楽天が、仮想モール「楽天市場」の送料を統一することが分かった。年内にも送料無料となる購入額を全店舗で統一する方針。楽天市場は出店する店舗によって送料はバラバラだが、ユーザーからは「分かりにくい」という声もあったことから、統一ことで購入前の離脱を防ぐ。分かりやすさを重視することで、競合のアマゾンに対抗、楽天市場の流通総額拡大につなげたい考えだ。
1月30日に都内で開催された出店者向けイベント「楽天新春カンファレンス2019」の講演で三木谷浩史社長(=
写真)が明らかにした。講演では「ECサイトの送料満足度調査」において、「満足している」と回答したユーザーがアマゾンの28・7%に対し、楽天市場は18・2%であること、「ECサイトで送料が原因で購入をやめたケース」ではアマゾンが57・4%、楽天市場が68・3%といずれも劣っていたことや、ユーザーの64%が「購入額による送料無料ラインを設けることを望んでいる」といった調査を紹介。
さらに、南米のマーケットプレイス「メルカドリブレ」が、全店舗の送料無料ライン統一後、流通総額が急拡大した事例も解説した三木谷社長は「楽天市場の強みは店舗だが、弱みは送料に統一性がないこと。ここを克服すれば20~30%の成長が実現できる。楽天の歴史の中でも最大のチャレンジになる。個別の事情はあるだろうが、全店舗が一体となってこの問題に取り組むことで、世界に類を見ない、継続的に大きな成長ができるのではないか」と店舗に呼びかけた。
楽天市場ではすでに80%以上の店舗が購入額による送料無料ラインを設けているが、ラインとなる購入額は店舗によって異なっていた。まずは年内にもこれを統一する。追加の送料が必要となる家具などの大型商品や食品などの冷凍・冷蔵商品は例外となる。今後は送料そのものの全店舗での金額統一も目指す。
ただ、運送会社との契約条件は店舗によって違うほか、利益率は商材によって大きく異なるため、無料ラインの設定額によっては、採算が悪化する店舗が出てくる可能性がある。三木谷社長は今回の施策に対し「楽天グループとしてもかなりの資金を投入する準備がある」と説明。負担増となる店舗への補てんなどが考えられるが「当社としての覚悟を示したもので、具体的なことは決まっていない」(同社EC広報課)という。
大きな方針転換となるが、同社では「(送料無料ラインの通知から実施までは)リードタイムを用意し、きちんと店舗から理解してもらえるようにアナウンスしていきたい」と今後の方針を説明。これまで規約を改正する場合、店舗には書面で通知する形だったが、今回の施策に関する店舗への通知方法や、どのように店舗の同意を得るのかについては「慎重に検討していく」(EC広報課)という。仮想モール運営事業者が不当に利用料や決済方法を変更して出店者に不利益を与えた場合、独占禁止法違反(優越的地位の乱用)の恐れもあるが、同社では「法律を順守するよう注意し、店舗とともに成長できるモデルを目指したい」(EC広報課)とする。
店舗は今回の発表に対し、どんな感想を抱いたのか。アパレル販売のA社では「自社が設定している金額より上がるのか、下がるのか、統一される金額によって変わってくる」と話す。スポーツ用品販売のB社は「一定基準以上で送料を無料にすることを消費者が望んでいるは知っているし、基準がバラバラだと分かりにくいのは確かなので、そこを統一するのは歓迎したい」と理解を示しながらも「今設定している送料無料ラインよりも金額が下がれば困るのは事実なので、楽天が補てんしてくれるのかどうかが気になる」と正直な感想を口にする。アパレル販売C社は「楽天が負担してくれる形で送料無料ラインが下がるのであれば消費者のためになるから良いことだが、店舗が持つとしたら当然採算は悪化する。また、楽天が負担するにしてもそれがずっと続くのか」と疑問を呈する。一方で、家電を販売するD社は、送料無料の商品が大半を占めることもあり、「ユーザーにとって分かりやすくなるので良いのではないか」とする。
やはり、店舗の焦点は「送料無料となる金額がどこに設定されるか」になりそうだ。ただ、あまり高い金額になることは考えにくく、「アマゾンの2000円に近いラインになるのでは」(家電販売のD社)との見方もあるだけに、それよりも送料無料ラインが高い多数の店舗にとっては負担増が気になるところだ。
