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裁判記録の「閲覧制限」は通常、企業秘密やプライバシー、名誉に関することなど限定的な範囲で認められる。日本国憲法第82条に「裁判の公開」の定めがあるように、裁判は公開が原則。密室裁判にせず、国民の監視にさらすことで公正に裁判が行われていることを示すためだ。このため非公開が認められるのも例外的なケース。「閲覧制限」も同様の観点から判断される。
前出の司法関係者が困惑するのは、アマゾンが裁判開始当初から再三に渡り、「閲覧制限」の申請を行っていることにある。「申請し、東京地裁で却下されると、これを不服として高裁に抗告。また却下されると、範囲を微妙に変えて再申請。また却下。その繰り返し」。すでに昨年1月の提訴から1年が経過している。
実態として、「閲覧制限」を申請する対象を変えれば、”異なる申請”扱いになり、裁判手続き上は何度でも申請が可能。申請中も裁判自体は進行するものの、法廷でのやり取りも限定され、その内容は公開されない状態が続く。
ある弁護士は、アマゾンの度重なる申請に「違和感がある」と話す。「通常、申立人(原告)としてプライバシーに関することなど『閲覧制限』したい箇所がある場合、何とか隠したい。だから、対象範囲を微妙に変えながら申請というのも考えられなくはない」という。
ただ、実務面では異なるという。「指定の範囲が広範など却下の蓋然性が高い場合、裁判所側から”範囲をこう調整しては”と助言を受けつつ、制限をかけていくのが通例。だから何度も無謀な『閲覧制限』を繰り返すのは不可解」(前出の弁護士)というのだ。
別の弁護士は、アマゾンの度重なる申請に「自らの裁判の内容を知られたくない意図があり、却下を前提で繰り返し申請しているのでは」との見方を示す。
アマゾンに繰り返し申請を行う意図を聞いたが「係争中のためコメントは差し控えさせていただきます」と答えるのみ。自らの正当性を主張するために起こした訴訟というのであれば、何を隠す必要があるというのだろうか。