楽天の「楽天市場」 3980円で送料無料に、基準統一し流通総額増へ
2019年 8月 8日 15:30
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8月1日に横浜市内で開催された「Rakuten Optimism 2019」における、出店者向けイベントで、三木谷浩史社長が明らかにした。
同社では、2000億円かけて自社物流網を整備する計画で、すでに700億円を投資しているという。「皆さんの物流を根底から支えていきたい」(三木谷社長)としており、出店者の物流業務を請け負うサービス「楽天スーパーロジスティクス(RSL)」を拡大することで店舗をサポートしたい考えだ。
具体的には、千葉県習志野市、神奈川県大和市に新たな物流センターを開業する。また、2月に提携した関通が保有する、兵庫県尼崎市の物流センターを、RSLの物流拠点として活用しており、今後も同様に3PL業者との提携を進めていく計画だ。尼崎の倉庫も含めると、全国8カ所に物流センターを抱えることになるが、延べ床面積でみると、楽天市場で流通する荷物(年間約3億個)の約半分をまかなえる体制が整ったという。
自社配送サービス「楽天エクスプレス」に関しても、RSL利用店舗の荷物出荷を開始するなど拡大しており、現在は人口カバー率30%だが、年末までに60%まで上げたい考え。将来的には80%まで高めていく。「(RSLは)店舗にとっては経済的にも有利だし、オペレーション面でも店舗運営に集中できる。ユーザーにとっては安心で早く、便利になる」(三木谷社長)。
送料に関しては、「ECサイトの送料満足度調査」において、ユーザーの64%が「購入額による送料無料ラインを設けることを望んでいる」という調査結果があることから、全店舗による統一ラインを決める。
同社では今年、全店店舗を対象に約3カ月間の実証実験を行った。一部ユーザーに一部店舗で送料無料となるクーポンを配布。複数種類のクーポンを配布したが、注文単価下落と購入数増加のバランスが取れていたのは3980円だったという。同社によれば、「実証実験の結果やさまざまなユーザー調査結果などを総合的に判断」(EC広報課)して、この額に決めたという。3980円の場合、購入金額は15%、新規購入者数14%、それぞれ増えた。新制度の導入で「10%以上の売り上げの伸びが望めるのではないか」(三木谷社長)とする。
来年2~3月にも新制度を導入する。3980円以下の送料無料ラインを設定することも可能。ポスト投函型や、160サイズ以下で発送できる商品が対象で、冷蔵・冷凍商品や大型商品は対象外となる。また、北海道、九州・沖縄、離島なども同一料金に設定する。例えば沖縄に配送する場合、2000円~3000円の中継料を徴収する店舗が多いが、同社では「ネット販売をメインストリームにするには必要な対応」(EC広報課)と説明する。
同社の今第1四半期における国内EC流通総額は、前年同期比13・3%増だった。これは「楽天トラベル」なども含んだ数字となるが、楽天市場単体でも送料を統一することで、これまでを上回る高い成長率を目指したい考えだ。
ただ、税込み3980円以上で送料無料ラインを設定している店舗が一定数いるため、このままの価格設定では採算が悪化する恐れもある。三木谷社長は「価格調整をしてもらった上で、とにかくユーザーにとって分かりやすくすることが重要だ」と強調した。
RSLは全国統一料金であるほか、アマゾンの「FBAマルチチャネルサービス」を意識した料金設定となっていることから、コストメリットをアピールすることで利用社数を増やす。
現在、RSLを利用して楽天の倉庫から出荷している荷物は楽天市場全体の10%(直販含む)。2年以内に同社が保有する倉庫から出荷する荷物の比率を50%まで高めたい考えだ。さらに、「他の仮想モールに出店している店舗など、在庫を全て当社に預けることが難しい店舗様への支援も検討」(EC広報課)し、集荷・持ち込みサービスを開始する。こうした店舗は楽天市場の出荷分を同社倉庫に預けることも可能になるという。なお、集荷・持ち込みサービスの料金設定は決まっていないが、「魅力的な価格となるよう検討している。決まり次第、案内する」(同)という。