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tab谷口昌仁社長に「tabモール」の狙いとビジョンを聞く(上)

2014年12月 4日 16:25

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 消費者の利便性を高める目的で、ウェブ上で注文した商品を自社の実店舗やコンビニなどで受け取れるサービスが増えているが、百貨店など既存の商業施設を"受け取り店"として活用する新しいウェブサービス「tab(タブ)モール」が11月6日に始動した。ブランドの垣根を超えるだけでなく、実店舗を持たない通販専業にとっても有効なサービスとなるのか、tabの谷口昌仁社長兼CEOに事業化の経緯やビジョンなどを聞いた。(聞き手は本紙記者・神崎郁夫)

 ――前職の楽天では執行役員も務めた。

 「楽天の前は経産省の役人だったのでよく分かるが、日本の小売りサービス業に占めるECの割合は5%にも満たない。誰もが『ネットの時代』と言うが、実際はほとんどがリアルで消費されている。狭いECの中ではなく、多くの消費者が利用しているリアルの支援をしたいと思った」

 ――新サービスの発想や事業化の経緯は。

 「消費者はネットに慣れているので商品を網羅的に調べて選んでいる。そういう消費者からするとリアルの店は商品数が限定的で圧倒的にイケてない。ただ、商品に触れることができ、分からないことは販売員が教えてくれるので買い物自体は楽しい。一方のECは、品ぞろえは豊富だが人を介さない分、楽しさに欠ける。そこで、両者の"良いとこ取り"ができるサービスがあればいいと思った。つまり、床面積の制約を取り払って大量の商品の中から実際に見てみたい商品を予約すると、何日か後にはいつも利用する商業施設で試着できるとなれば、買い物はさらに楽しくなるはずだ」

 ――開設時の受け取り店は。

 「松屋銀座と、大阪府堺市にある千趣会の『ベルメゾン暮らす服アリオ鳳店』など4店舗だ」

 ――受け取り店は1エリアに1つとする。

 「同じ地域に受け取り店が集中するよりも、まずはいろいろなエリアに設けた方が利用者にとって便利になる」

 ――その選定基準は。

 「できる限り幅広い商材を扱う店舗を選びたいが、すでにブランドの店舗も受け取り店になっている。ブランドは自社商材しか扱わないが、そういう店も排除しない。ターゲットとする商業施設はあるが、それよりも問題意識や本気度の高い企業と組みたい」

 ――受け取り店が試着予約できるMDを選ぶ。

 「将来的には出品ブランドと受け取り店のマッチングサイトになるイメージだが、現状は松屋銀座と一緒に営業を行って『tabモール』に出品する取引先ブランドを広げている段階だ」

 ――松屋銀座も期待しているようだ。

 「実店舗を増床することなく品ぞろえを広げられるのが『tabモー
ル』の利点だが、そこに店頭の接客力がプラスされる。松屋銀座には専用の受け取りカウンターがあり、予約商品に似たアイテムをそろえて提案もしている。婦人靴と雑貨でスタートしたが12月からは婦人服も扱っている」

 ――千趣会の店舗も受け取り店になった。

 「『ベルメゾン』の誌面を見ると商品数がすごく多い。それなのに店舗の商品数は少なく、強みが生かされていない。当社と組むことで、自前で仕組みを作らなくても消費者はカタログ掲載商品を店頭で受け取れる」

 ――実店舗を持たない通販会社も受け取り店を活用できれば有益だ。

 「通販企業も『tabモール』に出品できるが、受け取り店として参加する商業施設が自店で扱うブランドを選ぶ仕組みだ。今後、受け取り店が通販企業の商材を扱うケースも出てくるだろう。というのも、百貨店が気にしているのは商品の質。通販企業の商品がすべてダメということではない。品質が良ければ扱うはずだ。また、『楽天市場』などの店舗もリスクを避けるためにECを選んだのだと思うが、リスクを最小化できれば実店舗を持ちたい企業は多いはずで、仮に10坪でもリアルの出店に興味がある事業者は支援したい。実店舗には売れ筋だけを置き、あとは『tabモール』に品ぞろえすればいい。『楽天市場』の店舗もウエルカムだ」(つづく)

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