消費者庁が、機能性表示食品の積み残し課題の検討を始めた。テーマは、制度の対象とする「食品・成分の範囲」について。ビタミンやミネラルなど食事摂取基準に規定される栄養成分と、機能性関与成分が不明確な食品の取り扱いについて議論する。消費者庁では今秋をめどに報告書をまとめる。
「機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会」は1月22日、初会合を開いた。検討委員は、17人で構成。座長には、帝京大学臨床研究センター長の寺本民生氏が選ばれた。
今後、月1回程度のペースで検討会を開き、計10回の会合を予定。今秋をめどに報告書をまとめる。
検討のテーマは、栄養成分の取り扱いと、機能性関与成分が明確でない食品の取り扱いについて。2月16日に行う次回会合で消費者庁が論点を整理。第3回会合で関係する専門家等からヒアリングを実施する。以降、それぞれ、「安全性の確保」「機能性の表示」「国の関与」について3回の議論を予定している。
食事摂取基準に規定される栄養成分は、タンパク質や食物繊維、n―3系脂肪酸、ビタミン、ミネラルなどがある。基準と異なる成分量、機能で摂取を推進すると過剰摂取の恐れがあり、国の健康・栄養政策と整合性がとれない可能性があるため制度化されなかった。機能性関与成分が特定できない食品も、安全性確保や販売後の監視の観点から導入が見送られていた。
また、検討会では、すでに運用が始まっている機能性表示食品制度について、委員から運用改善に関する意見聴取を行うとしていた。第1回会合では、消費者サイドの委員から「公的機関が問題ありと判断した成分は受理しないようガイドラインの見直しを要望」「販売期間が短いものも食経験が認められ受理されている」といった意見が出ていた。
ただ、消費者庁では「すぐに改善できるものは対応するがあくまで意見聴取であり、今回の検討会のテーマは(食品・成分の範囲に関わる)2つに絞られる」(食品表示企画課の赤﨑暢彦課長)としている。2014年に結論を得た機能性表示食品制度に関する検討会では、「制度の施行後2年をめどに運用状況を検討し、必要な措置を講ずる」と明記されており、制度の運用面の課題の改善に関する議論は17年以降に行われるとみられる。
JADMA・宮島和美理事発言要旨
「機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会」に、日本通信販売協会(JADMA)を代表して出席した宮島和美理事(写真)の発言要旨は以下の通り。
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宮島氏は、健康食品業界における通販の位置づけについて「約500の正会員企業のうち6割の企業がサプリメントを扱う。1兆2000億円超に上る健食市場のうち5割は通販が占める」と、主流を占める流通形態であることを説明した。
2014年に行われた制度設計に関する検討会では、今回のテーマになっている「対象となる食品・成分の考え方」について「成分の範囲を広くとること」と要望。ほかに、構造機能表示やサプリメント法の制定を求め、一部はすでに実現している。一方、前回の検討会で感じた反省を今回の検討会で活かすことを求めた。
一つは、サプリメントの利用者である"お客様目線"に立った議論。前回検討会の内容が真にお客様目線であったかを振り返り、「どういう働きがあるか、安全性や機能性の根拠がオープンになっていることを分かりやすい表示で伝える工夫が必要。お客様目線でなるほど、と分かりやすく、これまで以上にメリットを持たせていくものでなければならない」と指摘した。
議事進行にも注文をつけた。制度は、「日本再興戦略」の中で触れられた「健康長寿社会の延伸」に寄与することを目的としている。また、安倍総理が成長戦略スピーチで、現行のトクホを例に"中小企業に事実上チャンスが閉ざされている"と問題点を明確にしたことを挙げ、「(JADMAの)加盟社も多くは中小企業だが、これら企業にチャンスを与え、健康長寿社会の延伸という目的を実現するための検討にしなければならない。そこから外れて物事の本質を見失い、枝葉末節の議論にこだわってはいけない」と、大局的な見地からの議論を求めた。