楽天では送料無料となる金額については今後決める方針だが、「店舗の声を聞いていくことはもちろんだが、楽天市場が成長するための施策なので、ユーザーにとって魅力的な金額であることも必要だ。双方のバランスを考慮したい」(EC広報課)とする。
1月30日に都内で開催された出店者向けイベント「楽天新春カンファレンス2019」の講演で三木谷浩史社長(=写真)が明らかにした。講演では「ECサイトの送料満足度調査」において、「満足している」と回答したユーザーがアマゾンの28・7%に対し、楽天市場は18・2%であること、「ECサイトで送料が原因で購入をやめたケース」ではアマゾンが57・4%、楽天市場が68・3%といずれも劣っていたことや、ユーザーの64%が「購入額による送料無料ラインを設けることを望んでいる」といった調査を紹介。
さらに、南米のマーケットプレイス「メルカドリブレ」が、全店舗の送料無料ライン統一後、流通総額が急拡大した事例も解説した三木谷社長は「楽天市場の強みは店舗だが、弱みは送料に統一性がないこと。ここを克服すれば20~30%の成長が実現できる。楽天の歴史の中でも最大のチャレンジになる。個別の事情はあるだろうが、全店舗が一体となってこの問題に取り組むことで、世界に類を見ない、継続的に大きな成長ができるのではないか」と店舗に呼びかけた。
楽天市場ではすでに80%以上の店舗が購入額による送料無料ラインを設けているが、ラインとなる購入額は店舗によって異なっていた。まずは年内にもこれを統一する。追加の送料が必要となる家具などの大型商品や食品などの冷凍・冷蔵商品は例外となる。今後は送料そのものの全店舗での金額統一も目指す。
ただ、運送会社との契約条件は店舗によって違うほか、利益率は商材によって大きく異なるため、無料ラインの設定額によっては、採算が悪化する店舗が出てくる可能性がある。三木谷社長は今回の施策に対し「楽天グループとしてもかなりの資金を投入する準備がある」と説明。負担増となる店舗への補てんなどが考えられるが「当社としての覚悟を示したもので、具体的なことは決まっていない」(同社EC広報課)という。
大きな方針転換となるが、同社では「(送料無料ラインの通知から実施までは)リードタイムを用意し、きちんと店舗から理解してもらえるようにアナウンスしていきたい」と今後の方針を説明。これまで規約を改正する場合、店舗には書面で通知する形だったが、今回の施策に関する店舗への通知方法や、どのように店舗の同意を得るのかについては「慎重に検討していく」(EC広報課)という。仮想モール運営事業者が不当に利用料や決済方法を変更して出店者に不利益を与えた場合、独占禁止法違反(優越的地位の乱用)の恐れもあるが、同社では「法律を順守するよう注意し、店舗とともに成長できるモデルを目指したい」(EC広報課)とする。
店舗は今回の発表に対し、どんな感想を抱いたのか。アパレル販売のA社では「自社が設定している金額より上がるのか、下がるのか、統一される金額によって変わってくる」と話す。スポーツ用品販売のB社は「一定基準以上で送料を無料にすることを消費者が望んでいるは知っているし、基準がバラバラだと分かりにくいのは確かなので、そこを統一するのは歓迎したい」と理解を示しながらも「今設定している送料無料ラインよりも金額が下がれば困るのは事実なので、楽天が補てんしてくれるのかどうかが気になる」と正直な感想を口にする。アパレル販売C社は「楽天が負担してくれる形で送料無料ラインが下がるのであれば消費者のためになるから良いことだが、店舗が持つとしたら当然採算は悪化する。また、楽天が負担するにしてもそれがずっと続くのか」と疑問を呈する。一方で、家電を販売するD社は、送料無料の商品が大半を占めることもあり、「ユーザーにとって分かりやすくなるので良いのではないか」とする。
やはり、店舗の焦点は「送料無料となる金額がどこに設定されるか」になりそうだ。ただ、あまり高い金額になることは考えにくく、「アマゾンの2000円に近いラインになるのでは」(家電販売のD社)との見方もあるだけに、それよりも送料無料ラインが高い多数の店舗にとっては負担増が気になるところだ。
楽天では送料無料となる金額については今後決める方針だが、「店舗の声を聞いていくことはもちろんだが、楽天市場が成長するための施策なので、ユーザーにとって魅力的な金額であることも必要だ。双方のバランスを考慮したい」(EC広報課)とする。