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西谷義晴社長に聞く、デジタルダイレクトの今後の戦略は?

2010年 5月 6日 16:41

021.jpg テレビ通販事業などを行うデジタルダイレクト(DD)が新体制となり動き始めた。昨年中に親会社が変更、同社が実施した第3者割当増資引き受け、流通大手のイオンが新たな親会社となった。昨年は通販サイトへの不正アクセスを受け、クレジットカード情報を含む顧客の個人情報の流出が発覚、重要な販路である通販サイトの休止を余儀なくされるなど苦難の年となったデジタルダイレクト。昨年末、同社の新たなトップに就任した西谷義晴社長に今後の戦略や方向性を中心に聞いた。 (聞き手は本紙編集長・鹿野利幸)

「まずネット販売の強化を」、〝食品〟が今後の成長のカギに

――昨年末にDDの新社長として就任した。社長就任の経緯は。
 「三菱商事とイオンとの包括業務提携の一環としてDDの第3者割当増資をイオンが引き受け、イオングループがDDの株式を60%持つ親会社となった。私は当時、イオンの(通販事業などを管轄する)ノンストア事業の担当執行役であり、自らDDの今後の成長責任を負うという意味で社長となった。5月の人事異動でイオンの執行役を降り、今後はDDの専任となる」

――今後、DDの舵取りを行なっていくわけだが、まずは前期(2010年3月)の業績を振り返ってもらいたい。
 「まだ数字は確定していないが、減収減益になることは間違いない。昨年8月の個人情報漏えい事件以来、通販サイトを休止にしてきた影響は大きい。利益面でも9カ月間におよぶサイト休止に伴う損失が発生している。例えば、通販サイトはイオンビスティに委託してシステムからゼロベースですべて作り直し(4月26日から通販サイトは再開)、これまでのシステムはすべて特損となった。利益はわずからながら黒字となったが影響は大きかったと思う」

――今期以降の業績拡大のために乗り越えねばならない課題は。
 「課題だらけだ。1番はEコマース事業が遅れていること。現状の会員数は400万人を越えている。しかも、可処分所得などが高いシルバーエイジという非常に良い顧客層を抱えている。こうした会員を本当に活かしきれているのかということだ。DDはこのくらいの規模の会社には珍しくテレビ、カタログ、ネットというチャネルをしっかりと持ち、マルチメディアで商売を行なえている。ただ、私はクロスメディア、クロスマーチャンダイジングができていないと思っている。テレビでお客様を掴む、それをカタログへとつなげ、カタログの中からどうやってネット販売につなげるかという構造を、商品をキーとして展開していけば強い企業になると思う」

――ただ、ネット販売の強化と、現状の中高年層というネットにあまり慣れ親しんでいない顧客に向けた拡販策は相反する部分もありそうだ。
 「そうだ。中心顧客層はシルバーエイジでありながら、今からの時代の方向として、Eコマースにウエイトを置かざるを得ないという難しい状況だ。とは言え、今の段階では苦しいが、育てていかねばならない。そのため、まずは休止していた通販サイトを立ち上げ、カタログやテレビの受注手段ではない、ネット単独でのビジネスを育てて行く必要があると思う。ここでどう若い世代の新規顧客を獲得しつつ、現状の50、60代のお客様を引っ張っていけるのか考えるべきだろう」

――新たな試みとしてイオンとの連携策もあろうかと思うが。
 「具体的には言えないが例えば、イオンには1,800万人のクレジットカードフォルダーがいる。また『WAON(ワオン)会員がいる。売り場では『孫カード』を持たれているお客様がいる。そうした色々な会員財源は活用していきたいと思っている」

――今後の成長戦略のカギとなるのは。
 「通販事業者に限ったことではないが、高齢化社会の中における最大の課題は『ミールソリューション』だと思う。着るものなどは不況の折、多少、セーブできるが、『食べない』というわけにはいかない。また、高齢者自身の買い物もそうだが、介護や子育てでなかなか、日々の買物に出かけられない方々も今後、増えてくるだろうと思う。私はイオンでネットスーパーを立ち上げたが、顧客様から『午前中にパソコンを叩けば、お昼にはその日の食材が自宅に届く。非常に便利だ』と大変感謝された。DDでも食品は1つのカギになるのではないかと思う」

――具体的には。
 「もちろん、DDではイオンのネットスーパーのような日常の食材を販売するものでない。日々の食生活にちょっと彩りを与えるような付加価値の高い食品になるだろう。例えばすでに販売しているが高級漬物や冷凍握り寿司など。私もその漬物を食べたが『こんな漬物があるのか』と思うほど美味しかった。もちろん、ビジネス的には衣料品の構成比が下がって食品が上がってくれば利幅は減るし厳しいが、社会的な変化を考えれば、やはり食品はカギになるはずだ。お客様が自分では探しにくく、隠れた美味しい食品を開発、または探してくることが会社が今後も存続できる理由付けになってくるだろうと思う」

――今後の目標は。
 「まずは年商100億円超えが目標だ。そのためには繰り返しになるがEコマースの強化が必要だ。例えば、今、野菜が高騰しており、無駄なく野菜を使える『ちゃんぽん』の販売を強化したいと思っても、カタログでは迅速な対応は難しく、販売機会のロスを産んでしまう。今後の社会的な変化などに対応するためにはネット販売の強化は欠かせない。総売上高に占める割合は4割を超えていきたい」

 
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