今秋、楽天が運営する仮想モール「楽天市場」の一部出店者が中小企業等協同組合法に基づく事業協同組合の設立を目指す団体「楽天ユニオン」を結成した。同法において、中小企業が参加する事業協同組合は、労働組合と同様にメーカーなどとの団体交渉権が認められている。楽天ユニオンでは事業協同組合を立ち上げ、送料問題や「違反点数制度」などに関して楽天と交渉していきたい考えだ。
同団体には現在、約430店舗が参加しており、全出店店舗の1%弱に達した。公式サイトのほか、ユーチューブやツイッターなどで情報を発信しているほか、代表の勝又勇輝氏が積極的にメディアにも露出している。
12月19日には公正取引委員会が、仮想モール「楽天市場」において、送料無料となる購入額を税込み3980円で統一するという施策について、「独占禁止法違反の恐れがある」として懸念を示したことが一部で報道された。勝又氏は「公取委が警告しているにもかかわらず、来年3月18日に送料無料ラインを導入することを店舗に通知した。これは明らかにおかしい」と語る。
来年1月22日には、公取委に対して店舗から集めた署名を提出する予定だ。今回の送料無料関連だけではなく、店舗がアフィエイターに支払う報酬が増額になった件など、提出する署名は4件に渡っており、トータルでは600弱の店舗が署名しているという。
また同団体では、ルール違反や規約違反を犯した出店店舗に点数を付与し、累積点数によって罰則を課す「違反点数制度」も問題視している。「故意に起こしたミスではないのに強制退店させられた例もかなりある。同制度は出店時の契約には明記されていない『違反』が多く、規約変更の域を大幅に超えた部分まで規制しているので無効だと思っている。今後は罰金返還を求めて集団訴訟を起こす考えもある」(勝又氏)。
積極的に意見を発信する同団体だが、まだ楽天には連絡していないという。「こちらが何を言っても聞く耳は持たないと思うので、現段階では連絡を取るつもりはない。やはり公取委や政治家に動いてもらうのが楽天には一番効果的ではないか。近いうちに全国会議員に対し、楽天がこれまで実施してきた規約変更をまとめた内容の陳情メールを送る予定だ。来年策定される『デジタル・プラットフォーマー取引透明化法案』に活かしてもらいたいと思っている」(同)。
今後は楽天だけではなく、アマゾンやヤフー、KDDIなど他企業が運営するモール出店者も参加できる横断的な団体にする予定で、準備を進めている。
“協賛金”に似た構図
<楽天ユニオンの顧問弁護士に聞く>
早稲田リーガルコモンズ法律事務所の川上資人氏(=
写真)に「送料無料ライン統一」について聞いた。
――楽天ユニオンの顧問弁護士を務めている。
「中小企業が巨大なプラットフォーマーとどう伍していくか。私はウーバーイーツ配達員の組合(ウーバーイーツユニオン)にも関わっているが、種々の問題がマスコミで報じられたことで、配達員に保険が適用されるなどの成果があった。メディアとタッグを組むことで世論を味方につけなければいけない」
「法的な運動と社会的な運動を両輪で進める必要がある。楽天ユニオンの場合、労働組合法は適用されないので余計不利だから、社会的な運動はより大事になる。送料無料ライン導入は店舗に不利益を与えるという点が分かりやすいので、ワンイシューとしてピックアップし、世論に訴えていくのが良いのではないかと助言した」
―ー今回の施策は独占禁止法違反にあたると考えるか。
「例えば小売りが納入業者に協賛金を求めるのは『優越的地位の乱用』の典型例。今回の事例は協賛金ではないが、似た構図だと思う。『3980円で送料無料』を打ち出しても楽天にはリスクはなく、コストを負担するのは店舗だ。これは弱い側である納入業者が協賛金を上納するのと『優越的な地位に基づいて金銭の負担を求められた』という点で似ているのではないか。このまま楽天が突っ走るのであれば、公正取引委員会に申告して動くように求めていくし、いろいろな法的手段を使う。楽天はタウンミーティングなどで店舗に説明しているというが、こうした動きがある以上、理解を取り付ける活動が失敗しているということを自覚すべき」
―ー仮想モールとしての売り上げが増えるので、出店店舗にもメリットがあるというのが楽天の言い分だ。
「全体として売り上げが伸びたとしても、割を食う店舗は出てくるはず。『送料を価格に転嫁すればいい』という主張もしているが、景品表示法上の有利誤認という違法行為をやれと言っているようなものだ。送料無料をうたっているのに、送料を価格に乗せているだけだとしたら、景表法上問題があると思う。その場合摘発されるのは店舗だ」
―ー協同組合設立を目指している。
「団体交渉の中で、店舗の意思と楽天の意思をすり合わせ、お互いに妥協できるところで折り合いをつけて協約を結び、新しい規約を作る。その際、多数の店舗が納得できなければ、団体交渉に基づく協約の成立はない。楽天ユニオンのライングループなどを見る限り、かなり多数の店舗が『送料無料ライン』に合意していない。全員が納得する必要はないが、店舗から最大公約数的な理解は得られていないのでは」
