に実店舗を展開しているが、まず、中国に関しては昨年末からホームファッションのECを本格的に開始した。今年3月末時点での同国でのEC取扱商品数は3000点となり、前年の約6倍まで急拡大することができていることから、さらなる伸びを目指していく。
米国についてもウェブでの販路をテコ入れしていく考え。
ライフはアプリに加え宅配会社
スーパーマーケットチェーンを展開するライフコーポレーションは、ネットスーパー事業の強化に向けた施策に相次ぎ取り組んでいる。3月8日に初となるネットスーパー用アプリ「ライフネットスーパーアプリ」の提供を開始し、4月7日にはラストワンマイルを担う新会社「株式会社ライフホームデリバリー」を設立。ネットスーパー事業のさらなる成長に向けて体制を強化している。
アプリは、既存のブラウザーによるネットスーパー、アマゾンジャパンを通じた販売に加え、ライフのネット販売の3つ目のアプローチと位置付けている。全278店舗のうち首都圏と近畿圏の合計61店舗で展開するネットスーパー「ライフネットスーパー」をより利用しやすくするために提供するもので、店舗での顧客体験をネットスーパーでも可能にし、顧客のライフへのロイヤルティ向上につなげる。
アプリの主な特長は、「一覧性の高い売り場」「ライフこだわりのプライベートブランド商品」「お気に入り商品を保存できるマイリスト」。スマホアプリでの素早く快適な操作性で豊富な品ぞろえから便利に買い物でき、セール商品などのチェックができ、多様なPB商品の人気商品が購入できる。マイリストではいつも購入商品を「お気に入り」に設定しておくと、アプリの下タブから確認でき、定番として毎回購入する商品は一括でカートに追加できるようにして買い物の時短を可能にするという。
4月7日に設立したライフホームデリバリーは、ライフのほか、スリーエスコーポレーション、間口ロジ関東が出資。ネットスーパー事業の宅配のほか、来店客から依頼を受けた買物商品のデリバリーも受け持つ。資本金は3000万円で、出資比率はライフ40%、スリーエスコーポレーション50%、間口ロジ関東10%。
ネットスーパー事業の拡大は、「システム」「オペレーション」「配送」のそれぞれが高いレベルで実現できることが必要とし、アプリに続き、物流の専門的知見やノウハウを持つ間口ホールディングスの子会社2社と新会社を設立した。