プラットフォームを味方につけろ!賢いEC活用のヒントを探る【第1回】
2019年 3月25日 15:21
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2024年11月21日 12:00
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『アカウントを広い視点で見る企業が勝ち残っていく』
──こんにちは。第1回目がスタートしました。この連載ではさまざまなプラットフォームに焦点を当て、上手く使いこなす方法を探っていきます。ご説明いただくのはデータフィードやデジタル広告事業を手がけるフィードフォースの岡田風早さんです。よろしくお願いします。
岡田 よろしくお願いします。まず連載を始めるにあたって、そもそもプラットフォームとどう向き合うべきかということに少し触れてみたいと思います。
プラットフォームというのは、たくさんの人が集まって情報やコンテンツを共有する場です。場合によってはそこで商取引も行われます。このプラットフォームは今では普通に存在し、ややもすれば無料で使えるのが当たり前というような意識になってしまいかねませんが、そもそもプラットフォームの運営には人材や技術などの面でかなりの労力を割いています。活用する企業ももそこに対して一定のリスペクトを持つことが必要だと思います。
──プラットフォームを維持するのも大変で、運営は決して楽じゃないということですね。
岡田 そうです。仮に仮想モールで何らかのサービスが無料から有料になると、利用している企業がナーバスになるのはもちろん理解できます。しかし、そもそも無料で使えていたのがほとんど奇跡に近いことだったという認識を持つことが大事ではないでしょうか。
仮想モールだけでなく、フェイスブックやツイッター、LINEなどのSNS系のプラットフォームが運営方針を変えたり、料金体系を見直す背景には明確な目的があります。利用する側も何でも無料で利用できるのは当たり前ではないんだということを頭の片隅に置いておくと良いかもしれません。
LINEは今、おそらく一番安定して強い
──では、第1回目としてLINEをとりあげます。
岡田 LINEはおそらく日本で一番使われているプラットフォームではないでしょうか。
──2018年末時点で日本国内の月間アクティブユーザーは7900万人にのぼっています。
岡田 今、一番安定して強いと思います。今や電話やメールに代わるものとして企業も個人も使用しています。
──2018年には複数あった法人向けアカウントを「LINE公式アカウント」に一本化すると発表がありました。新アカウントでは料金プランも変更になります。
岡田 これには賛否両論ありました。要約すると、エンタープライズ(大企業)と中小企業では見え方が違っています。エンタープライズ側からすると、アカウントが作りやすくなったというメリットが大きいでしょう。これまでであれば公式アカウントやビジネスコネクトアカウントを作るとなると、少なくとも月額50万円以上かかるため、社内で予算を確保するのが難しかったわけです。それが新アカウントでは月額固定費が無料から使えます。となると稟議も通しやすくなり、EC担当者からするとフットワーク軽くLINE活用に乗り出せます。
──確かに新たな料金プランは「フリープラン」「ライトプラン」「スタンダードプラン」の3種類あり、それぞれ月額固定費は無料・5000円・1万5000円です。ただ、従量課金でたくさんメッセージを送ればそれだけ高くなります。エンタープライズ系でも新しく開設する企業はともかくとして、これまで運営していたところは値上がりになるのではないでしょうか。
岡田 もともとビジネスコネクトは通数課金だったため、担当者はそこのコストを気にしながら使っていました。確かに友だち数が多い公式アカウントで一斉配信だけをしていた企業は値上がりになるケースもありますが、そこはユーザーファーストで個別配信にすることで対応する必要があります。
──なるほど。一方の中小企業側の影響はいかがですか。
岡田 まず新規にアカウントを開設するところは、新プランについて「そういうもの」という認識ですんなり始めると思います。以前から利用していた中小企業の多くはLINE@アカウントを使っています。月額利用料も3万円程度でLINE@の機能をフル活用していた企業からすると、新しい料金体系では値上げになるケースがあります。
──LINE側はSMB(中小企業)強化を掲げていますが、今回の新料金プランはそれに逆行していませんか?
