DIYツールなどのネット販売を行う大都の2017年12月期売上高は、前期比25・3%増の38億2100万円と好調だった。17年8月には大手ホームセンターのカインズと資本業務提携をしたほか、大阪と東京に実店舗を出店するなど、今後を見据えた一手を次々に繰り出している。同社の強みや戦略について山田岳人社長に聞いた。
――工具卸からネット販売に進出して以降、順調に成長している。
「もともとは問屋業を営んでいたわけだが、楽天市場に02年に出店してネット販売に参入し、その後問屋業はやめている」
――14年から実店舗も運営している。
「DIY商品を扱っているので、実際に触ってもらったり、ハウトゥー的な要素もある。つまり『壁紙を買いたいが貼り方が分からないので買えない』という人や『電動工具の使い方が分からない』という人はたくさんいるだろうが、店舗でやり方を教えれば『ネットで買ってみよう』という気持ちになるはずだ」
「ワークショップも定期的に開催しており、東京の店舗には1200人も通ってきている。要は集客手法の一つであり、リスティング広告に月100万円払うのと店舗に月100万円払うのと、どちらがコンバージョンレートは高くなるかということ。実際に、店舗を出店してから会社の認知度は圧倒的に上がっており、通販サイトへの集客につながっている」
――実店舗の役割とは。
「当社の場合、DIYを日本の文化にしたいという目標がある。日本の住まいは不自由で、特に賃貸の場合は自由にいじれない。『DIYに興味はあるがやったことはない』という人をいかに取り込むかが、日本の住環境を変えることにつながると思う。そのための選択肢の一つが店舗であり、ウェブメディア『DIYファクトリーコラム』だ」
「日本では衣食住のうち、衣と食の情報には困らないが、住の情報は不自由で、自分の好きな部屋に住んでいる人がどれだけいるのか。デンマーク語で『居心地の良い時間や空間』という意味の『ヒュッゲ』という言葉が世界中で流行しているが、日本でもこうしたトレンドを根付かせるのが当社の大きなテーマ。そのためにカインズと資本業務提携をした」
――カインズとの提携効果は。
「カインズとの共同仕入れや商品開発は始まっている。また、カインズの一部店舗でもワークショップを開いている」
――カインズが手がけるネット販売と競合することはないのか。
「カインズはホームセンターなので、DIY商品の売り上げは全体の10%程度。当社はDIY商品が100%なので、食い合いはほぼない」
――最近のネット販売の動向をどう見る。
「日本の流通は多重構造になっており、建材関連の業界でも、今まではユーザーの声がメーカーに届いていなかった。ところが、インターネットやSNSの発展で、これまでのメーカー↓代理店↓問屋↓納材店↓工務店↓ユーザーという商流が変化し、メーカーとユーザーが直接つながれるようになってきており、ユーザーがメーカーに影響を与えている。インフルエンサーが発言力を持ち始めているが、『ヒト』を軸としたマーケティングや売り方がとても重要になってきている」
――具体的には。
「当社の場合、『ラブリコ』というDIYパーツブランドの売れ行きが、DIYが好きなインスタグラマーが取り上げたことで大きく伸びた」
「ネット販売の基本は『価格』『納期』『品揃え』だが、その切り口ではアマゾンに勝てない。当社では家具などのプライベートブランド(PB)に注力しており、10月には『DIYファクトリーファニチャー』を発売した。製造小売り(SPA)に寄ってきている。ユーザーからも『こんな商品が欲しい』という声がたくさん来ているし、SNSアプリ『グリーンスナップ』にも約40万人のユーザーがいる。そういう人たちの声を聞きながら商品を作っていく。価格と品揃えはネット販売の基本だが、それだけでは収益は出ない。そのためにPBを販売し、ネット販売の強みと店舗を持っている強み、ウェブメディアがある強みの3つを掛け合わせる。ただ、軸となるのはDIYの基本である『自分らしさ』であり、そこからずらさない」
――PBの売上構成比はどの程度まで上げるのか。
「商品開発のスピード次第だが、半分くらいにはしたい」
――ユーザーの声をどのように取り入れるのか。
「ネットでアンケートを取ったり、店舗で直接ユーザーから困りごとを聞いたりしている。ユーザーと出会える場があるのが実店舗の強み。リアルをいかに使うかが重要になるだろう」
――今後の目標は。
「PBを売っていくこと、さらには店舗も増やしたい。また、株式上場の準備をしているので、きちんと果たして資金調達をし、次の事業につなげたい」
「宅配業者の運賃値上げが問題になっているが、カインズの店舗で商品を受け取れる『クリック&コレクト』的な展開は構想としてはある。もっと進んで、『今日どうしても欲しい』というニーズに応えるために、メーカーの倉庫に取りにいけるサービスも考えている。メーカーの倉庫と当社の通販サイトはAPIで連携しているので実現は可能だ」