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東京都 「薬事法」違反の広告掲載、広告主えがおに〝異例〟の処分

2009年12月11日 15:27

 食品衛生や薬事衛生に関する行政の最新情報などを提供する東京都のメールマガジン「食薬eマガジン」が健康食品通販等の関係者の中で物議を呼んでいる。11月27日発行号(139号)に掲載された健食通販事業者の広告で「薬事法」に抵触する表示があったためだ。都は、事業者からの指摘で初めて事実を把握。表示内容が不適切とし、所管自治体を通じ、広告を出稿した健食通販事業者を処分する意向を示している。薬事行政等の情報を提供する自らのメルマガの掲載広告ついて事業者を処分するという異例の展開に、事業者側からは都の対応に不信感を抱く声も出ている。

 「東京都食薬eマガジン」は月2回発行されているメルマガで、登録会員数は約4,700百人。配信は、まぐまぐに委託している。

 今回問題となったのは、11月27日発行の「東京都食薬eマガジン」の冒頭に「PR」と題して掲載された健食通販品事業者えがおのPR広告。「べルト周りが苦しくて・・・"ポッコリが気になっていた"俺が、『最近スリムになったわね』って久しぶりに妻にホメられた。ホメられたのは○○パワーのおかげ!そのパワーの秘密って?」というコピーの下に「えがおの黒酢」のキャンペーンサイトにリンクするURLを記載したもので、リンク先のサイトでも類似した表現を使い、男性の腹部の画像を掲載していた。

 この内容について、一部の健食関連事業者などが「メタボリック症候群を暗示している」(関係者)として都に抗議。薬事監視課に問い合わせた関係者は、「都は、問題のメルマガを見ておらず、広告表示のことも把握していなかった」という。メルマガ配信を担当する福祉保健局によると、薬事監視課だけではなく、「他の表示関係担当部署にも、問い合わせがきている」(食品医薬品情報係)状況だ。

 一方、広告の内容について薬事監視課では、「ポッコリ」「スリム」「○○パワー」といった文言から、「医薬品的な効能効果を暗示し、未承認医薬品の販売に当たる可能性がある」と指摘。えがおの本社が所在する熊本県に情報提供を行う意向だ。

 今回の問題を巡っては、メルマガを発行する東京都、広告主のえがお、メルマガ配信を受託するまぐまぐの3者が関与しているが、それぞれ対応に問題があったと言える。

 まず、都に関して言えば、自らが発行するメルマガに掲載される広告の内容を全く関知していなかったことが挙げられる。メルマガに掲載する広告はまぐまぐ側で決めるもので、都に選択権はなく、メルマガ本文とは一切関係がない。これが当初の都のスタンスで、11月30日にメルマガ臨時号を出し、同様の主旨を伝えている。

 だが、事業者を指導する立場にある都のメルマガに法令違反が疑われる広告が掲載されること自体、事業者側の混乱を招くことになる。この点については、一部の事業者からも強い反発があったもようで、都でもメルマガへの広告掲載を取り止め、有料化する方向で検討。「監督不行き届きで、事業者の誤解を招きかねない広告が掲載され、申し訳ない」(食品医薬品情報係)としている。

 無論、広告を制作したえがおにも問題がある。同社によれば、広告制作はコンサルティング会社に委託しおり、熊本県に内容を照会した上で各媒体に出稿しているという。ただ、中には、自治体によって「薬事法」に抵触すると判断されかねない内容のものもあったようで、今回のケースは都の基準でアウトになったというのが同社の見方だ。

 えがおでは、今回の問題を受け、当該キャンペーンサイトを停止。まぐまぐに対しても、改めて広告出稿に関する照会を行う考えで、場合によっては「メルマガへの広告出稿を止めることも検討する」(同)としている。

 一方、健食通販事業者からは、「都のメルマガに健食通販の広告を載せること自体、配慮に欠けるのではないか」とし、広告掲載メルマガの選定手法を疑問視する声が浮上しているが、まぐまぐでは、自社の掲載基準に基づき広告主や代理店と相談した上で広告を掲載するメルマガを選定していると回答。「都のメルマガを指定して広告を掲載することはあり得ない」とするえがお側の主張と食い違う点もあるが、法令違反と見なされる広告の掲載事例が出た以上、内容チェック等の対応を再考する必要もありそうだ。

 三者三様に問題はあるが、都の立場を考えれば自らが発行するメルマガへの法令違反が疑われる広告掲載を見逃した責任が大きいのは確かだ。
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