岡田 そこだけを見ると確かに逆行してるように見えますが、LINEの価値はそこだけではありません。実際、LINE@をしっかり使いこなしている企業は、通販サイトの購入完了や発送完了の通知をLINEで行っていますので、そこが通数課金になってしまうとかなりコストアップになります。かといってその機能をやめてしまうと、今度はユーザー側が不便になるので、改めて費用対効果を見直す必要があります。
頭で重要性を理解していても実践は簡単でない
──今回のLINEによるアカウントリニューアルですが、2018年12月から新プランの提供を始め、今春にも旧公式アカウントやLINE@の一本化を行うようですが、この動きをどう見ていますか。
岡田 LINEはクライアントファーストではなく、ユーザーファーストなのです。ユーザーにとって重要でないメッセージがたくさん届いて「未読」のものが貯まるという状態ではLINEのメッセージの価値が下がってしまいます。そこでユーザーにとって最適なタイミングで最適な内容のメッセージを増やしていこうということだと思います。
LINE側としても、それぞれのユーザーに対して個別配信できるようにAPIを公開してます。これはメッセージだけでなく広告でも同じで、配信の精度を高めてよりターゲットに対して明確にリーチできるようにしたいのでしょう。もっと言うと、こうした動きはLINEだけでなく、フェイスブックもアマゾンも同様です。
そうした大きな変化の中でLINEの企業アカウントもシフトチェンジしています。
──具体的にはどのように変わっているのでしょか。
岡田 最初はスタンプ配信などによる集客ツールでしたが、徐々に企業アカウントでできることが増えました。その結果、ユーザーがその企業を「友だち」に追加したくなるような情報発信が重要になってくるのです。企業がユーザー目線で情報を提供してファン化につなげていくためには、一斉配信ではなくユーザーごとにメッセージを出し分けるような「個別配信最適化」が求められます。しかし、企業側は頭ではその重要性を理解していてもそれを実践するのは簡単ではありません。
──「実践」のためには何をすればよいのでしょうか。
岡田 チャットボットやMAツール、ウェブ接客などサードパーティのツールがある程度出そろっています。ただ、運用コストや費用対効果が見えづらいという課題があり、積極的に取り組んでいる担当者はまだ多くありません。もう少しツールが進化することが必要でしょう。もちろん自動化ツールは必要ですし、そこで結果がでれば運用者もさらにやる気が出ます。いずれにせよ個別配信のためにはツールはマストと言えます。
スタンプは単発キャンペーンに限られるのでは
岡田 今回の一本化は、LINEアカウントの使い方を見直すいい機会だと思います。1to1のコミュニケーションは企業側ももちろんやりたいんですが、なかなかリソースが足りず後回しにしてきました。それがこれを機にシステム面や人材面など現場も含め、動かざるを得なくなったとも言えます。
──新プランではメッセージが従量課金になるため、今までのようにスタンプでユーザーを獲得してメッセージを一斉配信するといったことはなくなるのでしょうか。
岡田 確かに個別配信最適化の動きとスタンプはうまく合わないと思います。今後スタンプを使うとすると、単発のキャンペーンなどに限られるのではないでしょうか。新製品の認知度向上とは相性が良いですが、自社サービスを継続的にアピールするといった施策にははまらないでしょう。
企業側はこれまでスタンプに充てていた予算を広告にまわすようになるのではないでしょうか。実際、LINEも広告メニューを増やしているので、企業がLINEを活用する際の予算配分が変わってくると予想しています。LINEの広告まわりは後発ですので、今後は精度が上がっていくと期待できます。
広告が充実すれば入り口から出口まで、つまり集客から成約までLINEでできるようになり、結果的に運用の鍵となる企業アカウントの価値も高まるでしょう。その意味ではこれからはメッセージ配信だけでなく、広告運用まで含めて、LINEアカウントを広い視点で見ることができる企業が勝ち残っていくんだと思います。
プラットフォームを味方につけろ!賢いEC活用のヒントを探る(週刊通販新聞姉妹紙の「月刊ネット販売」で連載中)
第2回目「フルファネルとしてのLINE」はこちら
第3回目「Facebookの可能性」はこちら
岡田風早(おかだ・かざはや)
株式会社フィードフォース コーポレート本部長 兼広報・Bizdev チームマネージャー
ソーシャルログイン/ID連携サービス「ソーシャルPLUS」のカスタマーサクセスチームの立ち上げで2015年フィードフォースに入社。その後「ソーシャルPLUS」プロダクトマネージャーを経て現在の役職に至る。LINE社とLINEログインにおけるパートナー契約を中心になって進め、ビジネスコネクトパートナーや大手代理店と連携して、企業のLINEによるOne to Oneコミュニケーション実現の設計に数多く携わる。またメディアへの寄稿やイベント登壇など情報発信も積極的に行っている