「協同組合は4人以上いれば発足でき、法律上は楽天との団体交渉権が得られる。ただ、あまりに少数では店舗の意見を代表しているとはいえない。なるべく多くの店舗が加入する必要はある」
同団体には現在、約430店舗が参加しており、全出店店舗の1%弱に達した。公式サイトのほか、ユーチューブやツイッターなどで情報を発信しているほか、代表の勝又勇輝氏が積極的にメディアにも露出している。
12月19日には公正取引委員会が、仮想モール「楽天市場」において、送料無料となる購入額を税込み3980円で統一するという施策について、「独占禁止法違反の恐れがある」として懸念を示したことが一部で報道された。勝又氏は「公取委が警告しているにもかかわらず、来年3月18日に送料無料ラインを導入することを店舗に通知した。これは明らかにおかしい」と語る。
来年1月22日には、公取委に対して店舗から集めた署名を提出する予定だ。今回の送料無料関連だけではなく、店舗がアフィエイターに支払う報酬が増額になった件など、提出する署名は4件に渡っており、トータルでは600弱の店舗が署名しているという。
また同団体では、ルール違反や規約違反を犯した出店店舗に点数を付与し、累積点数によって罰則を課す「違反点数制度」も問題視している。「故意に起こしたミスではないのに強制退店させられた例もかなりある。同制度は出店時の契約には明記されていない『違反』が多く、規約変更の域を大幅に超えた部分まで規制しているので無効だと思っている。今後は罰金返還を求めて集団訴訟を起こす考えもある」(勝又氏)。
積極的に意見を発信する同団体だが、まだ楽天には連絡していないという。「こちらが何を言っても聞く耳は持たないと思うので、現段階では連絡を取るつもりはない。やはり公取委や政治家に動いてもらうのが楽天には一番効果的ではないか。近いうちに全国会議員に対し、楽天がこれまで実施してきた規約変更をまとめた内容の陳情メールを送る予定だ。来年策定される『デジタル・プラットフォーマー取引透明化法案』に活かしてもらいたいと思っている」(同)。
今後は楽天だけではなく、アマゾンやヤフー、KDDIなど他企業が運営するモール出店者も参加できる横断的な団体にする予定で、準備を進めている。
“協賛金”に似た構図
<楽天ユニオンの顧問弁護士に聞く>
早稲田リーガルコモンズ法律事務所の川上資人氏(=写真)に「送料無料ライン統一」について聞いた。
――楽天ユニオンの顧問弁護士を務めている。
「中小企業が巨大なプラットフォーマーとどう伍していくか。私はウーバーイーツ配達員の組合(ウーバーイーツユニオン)にも関わっているが、種々の問題がマスコミで報じられたことで、配達員に保険が適用されるなどの成果があった。メディアとタッグを組むことで世論を味方につけなければいけない」
「法的な運動と社会的な運動を両輪で進める必要がある。楽天ユニオンの場合、労働組合法は適用されないので余計不利だから、社会的な運動はより大事になる。送料無料ライン導入は店舗に不利益を与えるという点が分かりやすいので、ワンイシューとしてピックアップし、世論に訴えていくのが良いのではないかと助言した」
―ー今回の施策は独占禁止法違反にあたると考えるか。
「例えば小売りが納入業者に協賛金を求めるのは『優越的地位の乱用』の典型例。今回の事例は協賛金ではないが、似た構図だと思う。『3980円で送料無料』を打ち出しても楽天にはリスクはなく、コストを負担するのは店舗だ。これは弱い側である納入業者が協賛金を上納するのと『優越的な地位に基づいて金銭の負担を求められた』という点で似ているのではないか。このまま楽天が突っ走るのであれば、公正取引委員会に申告して動くように求めていくし、いろいろな法的手段を使う。楽天はタウンミーティングなどで店舗に説明しているというが、こうした動きがある以上、理解を取り付ける活動が失敗しているということを自覚すべき」
―ー仮想モールとしての売り上げが増えるので、出店店舗にもメリットがあるというのが楽天の言い分だ。
「全体として売り上げが伸びたとしても、割を食う店舗は出てくるはず。『送料を価格に転嫁すればいい』という主張もしているが、景品表示法上の有利誤認という違法行為をやれと言っているようなものだ。送料無料をうたっているのに、送料を価格に乗せているだけだとしたら、景表法上問題があると思う。その場合摘発されるのは店舗だ」
―ー協同組合設立を目指している。
「団体交渉の中で、店舗の意思と楽天の意思をすり合わせ、お互いに妥協できるところで折り合いをつけて協約を結び、新しい規約を作る。その際、多数の店舗が納得できなければ、団体交渉に基づく協約の成立はない。楽天ユニオンのライングループなどを見る限り、かなり多数の店舗が『送料無料ライン』に合意していない。全員が納得する必要はないが、店舗から最大公約数的な理解は得られていないのでは」
「協同組合は4人以上いれば発足でき、法律上は楽天との団体交渉権が得られる。ただ、あまりに少数では店舗の意見を代表しているとはいえない。なるべく多くの店舗が加入する必要はある」