イーベイ・ジャパンではこのほど、佐藤丈彦事業本部長が代表取締役社長に就任した。ネット競売大手の米イーベイだが、2000年に日本市場に参入したものの、02年に撤退。現在、日本では通販サイトを展開しておらず、イーベイ・ジャパンは日本企業が海外のイーベイサイトで販売するための支援事業を行っている。今後の方針について佐藤社長に聞いた。
「当時はまだ越境ECが事業者間にそれほど浸透していなかったが、14年頃から越境ECを販売チャネルの一つとして考える事業者が増えてきた。当初は個人のセラー(出品者)も多かったが、現在は事業者が中心。日本の商品を購入するバイヤー(購入者)は北米を中心に世界にたくさんいる」
競売サイトのイメージが強いが、現在は固定価格で売られる商品が中心だ。
「約80%の商品が固定価格。バイヤーは世界で1億6500万人だ。競売が減っているというよりも、固定価格での販売が大きく伸びている。現在、セラー向けにストラクチャーデータという売り上げの分析ができるツールを無料で提供しており、将来的には『どんな商品をどれくらいの価格で売ればいいか』というようなレコメンデーション的な機能も追加したい」
日本からの売れ筋商品は。
「車・バイクパーツ、中古ブランド品、楽器、玩具などに人気がある。特に、品質やアフターサービスの良さが評価されている。また、ブランド品については偽物がないという点も信頼を得ている」
セラーはどのように増やしているのか。
「ポータルサイトからの資料請求による申し込みのほか、伸びているカテゴリーの事業者については、当社から声を掛けるケースもある」
セラーの取り込みという点では、カート事業者との連携も進んでいる。
「近年強化している点だ。すでに連携済みなのはアイルの『クロスモール』、イーレディーの『リスト!』NHNテコラスの『テンポスター』、スマートソーシングの『タテンポガイド』、ソフテルの『通販する蔵』、Hameeの『ネクストエンジン』だ。この1、2年でかなり連携する事業者が増えている」
セラーへのサポート体制は。
「これまではセラーごとに対応していたが、9月から体制を大きく変更した。カテゴリーごとにスペシャリストを置いて対応する形だ。セラーベースだと、トラブル対応が中心になりがちで、将来の売り上げ増を見越したサポートはしにくくなる。『こんな商品が動いている』『こんな商品がこれから来そう』といった情報をセラーに提供したい。商品を準備するのに時間がかかるので、早めのコミュニケーションが重要だ。メールのほか、ポータルサイトを介して情報を積極的に提供する」
「例えば、11月はアメリカで『サイバーマンデー』という大きなセールがあるが、これに向けてアメリカのトレンドや昨年までの傾向を紹介する、といったようなものだ。新商品の場合、海外でどれだけ売れるかというデータがないので、過去の同等商品の販売動向などを提供しないと、セラーは安心して越境ECに取り組めない」
「その他にも、翻訳などオペレーションに関わるサービスにつて、パートナーを介して選択肢を増やしていきたい」
アメリカ以外での販売については。
「バイクパーツなどはオーストラリアで非常に良く売れている。オーストラリアは国外からネットで商品を買うのが一般的なようだ」
中長期的な目標について。
「国内の事業者に利用していただくためにサービスを充実していきたい。2020年には東京五輪を控えているが、インバウンド需要をいかにビジネスに変えるかを課題にしている事業者は多いと思う。ネット販売については、20年以降もビジネスとして成り立たせるため、今後の4年間を使ってどのように体制を整え、顧客を囲い込むかが重要。そのために当社のサービスを活用していただけるよう、努力したい」
社長就任にあたり抱負を。
「これまでとやることが大きく変わるわけではないが、より日本のビジネスにコミットした施策が展開できる点が大きい。グローバルの巨大なマーケットプレイスを対して日本のセラーを売り込まなければいけないわけで、対外的な施策はもちろんのこと、イーベイ社内も含めて、日本のセラーや販売する商品のクオリティーの高さを理解してもらえるようにしたい。言うなれば営業マン的な役割だ。各国のイーベイにはカテゴリーチームがあるので、『日本の商品はこれが売れる』といったような情報をそこに提供するとともに、どうやってバイヤーの目に留まるよう取り上げてもらうかという点も含めて、社内ネゴシエーション的なことをしっかりやっていきたい」
「日本の場合、ゲームやフィギュアなどは予約販売も多いが、現在のイーベイでは数カ月先の商品を予約して買うことができない。そういった機能を追加してもらうための社内調整も進めなければならない」