オリジナル寝具商品の企画・販売を手がけるエムール(本社・東京都八王子市、高橋幸司社長)は、仮想モールなどでネット販売事業を展開し売り上げを着実に伸ばしている。約1年半前には、事業者に販売プラットフォームを提供する「Amazon.co.p(アマゾン)」のマーケットプレイス利用を開始。販路拡大に加え、運営の負担が少ないことから本業に人的リソースや予算を振り分けることができているという。
同社が取り扱っているのは自社企画の布団や枕、マットレスなどの寝具商品全般。「ものづくりでは『デザイン性』と『睡眠品質』にこだわっているのが大前提」(高橋社長)という言葉通り、柄物などの見た目も重視したデザイン布団や人体構造に基づいた機能性寝具のウレタンマットレスなどを販売。取扱商品は3500~4000点で、オリジナル商品が売り上げの8割~9割を占める。
現在は自社通販サイトに加え各仮想モールなど全6店舗を運営し、年度成長率は平均30%前後で推移。売り上げに占めるアマゾン店の比率は約30%で6店舗の中で最も伸び率が高い。「アマゾンでは広告を含めた露出の競争よりも、純粋な商品力や接客力を高めていくことで顧客に喜んでもらえるという点で非常にやりがいを感じている」(同)とする。
現在、同社は出店モールごとに運営担当者をつけているが、モールごとに集客方法や接客方法などの特性が異なり、仕事が多岐にわたって担当ごとに費やせる仕事の内容に差が出ている。
「アマゾンでは店舗に代わってSEO対策やレコメンデーションが行われるため、店舗側に時間的余裕が生まれる。その分、商品づくりやデザイン、プロモーションの案の作成などに時間がかけられるのがとてもありがたい」(中西瑶子eコマース事業部担当)と説明。コストと手間を抑え、商品開発やサービスなどの本業に集中して顧客に還元できる仕組みがあることがアマゾン利用の最大のメリットだという。
その上で、同社が日ごろからアマゾン店の運営で注力しているのがページ内での商品の見せ方。すべての商品説明文にサイズ・素材・特徴・生産国をテキストベースで記載したほか、社内にプロカメラマンと撮影スタジオを完備して、商品画像をすべて自前で作成。寝具業界では少ないという人物モデルと商品を組み合わせた画像で、使用感や使用後のイメージが直感的に伝わるように配慮している。
「アマゾンの顧客は本や家電などで慣れているのか、特に機能性や品質にこだわった商品を購入している印象。商品説明文も細かく読んでもらえているようなので、こちらの意図をくみ取ってもらえてありがたい」(同)とした。
また、アマゾンの担当者からのアドバイスや、定期的にアマゾンが開催するウェブセミナーも積極的に利用。これまでもそこで仕入れた情報をもとに、キーワード検索対策として商品タイトルに「日本製」「三つ折り」「高反発」など具体的な機能名称を入れることで検索率を上げることもできたという。
海外展開も視野
今後、同社が検討している施策ではアマゾンを活用した海外展開がある。「どこの国でも首都圏は家が狭いし睡眠で悩んでいる方は多いので、大きいベッドに代わるコンパクトで機能性に優れた布団の文化を輸出したい」(高橋社長)と説明。アメリカやヨーロッパでの販売を検討している。
そのほかにも、リアル展開として実店舗の開設やパートナー契約を結んでいるプロサッカーチームと連動した期間限定・イベント型の販促企画なども予定。情報発信の機会を増やして知名度を上げていくことで、顧客数を現在の年間12万人から100万人まで拡大することを目指す。