スタートアップ企業のミドルフィールドは、これまで買いづらかった車のアフターパーツをウェブで探しやすく、買いやすくして急成長しているようだ。
同社は、トヨタ系のレーシングチームでレースのスポンサー営業やグッズ販売の事業部を立ち上げた中山翔太氏(写真(左))と、スバルの自動車開発に従事しレーサー経験もある片岡伶介氏(写真(右))が意気投合し、"モータースポーツを盛り上げたい"という共通の思いで立ち上げた会社で、片岡氏の実体験から車のアフターパーツは買いづらく、ネットで買いやすい環境を整えればニーズがあると判断してアフターパーツを中心としたECに参入した。
アフターパーツはウェブ上の情報が極端に少なく、気になるパーツがあっても自分の車に適合するのかが分かりづらいため、ミドルフィールドでは昨年4月に通販サイト「ガレージ」(※今年2月に「モタガレ」に名称変更)を開設した際に商品データベースを一から構築。メーカーが販売するパーツごとに商品詳細や材質、塗装の色などの情報とともに適合車種を表示することで利用者の不安解消に努めたのに加え、最寄りのパーツ取り付け店を紹介するほか、問い合わせにも24時間以内に返答できる体制を整備するなど、ユーザビリティーの高いサイトとして総合ECモールなどとの差別化を図っている。
パーツメーカーは全国に1500社程度あり、「モタガレ」は約800社、商品数で約2万パーツを取り扱うサイトに成長しているが、手間のかかるデータベース登録の自動化にもメドをつけており、今年中には取り扱いメーカーと商品数の拡充を図り、10万点の品ぞろえを目指す。また、今後は取り付け店をウェブ上で予約できる仕組みも構築して利用者メリットを高める考え。
カー用品の国内市場は1兆2000億円規模と見られるが、EC化率は3%未満と低く、市場は人口減もあって縮小傾向にあるものの、ECチャネルは伸びる余地が大きいという。
市場開拓に向けては車好きのヘビーユーザーだけでなく、普段はカー用品チェーン店を利用するライトユーザーもターゲットとし、商品面では主力のドレスアップ用やチューニング用パーツの強化に加え、カーナビやドリンクホルダー、アパレルなども充実させる。
集客面では、平日はミドルフィールドで働き、休日はモーターレースに出場する社員もいるため、社内でインフルエンサーを育てる。運営する車とバイクのウェブメディア「モーターズ」ではユーチューブ企画などを始めており、自社スタッフや関係性の深いレーシングドライバーに出演してもらうこともあるようで、話題となるコンテンツを充実させて通販サイトへの導線強化につなげる。
一方で、「車は世界に通用するコンテンツのひとつ」(中山翔太CEO)とし、海外展開を見据える。日本の中古車輸出がアジアを中心に伸びており、日本車に適合するパーツの需要も拡大しているが、海外から簡単に購入できる方法がないため、ミドルフィールドでは日本のパーツメーカーとより強固な協力関係を築いた上で、アジアやハワイを含む米国市場などへの販路拡大を目指しており、海外進出の際は自社でパーツの取り付け店を開発する計画もあるという。
また、足もとではカスタムカーやデモ用車の販売もスタートする。近年、車自体の価格が上がっていることもあり、以前のように自分で一から車をカスタムするよりもカスタムカーを購入する人が増えているため、取引先のパーツメーカーなどが仕入れた中古車にパーツを付けたカスタムカーの販売に乗り出す。同社では、「ゆくゆくはベースとなる車両とさまざまパーツを選んで自分好みのカスタムカーが買えるようにできればいい」(片岡伶介COO)とする。
これまでモータースポーツにたずさわってきた経営陣だけに、最終目標は"レース用の車を作ること"としているが、まずは「モタガレ」を軸に機能とサービスの強化や海外市場に挑戦し、ファーストステップとして売上高100億円を目指す。