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リモートワーク、機能させるポイントは? コミュニケーション推進とやる気喚起がカギ

2020年 7月16日 07:21

 新型コロナウイルスの感染拡大を機に変化を見せた働き方。緊急事態宣解除後もリモートワークを継続する通販実施企業も多い。様々な利点がある一方、事業を推進していく上で重要な社員同士の信頼関係が築きにくくなったり、働くモチベーションが低下するなどのデメリットもある。第2波到来が懸念される中で今後、ますます不可欠な働き方になりそうだが、十分に機能させるには社員間のコミュニケーション促進ややる気の喚起などがカギとなりそうだ。注目すべき各社の取り組みからそのポイントを見ていく。
 
オンラインで研修や飲み会

 ジャパネットホールディングスでは新型コロナウイルスの感染拡大を受け、4月から従業員の半数以上がリモートワーク体制に移行。4月14日から5月29日までのリモートワーク下において、社員間のコミュニケーション促進やモチベーションの維持をサポートすべく、様々な取り組みを行った。

 その1つが”朝礼”だ。木曜を除く毎日、午前9時から30分間にわたって動画共有サイト「ユーチューブ」を活用して全社朝礼のライブ動画を配信した。朝礼ではジャパネットグループ会社10社のそれぞれの部門ごとに役員や部門長が今、取り組んでいること。また、これから取り組もうとしていることなど現状や方向性などを報告したり、同社グループの産業医からコロナの感染予防のための情報提供などを行ない、毎回、朝礼終わりに俳優でフィットネスインストラクターとしても知られる美木良介さんによる5分ほどのトレーニング動画(録画)を配信するもの。

 朝礼は毎回、発表内容について髙田旭人社長とも検討しながら決定し、前日の夕方に翌日配信分のリハーサルを実施するなど力を入れており、従業員からも「各社が取り組んでいることがよく分かった」「会社の動きを知ることができた」「在宅だったが会社とのつながりを感じることができた」などの声が寄せられたという。

 ”朝礼”に加え、リモートワーク中の従業員に向け、外部の専門家などを講師として招き、研修を実施。社員向けの研修はこれまでも毎週木曜日に実施してきたが、同期間はオンライン配信形式として、「最高品質のWEB会議術」などテーマに在宅勤務の環境下で有効となる研修を行った。特に「睡眠マネジメントで仕事力10倍!」をテーマとした睡眠研修などが従業員からは好評だったよう。同研修では実際に寝転がり、自分に合った枕の調整方法などをその場で実践するなど、在宅環境だからこそ実行できる内容だったことなどが受けたようだ。また、外出自粛で増えた自炊をサポートすべく、実施した料理研修なども好評だったよう。同研修は料理研究家を招いて主菜の「ジンジャーチキン」のほか、副菜の「ベビー帆立とピーマンの和え物」、汁物「オクラとワカメのみそ汁」の3品の作り方を1時間の配信時間の間に東京・麻布の事務所で実際に料理をしながら紹介した。料理番組さながらの内容で社員からも反響が高かったようだ。

 仕事面でのモチベーションアップのための施策だけでなく、自由参加の「オンライン飲み会」も積極的に実施した。毎週月・水・金の週3回実施し、例えば「鉄道を愛する者~鉄オタの会~」や「日本酒好きの会」「英語を勉強したい人の会」など開催日ごとに2~3つのテーマを設定。テーマ別に興味のある従業員が入退室や飲食を自由な環境で集まり、2時間程度を目安に開催した。期間中は合計22回、全47テーマのオンライン飲み会が催された。オンライン飲み会の効果については「拠点やグループ会社、勤続年数などの垣根を超え、オンラインならではの交流ができ、また在宅業務でこもりがちになる環境へのリフレッシュとなった」(同社)とし、社員同士のコミュニケーションの促進に一定の効果があったという。

 ジャパネットホールディングスでは6月から段階的にリモートワークを解消し、現時点では原則、出社勤務となっていることから現状、リモートワークは継続していないが、今回のコロナ禍におけるリモートワークに対応して実施した各種の施策によって「所属会社以外の動きなども知ることができ、全グループ会社それぞれで困難なことがありながらも、みんなでがんばろうという想いを共有できた」(同社)などと、その効果を感じているようだ。

社員の家族含め交流に広がり

 ランクアップは、会社が積極的にサポートすることで、テレワークで希薄になりがちな社員間のコミュニケーションの活性化を図る。

 社内ではこれまで、手芸部や英語部、頭脳ボードゲーム部、バレーボール部など多くの部活動が行われていた。活動費として1人2000円を補助。ランチ会は1人1000円を支給していた。

 新型コロナの感染拡大を受けた2月のテレワーク移行後は、「Zoom」を活用した「オンライン部活」、「オンラインランチ会」を開始。活動費の補助も継続し、オンライン部活では自宅から活動に参加することで、社員の子供や母親を交え交流が活性化するなど、広がりが出始めている。外出自粛の中、自宅で過ごす時間が充実したものになっているという。朝5時~22時の間で小刻みに勤務できる「スーパーフレックス制度」も導入。子育てと仕事の両立を図りやすいようサポートする。

 月1回、3時間ほど行っていた全体会議もオンライン開催に変更。会場の確保が不要になり、出退室を自由にした。こうした状況を受けて、開催回数を月2回に変更。より効率よく情報共有が進むなど、プラスの効果が得られている。毎朝行う朝礼もオンラインで開催。子育て中の社員が多いことから子供を交えて「オンラインラジオ体操」も行う。

社員をインスタグラマーに

 一方、休止を余儀なくされたのが、「会える通販」の名称で行う顧客との交流イベントだ。18年9月に開始。愛用者のロイヤリティ向上を図り、全国で新製品お試し会や美容イベント、岩崎裕美子社長自ら参加する食事会を行ってきた。昨年は約1000人の顧客と交流を図り、直接、さまざまな要望を聞くことで製品開発に活かしてきた。

 こうした接点を持つことが難しくなる中、毎週金曜日に公式インスタグラムでライブ配信を開始。社員自ら製品紹介や使用方法の説明を行い、顧客の質問に答える双方向のコミュニケーションを図っている。4月には、岩崎社長自らが愛用製品や顧客の質問に答えるライブ配信も行った。「会える通販」もオンラインで開催することで、全国各地から参加が可能になるなど、より幅広い地域の顧客との接点が増えている。

 外出自粛の影響を受けたSNS利用の時間増を追い風に、社員全員を「インフルエンサー」にするプロモーションも始めた。

 社員全員がインスタグラムの企業用アカウントを開設。「インスタグラマー」として自社製品の紹介などを行う。

 投稿内容は自由だが、社員のプロフィールURLから製品購入に至った場合は、一定の成果報酬を付与する制度を導入。業務時間に運用に充てる時間を設けたり、インスタグラムと相性のよい写真素材を提供して、社員のモチベーションにつなげている。

 社員のフォロワー数は平均4600人、総フォロワー数は約25万人に達している。中には、3万人近いフォロワーを抱える社員もいる。製品を愛用する社員自ら使用方法のポイント等を発信することで、より親しみやすいプロモーションが実現できるとみる。顧客の声を直接聞けるコミュニケーションツールにもなっている。

 化粧品ブランド「マナラ」の主要顧客層は40代以降の女性層。今後、インスタグラムなどSNSの活用を強化することで、20~30代の女性層など若年層へのアプローチも強化していく。

 
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