TSUHAN SHIMBUN ONLINE

インターネット・ビジネス・フロンティア株式会社
記事カテゴリ一覧

【通販支援の仕掛人に聞く Empath 代表取締役CEO 下地 貴明 氏】 顧客満足度を自動測定、コールセンターの音声データから、音響や感情を解析

2020年 1月20日 13:30

 音声感情解析AIを開発するEmpath(エンパス)は昨年11月に、コールセンターなどの音声データから顧客満足度を自動で測定するサービス「EVG」の提供を始めた。従来はアンケート調査や音声データをランダムに抽出して顧客満足度を調べていたのに対して、同サービスでは音響と感情解析の技術を使い、全通話を測定することが可能。通販向けの顧客対応に有効だとするエンパスの下地CEO(=写真)に、サービスの特徴などについて聞いた。











 ――音声から顧客満足度を自動測定する「EVG」の提供を始めた。

 「これまでのコールセンターの顧客満足度測定では、IVR(自動音声応答装置)や電話の後にメールが届くなどお客様自体がアクションをして初めて回答される仕組みのため、回答採取率が非常に低い。それを避けるために第三者機関に委託して人が聞き起こしたり、あるいは社内のSV(管理者)が実際の通話を聞いて満足度を判断するということをやっている。しかし全通話を聞いて確認するのは難しい。『EVG』は音声データさえあれば人手がかからずすべての音声に対してリアルタイムで自動的に顧客満足度が分かる」

 ――「EVG」の特徴は。

 「製品は3種類。1つ目の『EVGアナリシス』は企業から音声データを頂戴して、最短5営業日以内で解析結果をレポートで提出する。レポートではサマリーのほかに、顧客満足度指数の上位10通話、下位10通話を出す。顧客満足度が高い音声群が実際にどのような通話だったか、お客様がどんな感情だったかについての分析結果や、考察をまとめて提供する。これはお試し版のような位置づけで、200通話で9万8000円」

 「顧客満足度指数の上位と下位10通話ずつの生データも出すので、例えばSVがそれを聞いて結果に納得してもらえれば無制限に使える『EVGアプリケーション』を用意している。これは1年間120万円で、大量の音声データを無制限に自社内で解析できる。そして業種業態に合わせて細かくチューニングし、満足度の測定結果からサポート戦略の構築などさらに踏み込んだ取り組みを行う『感情解析コンサルティング』というサービスもある」

 ――どのように顧客満足度を測定するのか。

 「お客様の音声に対して解析を行うが、その音声の中でも終話に近い部分、要はお客様が電話を切る手前の音声に対して感情解析と、音の物理特徴量を解析している。例えば、困りごとがあって電話をした際に応対内容に満足した場合、お客様は発話の数も多くなり、ピッチも少し高めで、ゆったりと話すというのが音響特徴として散見される。逆に、満足していない場合だと発話は少なくなり、ピッチは下がって、スピードも速くなる。そういった音響特徴と、他の音響パラメーターを組み合わせて、顧客満足度を測定する。実際にいろいろな会社とPoC(概念実証)をやっているが、9割弱くらいの精度で測定できている」

 「このサービスは健康食品や化粧品を扱う通販企業さんからご興味をいただいている。通販の場合、電話応対で満足度が低いと再購入に至らないケースが多い。ある化粧品会社の場合、半年間で離脱する人の割合が40%~50%だという。そこで継続率を高めるという観点から、コールセンターでの満足度をもとに手厚くサポートをすべき人が分かれば、退会せずに継続してもらい、LTVが良くなる」

 ――離脱しそうな顧客を見極めフォローすることでリテンションにつなげることが可能だと。

 「ある化粧品会社はランダムにフォローアップのアフターコールをしており、アフターコールをすればLTVは向上した。ただ、どの人にアフターコールをすべきかが分からなかった。そこで満足度という尺度でフォローすべき相手が分かればいいという話もしている」

 ――満足度の低下を防ぐという発想だ。

 「もちろん応対を均一化していくというのが重要になるが、実際にどの通話が満足度を下げたかが分かると、次の打ち手につながる」

 ――コールセンターはこれまで、SVの直感でオペレーターの応対を評価していたところがある。そこには論理的な裏付けはなく、SVの経験値によるところが強かった。顧客満足度を客観的に数値化できるとオペレーターにとっても良いのではないか。

 「改善のKPI(重要業績評価指標)しか見ていないと、お客様が満足していなくても、対応を簡略化しコール時間を短くして受電率を上げたことで、コストを削減できて良かったという話になるが、最終的にはブランド毀損を招いていることもある。もともとは顧客満足度を上げるというのがコールセンターを作る意味だったのが、今はコストを下げるという話になりがち。顧客満足度の向上をオペレーターの頑張りとして評価できるようになれば、お客様にとってだけでなく、オペレーターのモチベーション向上にもなり、コールセンター業界で働くのが面白くなるのではないか」
 
楽天 通販のよみもの 業界団体の会報誌「ジャドマニューズ」 通販売上高ランキングのデータ販売